零 カコノキオク 中


 残り数段。

 ただそれだけで、地上が見える。


 どちらからともなく、足を止めた。


「ねぇ、くろと。地上、どうなってると思う?」


 「くろと」と呼ばれた少年は、振り返った。


「しろなこそ、どう思う?」


 「しろな」と呼ばれた少女は考え込んだ。


「んー。わかんない」


「僕もおんなじ意見。なんのために地下にいたかさえ知らないからな」


 やれやれ、と二人して肩をすくませた。


 歩き出そうとした少年を少女が手で止める。


「目、瞑ろ。上に着いた時、一緒に目をひらこ」


 頷き合い、手を繋ぎ、歩を進める。


 一歩一歩、確認するように。


 カツン――カツン――


 遅くはある、が光が見えていなかった頃に比べしっかりとした音が定期的にこだまする。


「さん」


 残りの段数を覚えていたのか、数段上がった所で少女が言った。


「に」


 もう一度、足を進めた瞬間に。


「「いち」」


 今度は、少年も合わせて。


「零!」


 二人して片足を地上に踏み入れ、叫んだ。


 目を、開けた。

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