2012.10.31 風見④ 01
風見はオカルト関係で横のつながりを大事にしている。
その中でも同年代で馬があったのが神宮だ。神宮がアダルトビデオの監督になった後も連絡をとりあうぐらいには仲がいい。
騎乗位が大好きな神宮の性癖が爆発したのが『可憐な女子高生の割り切り放課後』シリーズだ。挿入時の角度が綺麗な垂直になっている。女優は目を閉じて、呼吸をゆっくりとさせながらチンコを受け入れている。
その際、女優に求めるのは自分の魂を身体から出す感覚だ。
意識を遠くへ。
それこそ日本列島を俯瞰し、さらには地球を、太陽系を銀河系を眺められるようになったら、一流アダルト女優の仲間入り。らしい。
神宮が女優にかたる気概は、都市伝説とされている『UFOを呼ぶ方法』を教えているだけだ。オカルトとAV業界では、ジャンル違いのために誰からもツッコミをいれられていないのだろう。
さらに、その影響でスカイフィッシュの撮影に成功するってのは、いかがなものだろう。
本人的に嬉しいのか。
悪友が金を稼いで偉くなっている。その日の酒代もままならなかった時代が遥か昔のように思える。スーパーで購入したワンカップ片手に神宮と「ベントラ、ベントラ」叫んでいたのが懐かしい。
病院の屋上にて、風見は背筋を伸ばす。垂直に掲げる手にガラケーを握り締める。
深呼吸して肩の力を抜き、呪文を唱える。
「ベントラ、ベントラ、スペースピィプル、スペースピィプル、こちら地球の風見です。応答願います」
これで『彼』とのコンタクトが成功したはずだ。成功したと信じたい。
どういう理屈か理解できないところも多いので、やっておいて自分でも半信半疑である。好きな子からの連絡を待つ片思い中の乙女のように、携帯電話を眺める。
すぐに電話が鳴った。
深呼吸をして、ウィンドウで番号を確認する。非通知設定された番号だ。彼からの連絡は、いつもそうだ。
「もしもし」
言葉を発して、緊張しているのを自覚した。裏返っている声を意識して整える。
「えーと、無言の圧がすごいんですけど。もしもーし」
『しゃーないやろ。かける言葉がみつからんねん。自分、なにしとるんや』
「なにって、片岡さんと連絡をとるために、わざわざ恥ずかしいことしてたんですけど」
『恥ずかしいって自覚あったんやな。せやな。傍目には、宇宙と交信やりよるように見えたからな』
「あれ? 近くにいらっしゃるんですか?」
『後ろ、見てみ』
電話は一方的に切られる。
緊張のせいで頭が回らなかったが、腑に落ちない点がいくつもある。いまのは、本当に片岡潤之助だったのだろうか。片岡に仕える誰かからの電話という可能性も低い。関西弁だったし。
風見は振り返る。屋上に干されているシーツが、ハローウィンのお化けの飾りのように泳いでいる。
その隙間から、金髪。
聖里菜だ。
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