業
ストーカーに、ストーカー行為が相手のためにならないことを理解させるには、結局、自身の認識が歪んでいることを理解させるしかないのだろうが、実はそれが難しい。
なにしろ、大前提として自身の認識が歪んでいるのだから、何を言ってもやってもそれらすべてを自身にとって都合の良いように事実を捻じ曲げて解釈してしまうが故に、
『間違っているのは、認識がおかしいのは、他でもない自分自身だ』
という結論に行きつかないのである。
だが、そんな厄介なストーカーでも、
『この人の言うことだけには耳を傾ける』
という相手が存在する場合がある。
それが誰であるかは事例によって違うだろう。しかも残念ながら<当人の親>ではない場合が多いと思われる。なにしろ、親の言うことに耳を傾けるような人間であれば、親からやめるように言われればやめるであろうから。
また、そもそも当人の認識が歪む原因を作ったのがその<親>である可能性が高い。
例えば、
『自分の子供が自分の見えないところで悪さをしていても、『自分の子がそんなことをするわけがない』と認識を歪ませている姿を見せる』
ことで、事実を自分に都合よく捻じ曲げて解釈してしまうという方法を学び取る。
といった感じだろうか。
親が我が子に、
<事実を事実として受け止める姿勢>
を見せてこなかったのだから、事実をそのまま受け止められる人間に育つことの方が難しいと思われる。
なので、『認識の歪みを治す』というのは、そもそも当人を子供の頃から育て直すに等しい手間と労力を要することなのだろう。
これは生半可なことではない。
ましてや、そのストーカーが唯一耳を傾ける相手が既に故人だったりしたとなれば、さらにハードルは高くなる。
なにしろ、
『そのストーカーが話に耳を傾ける相手を作る』
ところから始めないといけないのだから。
あまりと言えばあまりにも果てしない話である。
なるほどこれでは、
『懲りるまで徹底的に痛めつければいい』
という安易な方法に逃げたくもなるだろう。
しかし、それでは、
『その方法は通用しないという事実を認識できない人間を再生産する』
ことに外ならないのではないだろうか。
こうやって、間違いを間違いとして認められない、認識を歪ませた人間を延々と生み出してはその被害を受けるという、無自覚なマッチポンプの環を永遠に続けることになるのかもしれない。
だからどこかでその<環>を断ち切る必要があるのだろう。
だがそれは、もちろん言葉で言うほど簡単なことではない。
『事実を捻じ曲げて自分に都合よく解釈したい』
のは、程度の差こそあれ人間が元々持っている<業>なのだろうから。
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