第26話 クリスティーナの魔法個別指導で精神力を消費する2

『パン娘のいざこざを本当に思い出せないのか? お主?』

「うーん、ま、問題なしでしょ? 精神力の消費を抑えてくれて助かったよ。ほら、相手にしてやるぞー! お前に、空中ダイブ!」


 自室の広大なベッドにて。


 今度は俺から大の字でバーチャルエトセにアタック!


『……よかろう。受けて立つもん。こ、や、つうー!』

「なにい!? けちゃうの!?……お前って奴は、らし上手め! エ! ト! セ! ト! ラ!」


 野生動物同士がじゃれ合う映像を中継しております。


 サバンナ、大地の恵み!


「ソージ? 一人で騒がしいですわね? お邪魔ちゃんですわ……じょ、女性を襲うイメージトレーニングですの!?……や、やはり、あ、頭の打ちどころが!? し、しっかりなさい!【電撃よ! 手の平に帯電せよ! サンダービンタですわ!】」

「ぎょぎょぎょ!? ひびれるう!? セーブデータが消去されちゃうよ!?」


 視界がチカチカするよー!? 


 お星さまがきれいだな!? ぷしゅうう!?





「どっこい! どっこい! どっこいしょーですわ!」

「ぶべえべえべ!? 熱い!? ゲホゲホ!? お湯!?」


 威勢の良いかけ声と共に。


 熱い湯を顔面にぶっかけられた。


 お笑い芸人の罰ゲームでは無いのだから。


 意識を覚醒させる手段をね。


 クリスティーナは学んで欲しい。


錯乱さくらん状態から救出ですわー!」

「……クリスティーナ? の湯あみ姿。俺も裸にタオルを下に装備!? ふ、風呂場!?」


 パン娘がバスタオルを巻きつけ。


 こちらの健康状態を診断している。


 そもそも、何故風呂場なのだろうか?


「にゃんの、うらみが、あるの? クリスティーナおねーちゃん!? ふええん、パンいっぱい、かったのにー!」

「幼児退行してしまわれましたの!? な、泣かないで!? ほーら、パンみたいな髪型ですわー!?」


 保育士クリスティーナ先生。


 ……認識してるんだね、髪型がパンみたいだって。


 あやすの上手だな。


「……説明してくれますかね。なぜ、お湯をどっこいしょー! したのか!」

「ソージが支離滅裂でしたので。ついでに今日一日、お疲れちゃんを流すために良い時分でしたので。おーほほほ! 礼には及ばなくてよー!」


 気の使い方が、あべこべである。


 得意げに誇っている姿を見ると。


 自らの判断が最良である事に。


 自信を持っているらしいな。


 悪気は、無いのだろう。


「ぬう!?……クリスティーナ、自分自身に電撃をまとうのは得意だよな? ほら、手の平に集中させたりさ」

「特段に思い当たるふしはありませんけど。……大雨、暴風、か、かみなり!? ごろちゃんの記憶が!?」


 落雷の記憶がよみがえったのだろうか? 


 顔色が青ざめている。


 心に傷を負っていても不思議ではない。


「……明日修行のヒントになるかもしれないな。頭の体操しておこう」

「……貴方、明日もわたくしに突っかかってくるのですか? 精神状態が危ないですわよ?」


 表現がおかしい。


 突っかかるじゃないし。付き合うな。


 語録は多様なのに。


 誤解を招くぞ。


 ……あれ? 実は良い人なの? うーん!?


「お姉様のもっちりを感じれば。精神力は問題なしですのよ?」

「わたくしはソージを気にかけてますの!……減らず口を叩けるならばその必要はありませんでしたわね! お、お姉さまではありません!」


 ころころ感情が入り乱れてる人ですね。


 過剰に反応しすぎ。


「……本心が一体どちらにあるのか。皆目見当つきませんわ。めげないで、相手をしっかり調査ですわね!……ソージ、わたくしが背中をお疲れちゃん流し、してあげますわよー! 貴方にはもったいないですけどねー! おーほほほ!」

「いや、必要ないです」

「いやああん!? なぜですの!? わたくし女性ですのに!? 生乳なまちちですのよ!? ソージだって求め続けていたでしょう!?」

「…………」


 クリスティーナ。


 男子の心を理解していなきゃ、ダメだぞ? あはっ!

 

不束者ふつつかものですが。ソージのお背中を流させてください。女性としての自信が木端微塵こっぱみじんになってしまいますの!?」

「……ふう。了解しました。素直さが足りなかったの! やってやる感がにじみ出ていたからね。……愛が必要なのさ」


 ……自分でもなにほざいてるんだ? 


 と思っちゃいましたね。愛って、なんぞ?


「……わたくし、これでも自覚がありますのよ。打算的な性格ですし。周囲を辟易へきえきさせてる事も。友人はサーヤだけですわ。あの子、意外と肝が座っていて、驚きました。魔法騎士団の同部屋になったものの。どう関わって良いか。めんどくさい性格も周知されていましたし。いっその事、難癖なんくせをつけて、追い出そうとしたのですよ? なのに『私も言いたいことがあれば、遠慮なく言いますからね、クリスティーナさん? よろしくちゃんですわー! うう、は、はずかしい!? よく言えますね!?』ですって」

「ふふふ、サーヤらしい。……性格を矯正きょうせいするのは難しいからな。ありのままを受け入れてくれる人は……それだけで大切な存在か」


 昔の俺にも居なかった。


 今は、違うか。人生なにが起きる分かんねーな。


「お、おかしいですの!? わたくし、こんな個人的な情報を与えてしまいましたわ!? く! れ! ぐ! れ! も! 他言無用ですわよ! 」

「あれー? 疲労困憊ひろうこんぱいで何を話したか。思い出せなーい!?」


 我ながらひどすぎる三文芝居さんもんしばい


 おひねり、もらえないだろうな。


「そ、そうなのですか!? 安堵、安心、あんちゃんですわー!……い、いえ。おほほ、ソージ、ほら、お背中お疲れちゃん流し、しますわよー! どっこい、どっこい、どっこいしょーですわー!」


 騙されるなよお!?


 ……意外と背中流すの。


 良い感じだな、クリスティーナ。






「うにゃうにゃ……光? まぶひい?」


 真夜中に、目が覚めちゃったか。


 それにしても、なにか光った?


「屋敷の庭外れにある雑木林の方か?……お疲れちゃんじゃないのかよ」


 あいつ。


 ……偵察ていさつしに行くか。やれやれ。



「【雷よ! 川の流れの様に放電ですわー! サンダーショックリヴァー!】」


 自主練習してんなよ。


 ぶっ倒れるぞ?


 夜中は、おねんねしてなさいよ!


「はあ、はあ。サーヤを失望させたく……ありませんもの!……ソージにも、わたくしの実力を証明して。改心させます……わ」


 言わんこっちゃない。


 ……もう十分に改心してるさ。


 おっと、そのまま倒れると危ないからな。受け止めます。


「明日もあるのに……いや、今日か。参ったな。ほんと」


 【スキル発動 おやすみのキス キスした者に、体力、精神力、外傷が徐々に回復。意識がない者でも効果あり】


「おでこにキスだぞ。親愛の。サーヤの部屋に運んでおこうか。二人で一緒に寝かしておこう。起床したらびっくりするだろな……ふふ」

「むにゃむにゃ。わたくしの魅力に。ころりちゃんのソージですわね。むにゃ」


 


 

 

 

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