第103話
「フォワール卿から結婚を迫られているのです」
「お姉様!?」
俯き加減だったリリーカさんは、驚きの声を上げて私を見つめていた。
「フォワールが……? そうなのですか?」
「………………はい」
長い沈黙の末にリリーカさんは短く返事をする。……あれ? リリーカさんの反応が鈍い。
「そうですか、あのフォワールがリリーカさんをねぇ……。だから婚約者の噂を流したのですね」
「はい。フィアンセが居ると分かれば、あの方も諦めると思っていたのですが……」
「その様子ですと、上手くはいってなさそうですね」
白い器に金色の装飾が施された、
「私が力を貸しましょうか?」
期待通りの言葉が発せられた。リリーカさんは祭りの間だけ。と言っていたが、それでは根本的な解決にはならない。あの親子に諦めて貰う為には、ここは矢張り権力に頼るしかない。
目の前に居る人ならば最上級の権力を持つお人だし、協力的みたい。ならばここは手伝ってもら――
「王女様の仰せ、誠に感謝極まりません。しかしながら、この様な事を自身で処理出来なくば、『リブラ』の名に傷が付きましょう」
え……どうして断るの?! 協力してくれる。と言うのだから手を組んでフォワールを黙らせれば良いじゃない!?
「……そうですか。ならば、ソレはリリーカとカーン様に任せるとしましょう」
こうして、私のリリーカさん救済計画は頓挫を余儀なくされた。
気不味い雰囲気の中、夕食会は終わりを告げた。ただ、気不味い雰囲気は馬車に乗っている今でも続いている。その原因となる人物は、明かりが灯った街並みを頬杖を付いたまま眺めていた。
「あの……リリーカさ――」
「どうして、言ってしまわれたのですかお姉様」
頬杖をついて外を見たまま、言葉を遮ってリリーカさんは言う。特に怒っているって訳ではなさそうだけど……
「だって、リリーカさん困っていたんでしょ? お祭りの間だけって言ってたけど、それじゃ根本的な解決には至らない。リリーカさんは何故か権力を使いたがらないから、最高権力者に協力して貰おうと――」
「使いたがらない。のではありませんわお姉様。腕力や権力を以って場を収めても、不満が
おおよそ十六とは思えない大人な答えに、内心驚いていた――
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