第44話 妹メイドさんと朝の挨拶で精神力を消費する

「ご主人さま。今度は、どこに行きますか?」

「クリスティーナの部屋に行ってみよう。まだ、起きてないみたいだしな」


 さあ、さあ! やってまいりました!


 お疲れちゃんですわー! の番である。


「ねじねじクリスですか?……わめくのは、うるさいですよ?」

「あえて起こしに行かないと……ねじねじ小言を言われちゃうからね」


 なんですの!? わ、わたくしだけ。おねぼうちゃんちゃん!? 


 なぜ、起こさないのですか! ソージ! ふぬう! ってな感じで。






「クリスティーナ? 朝が来ましたわー!」

「むにゃ、むにゃ。ソージを危うく殺す所でしたわ。……それに、無抵抗の通り魔も。むにゃ、むにゃ。お礼を言い忘れて。厳重注意でしたわね。不覚! おほほ」

「昨日の出来事を寝言で言ってます。素直じゃない人! ぷんぷん!」


 こいつに機密情報とか与えたら。


 寝言で全部バレバレだよ!


「……別にいいさ。俺が勝手にした事だもん。ふとももを利用させてもらってますから」

「そうやって、何もかも分かり切った発言が。ムカつきますわ!『別に俺なんか』この自己評価、低レベル野郎! 腹が立ちます! むにゃー!……もっと、誇ってもよろしいのに」

「……クリスも。ご主人さまの事。嫌いじゃないみたいですよ? あ、あなどれません!」


 ぬ? 嫌われてる気もするけどな? 


 カナたんは優しいから。


 クリスティーナを擁護してるのさ。


「ねえねえ? 何を誇ればいいの? お姉ちゃんのふともも好きを? ちゅ、ちゅ! もちもちパンが復活した! わーい!」

「ぎゃああ!? あ、悪漢あっかんですの!? ソ、ソージ!? 朝っぱらから、ふとももに吸いつかないで!? あ、あら? じゃれつきが、大人しいですわね?……き、期待してませんわよ!? し、仕方がない男ですわね!? き、昨日の謝罪ですわ! ちゅつ!……こ、これで貸し借りなしちゃんですからね!」


 あら!? くちびるまで。もっちりしてますの!? 


 頬にしてくださいますのね!? 


 上品にどうも!?


「ク、クリスが、ご主人さまに!? ぽこぽこ合戦だもん!」

「よろしいですわー! ぽこちゃん合戦にお付き合いしてあげます!」

「ちょっと!? 場外乱闘なの!? ぽこぽこ合戦て、何ぞや!?」


 け、怪我けがだけは、しないでカナさん!? 


 おい! クリスティーナ! 加減しろよ!


「クリス、ご主人さまの気遣いで。相手にしてやってるですよ? おーほほほ! お気づきに、ならないですか? おめでたい人ですわー! ぽこぽこ!」

「ぬわあんですって!? ぐぎぎぎ。わたくしの、ふともものとりこだからですわ! ぽこちゃん、ぽこちゃん! あっ!? し、しまったですわ!? 実際に、体にぽこちゃん! してしまいましたわ!?」


 どうやら、口喧嘩の決闘らしい。


 どちらかが、先に小突くと負けのルール?


 クリスティーナ、弱いな。


 煽られるとすぐ攻撃すちゃうからな。


 子供のケンカを収める為のお遊び? なのか?


「えへへへ! どつかれちゃんですわー! 勝者の権利を行使しちゃんもんね! ご主人さまに。しっかり感謝の態度を表明しなさいですわー!」

「ぽこちゃん合戦のルールを破れば、一生、汚名を言われますからね。わ、分かりましたわよ!……昨日は、わたくしも頭に血が上り過ぎてしまいまして。自分の事を棚にあげつつ、貴方を怒鳴りつけましたわ。それに、貴方から魔法を伝授してくれましたのに。殺人の手段として使用する所でした。軽率な行動を謝らせてくださいませ。ごめんなさい、ソージ。……それから、わたくしを制してくださって。ありがとうですわ。むぎゅーちゃん!」

「お、おう。……ど、どうもちゃん! もちもちクリスティーナ」


 ぽこぽこ合戦の勝者の権利!?


 クリスティーナから。素直な言葉を言われるなんて!? 


 むぎゅーも!? とけちゃう! 


 バターかな? マーガリンかな?


「はい、お終いですよ! ちゃんと、起こしたからね、クリス。ご主人さま、行きましょう!」






「あはっ! あははは! カナ、ソージに、おんぶされてるの? お子様ー!」

「だ、だから、野良娘のお部屋に行きたくなかったです。ぷーん!」

「通り魔撃退の際に。勝手に召喚しちゃいましたからね。お礼を、ちゃんと伝えとかないとさ」


 都合のいい時だけ。呼び出されるなんて。不快だろうしな。


「そうだよね。あたしの体をヤリタイ放題に。されっちゃったから💓 あはっ!」

「ち、ちくしょう。くねくね体を動かしやがって! け、けしからん、ポニテ女子めえ! 褐色かっしょくの肌が色っぽいんだよ!」


 謝罪と感謝の言葉を伝えるのさ。


 レベルアップしたんだ、俺も!


「わざわざ、あたしの部屋まで、お礼に来たの? ソージ? 必要ないけどなあ。律儀と言うのか。下劣野郎をぶっ飛ばせて、スッキリしたし。不満はないけど。うーん。むぎゅーってやつと、ほっぺちゅ、してくれれば。報酬として満足だよ?」

「狙いすましたような、報酬ですね!? でも、しちゃうー!」


 アイさんの体を標的に。走り出す。


 集中しろ。のがすな。


 カウンターにも備えよう。


 ためらうな。


 やれ! やられる前に!


『と、通り魔に遭遇した時以上の集中力じゃと!? おかしいじゃろ!?』

「およよ!? 意外に、パワーあるじゃん!? がっついてる!? やあん!? く、くすぐったーい!? ソージめ、反撃だぞ! ちゅつ!」


 今日はキスの日なのか! 知らなかったー! 


 ほっぺが幸福。ふやけちゃうの!?


「の、野良娘にエサを与えちゃだめだよ!? ご主人さま、わたしが退治します!」

「カナ? また、勝負するのお?……よろしい、かかって来なさい! あはっ!」





「あ、姉御あねご、野良娘にお仕置きしてください。い、いじわるしてきます! くすぐったり、ほっぺをつねってきます!」

「カナ? とソー坊? どうしたんだい? あたしの部屋に来るなんてさ?」

「メ、メジスト姉さん!? 全裸なの!? いやん!? ヌードデッサン!? ぼくは、美術の才能ないんだよー!? か、描けないよお!?」


 ふ、ふつくしい肉体美。


 性的な感情よりも。芸術性を感じちゃう。


 つ、強がってないもんね!? 


 りょ、両方、感じちゃうの。


「ソー坊、慌てなくても良いじゃないか? う、嬉しい反応だけどね。カナ? アイの奴に、いじられたのかい? よし! 対処方法を教えてやるからね!」

「えへへへ! 姉御あねご、美しくて、堂々として。理想の女性です! お願いしますね! むぎゅーが、だ、だいなみっくです!」


 お、俺も、メジスト姉さんにむぎゅーを。


 おっと。またもや、目的を忘却する所でした。


「メジスト姉さん。あの、昨日は、勝手に呼び出し――」

「ソー坊? あたしは、正直に言うとね。一人で全部やらなくて良かったと思ってるのさ。能力を無理して使用すれば。あの程度の通り魔、一人で十分だったかもしれないけど。……ちゃんと、あたしと、アイを頼ってくれただろ? その事が、何より、嬉しのさ。以前のソー坊だったら。一人で抱え込んで、解決してたかもだろ?……ちゃんと、成長してるさ。だから――」


 そんなに思い込む必要は無いんだと。


 メジスト姉さんは。


 言ってくれた。


「メ、メジ姉ざん、むぎゅーさせてぐだざい! でこちゅーじで!」

「うふふふ。ほら、ソー坊。こんな事なら。あたしがいつでもやってやるって、言っただろ? 遠慮しがちだからねえ。ちゅつ」

「さ、さすが、大人の女性です! ご主人さまから、お願いをさせるとは!? さ、参考しなければです!」

 

 


 


 

 

 

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