命名
『先生に迷惑に…!』
そう言ったさくらではあったものの、正直、それを期待していなかったわけでもなかった。だからここまで連れてきたというのもある。
アオは言う。
「ウェアウルフともなれば、それこそ普通の人には任せられないし、その点、私達なら、ミハエルがそれこそ詳しいからさ。
ね、ミハエル」
それに対しミハエルも
「そうだね。ウェアウルフを育てたことは僕もないけど、人間の子供なら世話したことは何度もあるし、ウェアウルフを育ててた知人もいたから、色々分かると思う」
いつもの通りの穏やかな表情できっぱりと応える。
ということで、暫定的ではあるものの、アオとミハエルがそ子ウェアウルフを預かることとなった。
それに対してさくらは、
「この子にかかる費用は私が負担します」
と申し出る。せめてそれくらいはしないと申し訳なくて落ち着かなかった。
「じゃあ、この子の名前を決めないとな」
「さくらが決めてくれたらいいよ」
ようやく落ち着いていつも通りの<作家先生キャラ>に戻ったアオと、それらの様子を微笑ましげに見ていたミハエルに言われ、さくらは、
「え…と、じゃあ、
と、割とすぐに決めることができた。
それと言うのも、実は電車に乗っている間に考えていたのだ。もし自分が名前を付けるならと。
「ほほう、
アオは感心したように顎に手をやり、
「意味とかはあるの?」
ミハエルはそう尋ねた。対してさくらは、
「水が湧き立ってキラキラと光ってる様子を表した漢字だとどこかで見ました。水が湧きだすようにこの世に生を受けて、その命を輝かせてほしいと思ったんです」
アオとミハエルを真っ直ぐに見詰め、名前に込めた想いを語る。
それを聞いたアオが、パン!と手を打って、
「素晴らしい!」
と声を上げた。しかしその上で、
「でも、それほどの素晴らしい想いが込められた名なら、自分の子に使った方が良かったんじゃないか?」
とも尋ねる。けれどさくらはそれには微笑みながら、
「いえ、だからこそこの子にと思ったんです。
ウェアウルフっていう、正直、人間達からは認められてると言い難い形で生まれて、しかもすぐに母親と引き離されて、この子はきっと悲しかったと思います。そんなこの子にも命を輝かせるチャンスがあるって思わせてあげたいんです」
そんなさくらにアオもミハエルも満面の笑みを浮かべ、彼女と共に<
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