第179話 圧倒的なケモミミツインテール

「見て見て見てくださいご主人様」

 急に洗面所から出現した謎の生物。もとい美冬。彼女は普段全くと言っていいほどしない髪型で登場した。

「北海道限定初音ミクのコスプレ?」

「中らずと雖も遠からずです。そもそもコスプレじゃないですし」

「あ、白上フブキのツインテール衣装」

「マジでぶち殺しますよ。ご主人様をバ美肉させて一生美冬のスマホから出られないようにしても良いんですよ」


 美冬はずかずかと進に迫り、そしてツインテールをさらりと手で払って見せつける。


「見てくださいこの圧倒的なケモミミツインテール。他を寄せ付けない可愛さ」

「はいはい」

「ただの一般人ならピクシブで画面越しに眺めるしかない存在を、今、ご主人様は目前にしているわけですが」

「ああうん」

「なんですかその素っ気ない反応は」

「いやピクシブとかあんま見ないし」

「まあ見たら殺しますからね。もし二次元の女に発情したら、噛み千切りますから」

 ピクシブには可愛いイラストが沢山あるので、進には見せられない。


 美冬が進のあまりの反応の薄さに行き場を失っていると、進が突然スマホのカメラを向けた。

「ちょっとなんですかそんな陽キャみたいなことして」

「いいじゃん別にたまには。なんか適当にポーズとって」

「そんな急に言われても……ええ……」

 と、困って口元に手を当てている様子が可愛かったので、それを撮って満足した。


 美冬はかえって不機嫌だが、そんなことは進はお構いなし。むしろ構いたくなって、美冬を抱き上げ胡座の上に乗せた。

 そして、いつものように愛玩動物の如く可愛がる。

 艶のあるツインテールを撫でられるのはいつもと違うところだ。美冬も構われている分には機嫌がいい。

 

「どうしたんですか? 急に積極的ですね」

「別にいだろ、たまには」

「たまに、じゃなくて毎日でも良いんですけど?」

 美冬は進の首に腕を回し、顔を近付けた。こうも甘やかされては我慢も難しい……が、直前で気付く。

「いまちゅーしたらお互いに臭い……ですよね。やだどうしましょ……」

 ラーメンを食べたばかりだ。歯は磨いても、息ばかりはどうにもならない。


 ひとまずは仕方が無いので、進の指を齧る事にした。最近は口さみしい時に丁度よいからとハマっている。

 それに、進がツインテールを撫でるのをやめたら、少し強く噛んでサボりを防止出来るのも便利だ。

「あ、ご主人様も美冬の指舐めます?」

「うーん……」

 微妙な態度が気に入らない。

 むしろ舐めて喰い千切ればいいのだ。

 美冬は人差し指を進の口に突っ込んで、進の舌で指が濡らされていくのを感じ取った。

 そして普段、彼が自分からこんなことをされているのかと、やっと自覚する。


 確かに、これは微妙な態度になるのも頷けた。

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