第60話 本日の戦利品に精神力を消費する

「この指輪は、ダンジョンの宝箱に入っていた物で!? リナさんの摘とは、違うかな!? 指輪だけに!? ねえ、ソージ君!?」


 リナさんの詰問きつもんにたじろぐサーヤ。


 なぜか、落語家の様な事まで言い出した。


 それだけ、混乱しているのだろう。


 助け船を出してやらないと。


「確かに、サーヤは真面目さんだよ。おさげ髪と短パンがよく似合ってるし。もし、結婚したら幸せな生活を送れるパートナーだと、個人的にも思ってる。その事と今回の戦利品とは、全く関係ないよ? リナさん?」

「ちょっと!? ソージ君!? それは、本当に無関係なのかな!? 結婚生活を想定しないで!? 余計にリナさんを刺激しちゃうでしょ!?」


 個人的な感想だけどな? 


 あれ? おかしな事、言ったかな? でゅへへ!


「あらあら? そうでしたか。ちょっと……包丁の状態を確認しないと」

「リナさん!? 何のフラグなの!? 夕食はもう食べたよ!? 刃物の切れ味を確認しに行かないでぇ!?」


 思わずリナさんを羽交はがい締めにする。


 バッドエンドラブコメだけは!?


「サーヤちゃん、指輪ですか? オシャレです! しゃれおつ!」


 まじまじと指輪を観察するカナさん。


 装飾品に興味を持ったみたい。


「この指輪は、魔力を高めてくれる効果があるみたいで。かなり、貴重な品ですね」

「いいなー。サーヤちゃん。ご主人さまからのプレゼント」


 チラチラとカナさんが視線を送ってくる。


 ふむ。どうしたものか。


「いけませんよ、カナ? 安易に旦那様にねだっては。それに、旦那様からは何かと頂いていますでしょ? これ以上望めば、罰が当たりますよ?」

「わ、分かってるもん。ね、ねだってないもん。あくまで、感想を述べただけだもん」


 文字通り、もんもんとしているカナさん。


 まあ、リナさんの言う事も一理あるけどさ。


「おーほほほ! メイドとしての立場をわきまえていますのねー! お疲れちゃんですわー!」

「別にお疲れちゃんじゃないもん。あっ!? クリスにも、ペンダントが!?」


 これ見よがしに。


 戦利品であるペンダントをみせつけるクリスティーナ。


 困ったちゃんちゃん娘だな!


「今日の活躍にふさわしい報酬ですわー! そもそも、ソージからのプレゼントではありません。あくまで、戦利品ですから!」


 活躍ねえ。ごめん、M字開脚しか覚えてない。


 あと、ふとももかな? もっちー! 


「聞き捨てなりません、クリスティーナ! 戦利品と言うならば、旦那様にも平等に分ける物でしょうに。それに、旦那様から許可を取りましたか? 勝手に所有しているのでは? 旦那様が何も言わない事を理由に? ふふふふ!」

「…………」

「…………」

「いや、俺は別に気にしてないし。サーヤとクリスティーナが必要としている物だったら。それに、二人とも良く似合っているし。うんうん」


 サーヤは、少し申し訳なさそうな表情を見せてるし。


 クリスティーナにいたっては。ぐぬぬぬしてるし。


「旦那様は人が良すぎです! 何の見返りもなく、危険な場所に冒険に行くのは割に合わないでしょうに?」

「うーん。見返りかあ。とっくに貰ってる様なもんかな? このように、リナさんをむぎゅー!」


 この後、みんなとめちゃくちゃむぎゅーをした。


 本日の報酬としては、最高だぜ!





「だ、旦那様がそう考えても、金品は重要な事です。も、もちろん、むぎゅーを否定する訳ではありませんよ!? わ、わたくしだって、いつでも心待ちに……こほん。それで、他にも戦利品とやらは? わたくしが確認しないと。旦那様の利益を確保しなければ!」

「はあ、はあ、先程の暴挙を考えれば。素直に戦利品を渡しておいた方が、良かったですわね」


 ふへへへ! クリスティーナのふとももにキスをしてやったぜ! 


 もちもち野郎! むぎゅーのついでにな!


「お薬ですか? 謎の液体です!」

「ポーションですね。しかも、最上級品の。飲めば一段階レベルが上がるといわれてます。さらに、傷や体力、魔力等を回復する効果も」


 ダンジョンの宝箱に入ってたポーションだ。


 これも、使い道はサーヤとクリスティーナに。


「ソージ君? ポーションは三人分ありますから、ちゃんと受け取ってね? ま、また、短パンを引きずり落とすのは、駄目なんだからね!?」


 ちい! くぎを刺されたか! 油断のないサーヤめ!


 下着がちらりと見えているのは。


 言うまでもなく、俺の仕業であるが。


「毒見をした方が、よろしいのでは? 旦那様に体調不良になられては……それはそれで、わたくしが看病して差し上げるチャンスが」

「願望が口から出ていますけど、リナさん!? 本当に僕の利益を考えてるかな!?」


 不穏な言動が見え隠れしてますよ!? 


 お茶目なリナさん!?


「あっ、そうだ! 名案だ! スライム君!」

 

 いまだに本調子ではなさそうなスライム君を呼ぶ。


 通り魔に対して魔力を消費していたからな。あのゲス野郎め!


 もう一発ぐらい、ぶん殴ってやれば良かったか!


「ぷるぷる?」

「このポーションの成分を分析ぶんせきして欲しい。それから、可能であれば類似品を生成できるかな?」


 

 

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