第4章 戦乱の幕開けの続き~希望の魔女と過去の天空の楽園。
第86話『過去の天空の楽園。光と時の女神、フェルフェスティとノルフェスティ。』
真上から温かい、優しい光が降り注ぎます。
辺り一面に広がる花畑を明るく照らしていく。下界にある太陽の光ではない。過去の時の回廊にもいた、光の精霊たちが集まっているのでしょう。
ここは過去の天空の花畑。私は、咲き誇る花々を踏まない様にゆっくり歩いていきます。昔の自分とは違い、ふらつくことなくしっかりした足取りで。
私は悪魔の女神の娘、希望の魔女ノルン。
銀色の髪に白い手足。海の様に透き通る青い瞳をもつ人形。弱い風が吹いて、私の銀色の髪を揺らします。
精霊の優しい風は、花や土の香りを私に届けてくれた。
白色やピンク色、オレンジ色など、色とりどりの花々も風に揺れる……緑色に光る綿毛? 空中に漂う生き物? 三匹の精霊たちが、私の前をふわふわと通り過ぎていきました。
精霊たちの優しい光を浴びると、穏やかな気持ちになります。
ふわふわと浮かぶ精霊たちが、一面に広がる美しい花々が、苦しくて嫌なことを忘れさせてくれる。ここは人や魔物が目指す、あらゆる世界の真上に存在する楽園。悪魔が徘徊する地獄とは真逆の場所です。
ここは確かに、人や魔物の魂が安らぐ、天空の楽園でした。残念なことに、この楽園は失われてしまった。私が、未来の天国に辿り着いた時、誰もいません。
だけど、過去の天空の楽園には、ふわふわと浮かぶ精霊以外にも、白いローブを着た人型の生き物がいました。
迷える魂を救う、天国の天使たち。
白いローブを着た女性は、精霊たちに何かの指示を出しています。その女性の言葉は分かりません。フードを被っているので、顔もよく見えなかったけど……女性の頭上に浮かぶ銀色の輪っかが、白く発光しています。白い翼が生えていても、凄く似合うと思いました。
生まれて初めて、正真正銘の天使を見たかもしれない。本物の悪魔にはよく会っているのに……私はどこかに隠れようか迷ったけど、その不安は不要でした。私の姿が見えていない様で、天使さんは私に気づいていません。
恐らく、私が未来から干渉しているためでしょう。私の未来は、天の創造主でさえ見えないから。
私は、天の光を浴びて輝く、真っ白な城に近づいていきます。あの城は、時の女神ノルフェスティの白亜の城。私の大好きなお城です。
過去の白亜の城には、私の母がいます。正気を失っていない、大好きな母が暮らしています。『お母さん、今すぐ会いたい。会って話がしたいよ……ねえ、お母さん。どうして、こんなことになってしまったのかな?』
お母さん、ごめん。言うことを聞かない悪い子で、ごめんなさい。
私は、時の女神の娘―天の創造主にばれずに、“過去改変”を行わないといけない。ルーンの過去の日記の中で、母を呼ぶ方法を見つけないといけない。
どこまで干渉すれば、天の創造主―
あれ、なんかくすぐったい。私の白い手に綿毛がついている。白く光る綿毛の様な生き物? 光の精霊です。この子は、もしかしたら、過去の時の回廊からくっ付いてきたのかも。
私の白い手や足をよく見ると、何匹かくっ付いていた。
光る綿毛、光の精霊に触ると温かい。手から離すと、ぷかぷか浮いて……なぜか、私の手や肩にまたくっ付く。『どうしよう、光の精霊たちは無害だから、別にこのままでも―。』
『※※※※※※※※※※※※※※※※※※※。
※※※※※※※※、※※※※※※※※。』
突然、誰かの声が聞こえた。驚いてドクドクと、心臓の鼓動が速くなる。だけど、どうしよう。言葉の意味が分からないの!
『※※※※※※※※※※※※※※※、
※※※※※※※※※※※※、※※※※※※※※※※。
※※※※※※※※※※※※、※※※※※※※※。』
思ったよりも近くにその人?はいた。
柔らかな金色の髪は長く、腰まで届いている。紐やリボンなどで纏めておらず、その女性が歩くたびに緩やかに波打っていた。その眼はとても温かい。
全てを優しく見守る、温かい金色の瞳で、私がいる辺りを見ている。私を見ているというより、私にくっ付いている綿毛を見ているみたい。『うわ、この綿毛のせいでばれた。この綿毛~、無害じゃない!』
でも、この人? なぜか、この女性に会えたのが凄く嬉しい。母に似ている気がする。私の姉たちよりも、この女性の方が似ていると思った。
さて、困りました。一番の問題は、この女性の言葉が分からないこと。私に、何か言ってくれたのは分かります。その言葉の意味が分からないの。
ジェスチャーなどで、自分の意思も伝えることもできない。だって、私の姿は見えないはずだからね。
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※母に似ている女性の言葉です。言葉が古すぎて、希望の魔女には分かりません。
『この子たちに気に入られて良かったですね。
姿も魂も見えない、透明の侵入者さん。』
『この子たちが気に入っているから、
地獄から這い上がってきた、悪魔ではないでしょう。
敵対する意思がないのなら、姿を見せて下さい。』
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あ、ふわふわと浮かぶ綿毛が集まってきた。私の近くにいる、優しい金色の瞳の女性にもくっ付いていきます。
『? 私の言葉が分からないのですか?
戸惑い、不思議……喜び? 私に会えたのが嬉しいの?
私の言葉が分からなくて、困っているみたいね。
この中で、貴方が読める文字はあるかしら?』
優しい瞳の女性が手を横に振ると、たくさんの文字が空中に現れていきます。残念なことに、殆どの文字が読めません。
でも、私にも読める文字がありました。神聖文字(霧の世界フォールの神生紀の文字に魔力が付与されている)に似たものがあります。
まだ、霧の世界フォールは存在していません。今、私の目の前にある文字は、神聖文字のルーツでしょう。
古い神聖文字で、こう書かれています。
『私は光の女神フェルフェスティ。
魂も見えない透明の侵入者さん、貴方はどこから来たの?』
私は、空中に浮かぶ、古い神聖文字を読んだあと、その女性をもう一度見ました。やっぱり、お母さんに似ています。
彼女は母と同格の存在であり、元始の神様。光の女神フェルフェスティ。
天の創造主は、元始の刻に光と時を捨てた。光と時の女神を……創造主から生まれた、光と時の女神は双子の姉妹でした。だから、こんなにも母に似ている。
伯母、叔母……お姉さんだね。光の女神フェルフェスティ。優しい
あと、この光る綿毛は、私の気持ちを感じ取っているみたいです。ちょっと、綿毛さん、私のプライバシーを守ってよ!
悪用されたら怖い、発光・電波綿毛。“情報流出・電波綿毛”と命名しようかな。
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