《四章》
empty land――それは空っぽの遊園地。
《五章》
まるまる太った豚は、さらにまるまる太った豚を。
鳥のようにやせ細った男は、鳥の餌に。
酒を飲み、動けなくなったノロマは牛と一緒にお昼寝。
元気な若者は山を掘り続け、錆びる前に交換。
永遠、永遠……回るここはメリーゴーランド。
でもおかしいんだ。一つだけ、とてもとてもおかしいんだ。僕がいなくなったら、メリーゴーランドは止まって、ここの秩序はなくなってしまう。
違う……僕が心配してるのはそんなことじゃない。
一番楽しんでいるはずの、信じているはずの僕は……足りないんだ。どうしてみんな、そんなに楽しそうなの?
僕の世界なのに、僕だけがちゃんと楽しむことができないなんて……こんなのはどう考えてもおかしいんだ。でも、何をしてもそれが埋められない。
気まぐれだけど、マジメなネコは答えられなかった。
みんなは知らないんだ。ただ笛の音に連れられて来ただけで、もう夢から目覚めないから、気づくことがないんだ。
でも本人は? 笛を吹いていた貴方は全てを知っている。貴方は、完全に夢の中へは入れない。だってまた笛を吹いて、連れてこなくちゃいけないから。
それはいつまで続くの? 僕はいつまで吹いていればいいの? いつまで待てばいいの?
見えない君のことを、思い出せない何かのことを……。
――アリスは笑った。
転げ落ちる卵を見て、火がついて逃げ回るトカゲを見て、いつまでも終わらないお茶会に来て、合うことのない時計に触れ、合うことのない会話に紛れて。
ワガママな女王を見て、意思の弱いウミガメモドキを見て、くしゃみの止まらない女と豚を見て。
でも飛び立つグリフォンを見たときだけ、アリスは笑わなかった。
穴に落ちるその様子を見て、必死に本に向かって鉛筆を動かす男を……。
アリスは笑った。
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