霧の人形、ノルンは願う。
たった一つの世界を願う。
巨大な全知全能に阻まれて、世界は終焉の途を辿る。
たった一つの見出された希望。
欠損を破る、一抹の可能性。
絶望に凍える世界に、灼熱の怨嗟に満ちた世界に。
その救いを見出さん。
七つの大罪と七つの元徳。
あり方は違えど表裏一体。
生まれし魂は両天秤に汚されて、体という器で不自由に蠢く。
魂の帰る場所に救済は待ち受けず、ただ利用される。そんな世界。
けれどそんな救いのない大事など、実はどうでもよいのだ。
たった一つの願いは不変。
一貫した思いは、構造によって無惨にも貫かれるのだろう。
明日世界が滅びようとも、叶えたいのは一つだけ。
そんなワガママすらも、満たしてはくれないのでしょうか?
終末は近い。
再誕の先にある、泡沫の未来を、信じてみたい。
不幸の先に、幸あらんことを。
凄まじく鮮麗された世界観に鳥肌が止まらなくなる作品です。話数があるので初見の方は些か躊躇うでしょうが、読み進めればその広大さにどんどん引き込まれるでしょう。
人物や世界観、独自設定が深く細かく考えられた作品で、それらを綴る文章も大変に壮麗で芸術的です。凄艶な文体と、そこに組み込まれた美しくも残酷で艶かしい詩的な言葉達。正直、アニメ化をしてオリジナルサウンドトラックとか出ないかなと真顔で思いました。じっくり浸れる壮大な物語に、何度涙腺が崩されたことか……迂闊に喋ると興奮のあまりネタバレをしそうなのでぐっと堪えますが、本当に読み応えのある物語です。長いと思っても試しに五話までは読んでみてください。きっと気付くと読み進めていますよ。
白い人形の姉妹が辿る美しくも切なく、痛々しくも力強い軌跡を、是非目にしてみてください。レビューを書かせて頂いたら読み返したくなってきたのでまた読んできます。読み返しても楽しい作品です!
世界観がもはや宇宙規模のハイファンタジーだ。最初は人名や場所の名前が沢山出てくるが、読み進めていく内に慣れてくる。そして、この宇宙規模のハイファンタジーの核となっているのは、母と娘の物語なのだ。悪魔の女神である母親と、その娘たち。そんな娘たちの末娘が、主人公のノルンだ。
死と腐敗の白い霧渦巻く山に、凶暴なウロボロス。若き魔王。人々の混乱。陰謀と策略と祈り。しかし天国には、もはや神はいない。
主人公ノルンは、自分の分身(半身?)とも言えるルーンと共に、この世界の終末に巻き込まれていく。しかし主人公とルーンは、武器も術も持たないか弱い存在だった。そこに現れるのは姉である魔女たち。黄色の目。橙の目。緑の目。この姉たちは味方か? それとも敵か?
そして、主人公は願う。「優しいお母さんに会いたい」と。自分を作った母であり、世界に終末をもたらさんとする母。それでも幼い主人公は母に会いたいと願う。夢の中で母に会った主人公は、強くなる決心をするのだった。自分を守り、自分が守りたい物を守るために。
長大で壮大なハイファンタジー。
題名から嫌な予感はしますが、今後のノルンとルーンの成長を楽しみにしております。
是非、ご一読ください。