第94話『白い霧の中で不穏な遭遇!? 吸血鬼の少女グローリア VS 邪神フィリスの機械の騎士②』
私は悪魔の女神。少し先のこと、未来を見る。
白い瞳の子、ルーンが危ない。命を落とすことはないけど……上空から無理やり落とされて、機械の騎士の襲撃を受ける。
森林魔術―テラの大樹が、吸血鬼の少女を支えてくれる。ルーンは身体強化を行い、逃げに徹して、無数の騎士の斬撃を避け続ける。
だけど、限界がある。騎士に手足を切られて……最悪の場合、手足を両断されてしまう。
記憶を喪失している、今の状態では、強欲の烙印も効果を発揮しない。未来から持ち込んだ、天国の鍵(天のピース)にも気づけない。それに再生の聖痕も効果を発揮しないでしょう。ルーンは痛みに耐えないといけない。
魔物の
でも、それでは遅い。私は名を失って、正気を失いつつあるが……私の可愛い娘が苦しむのは嫌だ。
娘たちに過度な接触をしなければ、憎き創造主は邪魔をしないだろう。もう未来は決まっている。創造主が望んだ時の中で、冷酷な
成就したのだから、全ての興味を失って、小さな世界に干渉しないで欲しい。冷酷な神に、真面な褒美を求めることが間違いか……。
《お母さん……今、少しいい?》
突然、私の娘の声が聞こえた。私の目の前に、大好きな可愛い子がいた。
『どうしたの? 今は、過度な接触は避けたい。
分かるでしょう、ノルン?』
白い手足に銀色の髪、海の様に透き通る青い瞳をもつ少女。金細工で装飾された、白いローブを身に着けている。
時の女神の娘ノルン―天の創造主。
転移魔術。天国からとんできた。6対の12枚の白き翼を羽ばたくと、白い霧がそこだけ晴れていく。
《お母さん、大丈夫。触れたりせず、話をするだけなら問題ないよ。
この結果に、とても満足しているから。
私の話を聞いてよ、お願い。》
『……………。』
ノルンが甘えている。可愛いことは認める。私は答えずに、時の女神の娘ではなく、吸血鬼の少女に意識を向けた。早く、ルーンを助けてあげないと。
《お母さん、無視しないでよ。大切なお話なの!》
『ノルン、あの時……お話は終わりって言ったでしょう?
貴方は、天国で待っていなさい。憎き創造主がいなくなったら、
ちゃんと迎えにいくから……。』
《そっか……そうだよね。お母さんは、悪い私より、
お人形さんの方が好きだよね?
私は悪い子。お母さんの言うことをきかないから。
だから、私はお母さんに嫌われた。お話もしてくれない。》
『………………。』
創造主が、こんな嫌がらせをしてくるなんて、全く意味が分からない。
可愛いノルンとの楽しいお話? それは、憎き創造主を殺してから楽しめばいい。天国での決闘、最後の選択の場で少しだけなら話せるだろう。
希望の魔女が、天の創造主の計画を狂わせた? 再誕の
今にも悪魔の女神の高笑いが、霧の中から聞こえてきそうだった。
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私は、白い瞳の■■■・グローリア。
大きな蝙蝠の羽を横に広げて、ゆっくり滑空している。火炎魔術を行使しているので、浮力を得られて浮かぶことができている。
あ~、しんどい。魔力の消費が激しい。ふらふらするし、目が霞むよ。
もう嫌だから逃げよう。こんなに疲れるのいや。
真下では、邪神フィリスの騎士が行軍していた。この機械の殺戮兵器は、無視した方がいい。邪神の極星魔術―聖なる火は、女神の霧を吹き飛ばし、大地を粉々にして大きなクレーターをつくった。
機械の騎士の自爆を阻止できないのなら、逃げる方が得策ね。大きなクレーターができる程の爆発があったのに、騎士たちは行軍している。邪神の神聖文字が、騎士を守ったと考えて……邪神の極星魔術―聖なる火で、同士討ちにならないと思う。
神生紀文明の大量破壊兵器が、致命的な欠陥品とは思えない。
うーん、気になることはあるけど。あの騎士、機動性が低い。長距離を移動することを想定されていない。『もしそうなら……どうやって、あの騎士を運んだの? 大軍を転移魔術でとばすのは考えにくい。なにか別のもの?』
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《お母さん、無視しないでよ! 酷いよ、お母さんのばか!》
私は悪魔の女神。私の可愛い子が怒っている。ふむ。フィリスの極星魔術、どうしてもここで、ルーンを殺したいのね。
希望の聖痕。白い霧が、未来にある希望を届けてくれる。希望の魔女ノルン……優しい子に育ってくれた。母として、とても嬉しい。
《!? あのお人形が、そんなに好きなの!?
私だって、こんなこと……したくなかったんだよ?
天の創造主に操れて、嫌だったのに無理やり……。
助けてよ、お母さん。苦しいよ、しんどいよ。》
可愛い子が泣いている。次は泣き落としね。幼い子が、無邪気に泣いて、庇護欲が掻き立てられる……さて、希望の魔女の聖痕を有効に使いましょう。
最初の霧の人形よ、私の声を聞いて。貴方に希望を届けるわ。貴方には、白き人形の敵―嫌な役をさせてしまった。
反抗期。怒って暴れていいわよ? 壊してもいいおもちゃ―機械の騎士がたくさんあるから。ルーンを助けて……ウルズ。
《お母さんの鬼、悪魔! もう大っ嫌い!
二度と口を聞いてあげないからね!?》
ふんが~、もが~と可愛い子がまた怒っている。私は悪魔よ。『これは褒美と言えるわね。本当に可愛い……怒っていても可愛いわ。』
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『脅威を感知。聖神フィリスの極星魔術、行使を確認……。』
私は、白い瞳の■■■・グローリア。女神の霧が、私に囁く。
『騎士から!? 女神の霧、ありがとう。テラの大樹、私に―。』
『上空から接近。上空から接近……回避行動を。』
『!? え、上!? 私、上空にいるんだけど!?』
霧の中に私だけでなく、なにかいるの!? 鉄の盾を呼ぶ? 駄目、私より高い位置に出現させたら、その盾の重みで下に落ちてしまう。
見上げて、目を凝らしてみる。私にも、それが見えた。霧の中に巨大な金属が浮かんでいる。途轍もなく大きい、全長300mを超えている。
星間循環システム―フィリス・システムを利用して、星の水晶を燃料とする空飛ぶ船。私でも覚えている……あれは、空に浮かぶ金属の船、飛空船―“ノアの箱舟”。
邪神の極星魔術は光だ。攻撃速度が速すぎて、それが見えてからではかわせない。頼みの綱は、転移魔術……星の核がないと魔力不足で、連続行使はできそうにない。無理やり行っても、気を失ってしまう。
『脅威を感知、魔力増大。光の柱、接近……直ちに、転移魔術の行使を……。』
『光の柱!? いや、そんなもの、どこに逃げればいいのよ!?』
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