不思議な関係

エリカと秋生しゅうせいは不思議な関係に見えた。年齢的には親子でもおかしくなさそうには見えつつ、どうもそんな印象はない。


兄妹と言うには似ていないし、やはりそういう雰囲気でもない。


それで言うなら。やはり自分とエンディミオンのように、何かのきっかけで出逢って一緒に暮らすようになったというものの方がしっくりくるだろうか。


しかしそれを近所の人間にどう説明しているのかがよく分からない。


十歳くらいの見た目をしてるということは、実際にはまだ一歳にもなっていないはず。


なのに、その割には、エリカの雰囲気は、見た目よりも幼い印象のあるあきらとは逆に、大人びてさえ見えた。


なにしろ、


「秋生、ご飯粒付いてるよ♡」


と、食事中に秋生の頬に付いたご飯粒を、身を乗り出してつまみ、ぞれを自分の口に入れたりもしたのだ。しかも、子供がふざけてというよりは、まるで母親や姉がするような。


『洸とは違う……?』


それがさくらの正直な印象だった。




「おかあさん、おはよう!」


朝、洸の声でさくらは目を覚ました。エンディミオンのために分厚い遮光カーテンをしっかり閉じてはいるものの、隙間から差し込む光は明らかに早朝のそれだった。


枕元のスマホを手にして見ると、まだ六時前だ。


「ごめん…洸…もうちょっと寝かせて……おなか減ったら、スティックパンとか食べてていいから……」


洸のおやつや、小腹がすいた時用にと、スティックタイプのパンを買い置きして、寝室のチェストの上に置いてあった。一緒にミネラルウォーターも置いてあるから、水分補給はそれですればいい。


「は~い♡」


洸は機嫌よくそう応えて、スティックパンの包装を開けて自分で食べた。それから寝室を出て、滑り台で二階へと降り、ジャングルジムに上って、


「うぉうう~!」


と一声上げた。


まだ幼いこともあって普段は遠吠えなどしない洸だが、テンションが上がった時などは<遠吠えの真似>をすることはある。それも考慮して、窓は二重サッシとし、あまり外に音が漏れないようにしてあった。


その頃、一階では、エンディミオンが食事をとっていた。というのも、今日はさくらの仕事が休みなので、昨夜は仮眠をとった後で起き、一人、リビングで過ごしていたのである。


ついでに、一階奥の自室の準備などもしていた。


もっとも、私物と言えるものがほとんどない彼の場合、引っ越しの際に既に運び込まれていた折り畳みベッドに、同じく運び込まれていた布団を敷くくらいしかすることはなかったが。


それも済ませて、夜の間に家の近所を巡って地理や周囲の状況も改めて確認した。


そして今、彼にとっては<夜食>のような軽い食事をとって、自室で眠ろうとしていたところに、洸が起きてきた気配がしたのだった。


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