第135話
「それで姫様、こんなに朝早くから何の御用ですの?」
濃い紫色のドレスを身に纏った三十代と思しき、
「ふぉっふぉ。姫様の事じゃ、どうせロクでもない事じゃろうて」
「うっさいわね」
仙人の様に蓄えた髭をモゴモゴ。と動かして言う
「どうでも良いですけど、朝後食前には終わらせて下さいましね」
ピンク色をしたドレスの留め金が弾け飛ぶんじゃないかとヒヤヒヤさせて、
「アンタは食べ過ぎなのよ。少しはダイエットしなさい。ドレスがみっともない事になっているでしょう?」
マリアさんがミネルヴァさんの顎をタプタプしながら言う。
「私のチャームポイントに触らないで頂戴。それに最近、二百グリム痩せたのよっ」
それは目の錯覚じゃぁないかなっ。
「十食食うのを止めろって言っているのよ私は」
十食って、一日で?! フードファイターかアンタは。
「そんな事より始めさせて貰って良い?」
「ああ、こちらは気にせずに続けて下さいまし」
顎やら腹やらを突いてミネルヴァさんの肉を波立たせながら、マリアさんはニッコリと微笑む。それを見た王女は深いため息を一つ吐いて、王座であろう椅子から立ち上がった。
「それじゃ、リリーカ=リブラ=ユーリウス争奪、両家お宝対決を始めるわよっ!」
「「「お宝対決……?」」」
王女は右掌を前へと差し出しカッコつけて開始を宣言するが、事情も知らぬ貴族の人達の声が揃った。
ポン。と掌を打つルレイルさんは、倉庫に行った時の事を思い出した様だ。仙人さん以外の人達は、『なんじゃそりゃ』と言わんばかりの表情をしている。
「だから言うたじゃろう。ロクでも無い事じゃ、とな」
仙人さんの言葉に、差し出した王女の掌がフルフル。と震えていた。
「そんなのガツンと仰れば宜しいですのに、『リブラ』はホント優しいですわね」
王女から事情を聞かされ、マリアさんのキツめの物言いにマクシムさんが頷く。
「そうじゃのう。じゃが、その優しさこそが、お嬢の良い所じゃろうな」
「リリーカ様。
フレッドさんがビシッと指差す。その差した指の先には、フォワール卿が顔を真っ赤にしながら握る拳を震わせていた――
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