34話「岡崎とのクリパ」
校内放送も終わり、いよいよ待ちに待ったクリパが始まった。俺はこの時間は自由なので、先程の
「岡崎、その……」
他の男子もいる教室で、なんと言って声をかければいいかわからなかった。変に誤解されるのもムカつくし、彼女に迷惑をかけてしまう。言ってしまえば、これはデートみたいなものなのだから。
「うん、聞いてるよ。いこっか」
岡崎は察しがいいようで、すぐに俺の意図を理解してくれ、そのまま教室の外へと歩き始める。俺もそれにつられ、後を追うように外へと出ていく。
「じゃあ、まずどうする?」
廊下に出たところで、とりあえず岡崎の行きたい場所を訊いてみる。
「
「んー、じゃあ無難に食い物系からいこっか」
「うん、分かった」
まず昨日つくし先輩と行った外の店に行くことにした。のはいいのだが、その道中、会話が全くない。岡崎も特に俺に話しかけてはこないし、そうなると俺も黙ってしまう。なんだろう、なんか先生に指定された班で修学旅行とかで建物を回ってる時の感じみたいだ。まあ実際、それぐらい俺たちの仲は良好ではないからなんだろうけど。
「……あのさ、よかったの? 俺なんかと一緒に回って」
この空気が嫌な俺は無理矢理にでも話題を作り、話しかけてみることにした。
「えっ……うん大丈夫だよ?」
「でも、石川たちと回りたかったんじゃない?」
「ま、まあ正直言えばそうだけど……でも、時間違うし……」
「委員長に言えば、時間ぐらい変えてくれそうだけどねー」
「で、でも転校したばっかりの人間がわがままを言うのはちょっと……アレじゃない?」
「まあ、それもそうか」
そんな会話をしてるうちに、生徒玄関に着いた。俺たちは外靴に履き替え、外に並ぶ店に向かった。
「んじゃ、まずあそこのクレープでも食べよっか」
俺はその屋台を指さしながらそう言った。
「うん」
岡崎はそれに軽く頷き、俺と共にクレープ屋へ行き、それぞれが好きなクレープを買い、昨日と同じようにベンチに座り、それを食べ始める。
「おいしいね、秋山くん!」
岡崎の舌にもこのクレープは合ったようで、とてもおいしそうな顔でクレープを食べていた。
「でしょ? なんか普通の店とかでも出せそうな味だよね」
昨日来ただけなのに、ちょっと得意げにして言ってみる。
「うん、そんな感じだね」
「――さて次はどうしよっか?」
2人とも食べ終え、次に行きたい場所を訊いてみる。
「秋山くんの好きなところでいいよ」
「んー、悩むなぁー……」
昨日は結局、野郎共と科学部の連中のせいでクレープ以外を見て回っていない。だから俺が案内できる範囲は高が知れていた。なので、どこへ行けばいいか悩んでしまう。とりあえず、知り合いの所ならマシだろうと思い、我が姉の
「――結構人いるね、どうする? 他行く?」
クラスに着くと、結構盛況なようで、立ち見ができるほど人が溢れかえっていた。これではまともに見れそうにもない。それに演劇は客の入れ替わるまで時間がかかるし、他にしたほうがいいだろう。なので、俺は岡崎にそんな提案をしてみる。
「私、あんま人混み好きじゃないから、できれば……」
岡崎はどこか申し訳なさそうにそう言ってきた。でもなんかその事実は意外だった。なんとなく勝手なイメージだが、岡崎はそういうの平気な人だと思っていた。『本土』からの転校生だから、そんな風に思っていたけれど、どうやら違ったようだ。
「そっか、んー……じゃあ次はあそこかな」
岡崎の意見を尊重し、他のクラスへ行くことにした。次の知り合いのクラスは当然、
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