記憶
『夢…にしたって、無茶苦茶リアルな夢だったな……』
目が覚めて、さくらは改めてそんなことを思ってしまった。
「……何があった…?」
背を向けて横になったまま、エンディミオンが訊いてくる。
「夢を、見たんだ。あの人形のモデルになったらしい女の子が出てきた」
すると、何かを察したようにエンディミオンが言った。
「…それは、この場所に刻み込まれた<記憶>だろうな……」
「記憶……?」
「ああ……本当かどうかはオレは知らんが、この世で起こることのすべては、この宇宙そのものに<記憶>として刻まれるそうだ。
その中でも特に強い<念>が込められたものは割と分かりやすくて、いわゆる<幽霊>とかいう形で見えてしまうことも多いらしいんだが、そうじゃないものも実は記憶として残されてて、ごくたまに、人間もそれにアクセスできてしまうことがあるらしい……お前はそれを<夢>として見たのかもしれん」
「そんなことが……?」
「本当かどうかは知らんと言った。だが、そういうことがあっても不思議じゃないだろうな……」
「……ここに来たことで、私がそれを見てしまったってことか……」
用意を済ませて、さくらは
近所の人間に、保育園に通わせてると思わせる為だ。
エンディミオンは気配を消すことができるので、外出する時はもちろんそうしている。しかし洸はまだそこまではできない。
「成長すれば気配を消すことも覚えられるがな」
とのことだったが、少なくともそれまではあまり怪しまれないようにしないといけないだろう。
そんな訳で、敢えて自治会にも参加する予定はなかった。
自治会に入ると、子供がいるかどうかというのを訊かれるし、いると答えると何かと子供に関係した行事などに誘われることになるので、それは困るからだ。
「ウェアウルフは、一年ほどで見た目にはミドルティーンくらいにまで成長する。精神的な成長はさすがに遅れるが、取り敢えずそのくらいになれば逆にいろいろ誤魔化しやすくもなるだろう。とにかくそれまでは上手くやり過ごすことだな」
とは、エンディミオンのアドバイスである。
アオの家に着くと、ミハエルからもほぼ同じことを言われた。
「子供の時にはとにかく急激に成長するから、人間には紹介できないよね。ある程度大きくなるまでは、会わせない方がいいと思う。一年くらいしたら成長も落ち着くし、それからだったら、親戚とかなんとかってことでもいけるかな。
それに子供のうちは学校に行ってないって思われると、調査が入ったりするだろうから、それも気を付けないと」
とのことだった。
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