k-200
朝ベットの上で目覚めると、足元でアッシュが丸まっていた。
エルザの宿屋で一泊した俺とユリナさんは、懐かしの我が家に戻ることにした。
サラサが俺の育てていたハーブ鶏を、ジョバンニさんという契約農家さんに預けてくれていた。
俺はジョバンニさんにお礼を言い、ハーブ鶏を引き取った。
……
誰も俺に町に住まないかとは言わなかった。
ユリナさんを溺愛しているママですら、戻ってこいとは言われなかった。
……過度に干渉されないのは本当に助かる。
正直人の多い場所で暮らすのはまだ苦手、というか息がつまる。
普段は田舎に住んで一日中読書か農作業をしていて、一か月に一度だけスーパーで買い出しをする、みたいな生活が俺的には理想だ。
ちなみに今回の逃亡劇では色々な町に立ち寄ったけど、これは緊急事態なのでノーカン。
つまり今までもこれからも、スタンスを変えるつもりはない。
俺はユリナさんに、ママのお店で働きたい? と聞いた。でも、ユリナさんは首を左右に振った。
内心ほっとした。
俺としてはユリナさんが、野獣どもにイヤらしい目で見られるのが本気で嫌だったのと、それでも彼女が望むならレスタに住むことも検討しないといけないからな。
「ついた~~」
安堵のため息とともに、声を漏らした。
昼下がり、ハーブ鶏を乗せた俺たちの馬車がようやく我が家に着いたのだった。
家はサラサやアエルザが面倒を見てくれていたため、掃除をする必要すらないほど綺麗だった。
俺は幌馬車から荷物を降ろし、家の中に運び込んだ。
魚醤、生姜、魚介類、紹興酒(っぽい酒)……、結果的に食のレパートリーが増えたので、それだけはハインリッヒに感謝してもいいくらいだ。
そう言えばハインリッヒどうしてるかな。
身柄を拘束されているとだけは聞いているけど。
やっぱり日本のように法律が整っている風なし。いきなりバイエルンさまの鶴の一声で死刑みたいな感じなんだろうか。
「そう考えると、ちょっと寝ざめが悪いな」
自業自得とはいえ、俺もガッツリ絡んだ事件だったしな。
夕刻時。
さてと、久しぶりに我が家で風呂を沸かそう。
3つあるウォーターボードつきのドラム缶のうち、水が溜まっているものの一つを沸かすことにした。
日が落ちるのが冬なだけあって早い。もう既に辺りには夜の帳が下りている。
風呂を沸かす片手間で、燻製キットでハーブ鶏の卵とレスタで仕入れたチーズの燻製を作りながら、蒸留酒をロックでチビチビと。
この落ち着いた感じがいいね。
安心する我が家があるというのは良いものだ。基本俺は、引きこもりの陰キャだからな。
たまに冒険するのはいいけど、今回みたいなのは暫くは勘弁だな。
そんなことを考えていると、門の前に人影が見えた。
そいつは長身で痩型体型。顔立ちは貴賓があるのだが、体にボロ布を申し訳程度にまいていた。
俺は憔悴しきった表情の男に見覚えがあった。
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あとがき
ここまで読んで頂きありがとうございます!
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シャーデンフロイデ 〜神様の前でボケた俺は、真に受けた神様にパンツ(魔道具)に転生させられる〜
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なども執筆しておりますので、そちらも応援頂けると幸いです。
〜あらすじ〜
自虐ネタでピエロを演じることでクラスメイトの「シャーデンフロイデ」(他人の不幸を蜜の味と感じる気持ち)を喚起して学生生活を乗り切るスクールカースト底辺の男子高校生・馬場巨人(ばば つよし)は、ある日交通事故に遭う。神様の勘違いもあって魔道具(パンツ)として廃墟で眠る美少女アルシアの枕元に異世界転生してしまう。神様からもう一度人間に戻るには、魔道具として徳を積む必要があると告げられる。目覚めたアルシアに勘違いされあわや大惨事になるところだった馬場は、どうにかアルシアの腕にシュシュ(魔道具)として装備されることに成功。馬場は魔道具としてアルシアを助けることを決意する。
アルシアは王族に保護され目をかけられていることで「シャーデンフロイデ」とは真逆の感情である「嫉妬」(=シャーデンフロイデ・インバース)の対象となり、冒険者としてパーティも組めず極貧生活を余儀なくされていた。その結果、現在野盗に襲われても文句の言えないような廃墟で野宿するハメになっていた。
とりあえずお腹を空かせたアルシアのために、食料でもとってきます。
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