k-139
俺は夜、居間のテーブル上で、ランタンの明かりを頼りに一人紙にペンを走らせている。
この不思議な世界に来て何日が経過しただろうか。俺はふと腕時計の日付表示に目をやる。
――この世界で過ごす日々も長くなったものだ。外気温が変化するのも当然だ。
今日は、『少子化はインターネットが普及したことによる必然的現象である』という仮説について考えてみることにする。
時折ふっと頭に浮かんだことは、案外重要なことが多い。そして、俺はその都度考えをまとめ、文章に残すようにしてきた。
――さて、本題である。
インターネットがなかった時代。SNSがなかった時代。
人間は一対一で直接コミュニケーションをとるしかなかった。
しかし、インターネットが普及しSNSが発達するにつれ、人間のコミュニケーションの世界は広くなり、同時に希薄になっていった。
人は、希薄な人間関係が心地よいと感じてしまった。
心に対する負荷が薄い分、コミュニケーションをとる相手を取捨選別することで、心のキャパシティオーバーを防ぐことが可能となったからである。
対して恋愛は、心に対する負荷が非常に重い。むしろ心のキャパシティオーバーを起こすことこそが、恋愛であると定義することもできる。
人は本能的に、楽な方向へ楽な方へと流れる生き物である。科学技術の発展など、その本能的欲求の産物に他ならない。
その結果、人は心のキャパシティオーバーを拒むようになり、恋愛に対する拒絶反応が生まれた。
人は、恋愛に心地よさを感じなくなってしまった。
恋愛をしなくなり、直接のコミュニケーションが極端に減れば、当然子供など生まれない。
これが、少子化の真相であると結論づけることはできないだろうか。
俺は、ユリナさんに対して色々と思い悩んだ。
つまりは心のキャパシティオーバーを起こしていたのだ。
そして、ネット社会に依存した俺の脳は、それを良しとせず心の防衛機構が働いた。
好きなのに拒絶してしまう。
俺の一見矛盾した態度は、このような行動原理に基づいたものであると考えることができる……。
俺は急に悲しい気持ちになり、そっとテービルの上にペンを置いた。
冷静に心の内面を深堀りしてみた俺は、なるほどと思う反面、これほど悲しい人間はいないなと思った。
今日は飲もう。
まだ彼女からもらった蒸留酒が残っている。
そして彼女のことをもう思い出すことのないように蒸留酒のボトルを空にした俺は、人知れず布団の中で涙を流していた。
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