商社マンの異世界サバイバル ～絶対人とはつるまねえ～

ｋ－136

　翌朝。日課を済ませた俺は、歩いて俺を訪ねてきた友人を、町まで馬車で送り届けることにした。

　１０：００

ジュノとサラサと別れた俺は、ダンにレッドグリズリーの討伐報告を行う。証拠は頭だ。

　カードのギルドポイント表示が六一に変化した。

　次に、なめした毛皮をサラサに渡す。

【レッドグリズリーの毛皮：小さな発熱効果があり、とても暖かい】

　俺はこれを、掛け布団に加工してもらうことにした。二枚はできそうだ。

　１２：００

　昼飯を適当に済ませ、最後の用事を済ませるべく、俺はバイエルン様の館の門前に立っていた。

　門前では兵士のドニーが、暇そうにあくびをしていた。

　俺は、彼にバイエルン様に会いに来たことを伝える。

　彼とは面識があったし、バイエルン様も町の領主を引退しているので暇なのだろう、すぐに会えるとのことだった。

　執務室に入ると、バイエルン様は魔法指導官のハン先生と一緒に優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいた。実に貴族的だ。

　俺は深々とお辞儀をしてテーブルに、あるものを取り出す。

　それは、ビンに入ったポーションだった。ただし、この町では見たことのない代物だ。

【エギルの回復ポーション：体力回復（大）、部位欠損修復】

　俺には、このアイテムを真っ先に必要としている知り合いがいた。それがこの人。

　右腕をモンスターに切り飛ばされ、不自由をしているであろうバイエルン様だ。

　俺は、紙に鑑定結果を書き示す。それを見たバイエルン様とハン先生、ドニーは目を見開いた。

　バイエルン様はおそるおそる、ポーションを飲む。

　すると、ないはずの右腕が、光の粒子が集まるように修復された。

　バイエルン様は感動で泣いていた。

　泣くだけ泣いた後、ブンブンと激しくシェイクハンドされ感謝された。

　副次的な効果もあったようで何よりだ。

　うん、良かった。俺も気になっていたんだ。

　用事が済んだので帰ろうとすると、バイエルンさんに腕をつかまれた。

　ドニーに何かを指示し、しばらくすると、ドニーが大きな袋を持ってきた。それは、金貨が大量に詰まった皮袋だった。

　俺はいらないと言ったのだが、押し付けられた。

　彼らの厚意を無下にするのも失礼にあたると思ったので、俺は皮袋を受け取ることにした。

　義足に義眼のハン先生が、「レシピを教えてもらえないだろうか？」とジェスチャー混じりで言ってきたので、俺は快く教えることにした。

　あれだけ魔法修得で世話になったからな。むしろタダで作ってあげてもいいくらいだ。

　「作ってもってきますよ？」と言ったのだけど、彼も錬金術には長けているようで、自分で作ってみるとのことだった。

　俺でも作れたんだ。先生ならレシピさえあれば簡単に作ってしまうだろうさ。

　１６：００

　サラサの店に寄ると、既にレッドグリズリーの毛皮は掛け布団二枚に加工されていた。

　代金として金貨二枚を差し出したが、多いと言われ銀貨を何枚か返される。

　俺は商人として、彼女のこういう真面目なところが好きだったりする。

　せっかくなので、薪、食料、酒を荷馬車に満載になるまで購入した。

　代金はバイエルン様から頂いた金貨袋を指差して、適当にもらってくれと言ったが、彼女は銅貨１枚単位まで細かく計算してお釣りを返してくれた。

　きっと商人として当たり前の行為なのだろう。

　彼女にも、マルゴと同じく、商人としての矜持を感じる。だからこそ、俺は彼女を信用する。

　１７：３０

　家に帰ってきた俺は、ベットの下を加工して作った隠し金庫にバイエルンさんから頂いた金貨袋を大切に保管した。

　ちなみに金貨の数は面倒なので数えておらず大量にあるということしかわからない。

　小屋には鍵がかけられるとはいえ、用心にこしたことはない。何も敵はモンスターだけではないからだ。

　眠る際、ブルーウルフの掛け布団を、レッドグリズリーの掛け布団に変えてみた。

　ポカポカと暖かく、これなら寒い季節でも十分暖をとれそうだなと思った。

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