第184話
歪み。
またの名を『STRAIN』。
『STRAIN』が世界に生まれし時、世界の異変と同時であると言える。
また、『STRAIN』滅びし時、世界は二度ともとには戻らないだろう。
エイミー、エイムスはスメラギ・アン、スメラギ・ドゥにそれぞれ搭乗していた。
「なんだ、これ……」
彼らが見つけたのは、黒い渦だった。
漆黒にも暗闇にも見える――まさに闇。
それが轟々と渦巻いている。
「何だと思う? エイミー」
「そんなこと私に言われても解るわけがない。そうでしょう? エイムス」
エイミーとエイムスはそれぞれ会話を交わす。
渦は音を立てることなく、そのまま姿を維持している。
一番いいのは中に腕なり何なりを突っ込んで確認するのがいいのだろうが、実際、中に何が広がっているかどうかも解らない現状、そんなことをしてしまっていいのかというのが彼女たちの中で広がっていた。
「渦……これが世界のゆがみ? 実際、イーサン博士はなぜこんなことを――」
と、エイムスが言おうとした――その時だった。
スメラギ・アンの上半身が唐突に消失した。
「――エイミー!?」
上半身にはもちろんコックピットが格納されている。そして上半身が消失したということは――、起動従士が死んだことを意味していた。いや、正確に言えば『消失』しただけだ。死んだとも解らない。どこかに転移させられた可能性だって充分に考えられる。実際問題、それがどこへ飛ばされたかもわからないが。
ともかく。
目の前でエイミーが消失するのはエイムス――チャプターでさえも予測できなかった。
「可能性と計画をとことん無駄にする……こいつは不味い。これはいったい何だ? シリーズは、いったい何を隠している? 何を実行しようとしている?」
――今思えば、彼がここで考え込んでしまったのが、彼の失敗なのかもしれない。
刹那、エイムスの乗るスメラギ・ドゥの上半身も消失した。
起動従士エイムスが最後に見た景色は、一面の白だった。だが、これは誰も知ること等ない。
そしてその光景を遠くから目撃していたコルネリアは絶句していた。
「……な、何だ、あれは! あっという間にリリーファー二機の上半身が! 消失した! いったい、一体、あれは!」
「あれは『外敵』。正確に言えば、私たちと違う世界の『破壊者≪ブレイカー≫』を持つ世界。この世界が『救世主≪リリーファー≫』の世界であるならば、最初の外敵は破壊者のはず」
「……何を言っているの、エスティ?」
コルネリアは、恐る恐る背後に立つエスティの方を向いた。
エスティは笑っていた。
「破壊者と救世主。幾つもの『よく似た世界』には無作為に破壊者と救世主、その何れかが付与される。破壊者が付与される世界もあれば、救世主が付与される世界もある。だけれど、それが『例外処理』される世界もある。……それが、ここ」
「例外処理……? 破壊者でも救世主でも無い、別の存在がこの世界にあるということ?」
「あなたはそれを知っているはず。救世主に圧倒的な戦力差を誇る、最強の『救世主』を」
それを聞いて彼女はピンときた。
「まさか――『インフィニティ』!?」
「そう」
エスティは頷き、漸く椅子代わりにしていた机から立ち上がる。
「インフィニティは最強の『救世主』だと言われていた。いや、そう研究されていた。実際問題、今までそのように開発されていると信じ込まれていたから。でも、普通に考えてみれば、どうして救世主が救世主を圧倒的な戦力差で淘汰出来るそれを封印してしまったのかしら? 答えは単純明快、だったら、インフィニティは救世主ではなく破壊者だとすれば? 救世主とは別のベクトルで最強かつ異質な存在である破壊者であるとするならば、救世主に対する圧倒的戦力差も説明がつく。そうではなくて?」
「圧倒的戦力差……破壊者……ですって?」
「ええ。だから、今二機のリリーファーを、反撃の暇を与えることなく殲滅させたのはまぎれなく破壊者の仕業ということ。そして破壊者はこの世界との『戦闘』を望んでいる」
「世界との……戦闘、だと? エスティ、お前はいったい何を言っているんだ?」
「別に。知っていることだけを羅列しているだけだよ」
エスティの言葉を聞いて、コルネリアは立ち上がる。
「どちらへ?」
部屋を後にするコルネリアに、エスティは訊ねる。
間髪を入れずに彼女は答えた。
「決まっている。今から追加出撃をする。リリーファーが意味も解らず二体潰された。こちらだって黙って指を銜えているわけにはいかないからね」
「そうね。けれど――」
エスティはコルネリアに近付く。
コルネリアは逃げようと後退するが、直ぐに壁にぶつかる。
エスティはコルネリアの身体を丁寧に撫で始める。彼女の輪郭をたどるように、ゆっくりと、ゆっくりと。
「でも、私の話した情報と、あなたの知っている私についての情報……現状では、あまり知っていてほしくないものもあるのよねえ?」
「よせ。何をするつもりだ……!」
コルネリアの言いかけた言葉を、エスティは自らの唇で塞いだ。
にゅるり、という音がしてコルネリアは自らの口内にエスティの舌が入っていくのを実感する。とろけるような柔らかさ、そしてほのかな甘さが彼女の口内を蹂躙していく。
コルネリアはもう腰が砕けそうだった。そんな快楽など味わったことなどなかった彼女にとって、初めての体験だった。
一分近くに及ぶ接吻が終わり、漸くコルネリアとエスティは唇を離した。お互いの唾液が混ざり合い、それが糸となり彼女たちを繋ぐ。
コルネリアは一瞬ぼうっとしていたがすぐに冷静を取り戻す。
「いけない。こんなことをしていては。だって私たちは――」
「私たちは――何?」
ゆっくりと、エスティはコルネリアの服を脱がし始める。毛糸のジャケットを脱がし、ブラウスのボタンを一つずつ外していく。コルネリアは、それに逆らえない。
「だめ、だめ……!」
流石のコルネリアだって、これから何をするのか予測できていた。
だがエスティは止めることなどせず、コルネリアのブラウスのボタンを凡て外し、そのままブラウスをはだけさせた。
白のブラジャーが彼女の胸を包み込んでいた。
とはいえ、そのブラジャーは彼女の胸に合致していないのか、零れそうになっている。ブラウスを着ている状況からでも彼女の胸の大きさが理解できているので、いざブラウスをはだけさせ身近に見るとそのサイズを実感できる。
「やめて、もう……」
「あんなコルネリアが、服を脱がしただけでこれだけ恥ずかしがるなんて……。きっと誰も見たことが無いでしょうね?」
エスティの言葉を聞いて、さらにコルネリアは頬を紅潮させる。
そして躊躇なくエスティは彼女の背中に手を通し、ブラジャーのホックを外していく。
そして、すべてのホックが外れたと同時に、ぷるん、という音を立てて彼女の上半身唯一の装備となっていたブラジャーが外れる。
彼女の二つの山、その頂上にはほのかにピンク色の突起があった。
それをエスティは指でつつく。
指でつつくたびに、コルネリアは小さく喘いだ。
「……ふうん、確かに騎士団の時から男っ気が無かったけれど、これを見た限りだとほんとうに経験無さそうね?」
「ねえ、お願い……もうやめて……ッ」
そう言ったと同時に、エスティは彼女のピンク色の突起を指で弾いたからだ。
「んっ……!」
コルネリアの嬌声を聞いて微笑むエスティ。
「どうしたの、コルネリア? やめて、とか言っておきながらとても気持ちよさそうだけれど? もしかして自分に嘘を吐いているの? だったら止めておいたほうがいいよ。自分に忠実になったほうがいいと思うよ」
「そんな……ことっ」
言われても困る――と彼女は言いたかった。でも、エスティの愛撫が擽ったくて、こそばゆくて、気持ちよくて――まともに反応することが出来なかった。
エスティの愛撫は次の段階に移る。ピンク色の突起がほのかに隆起しだし、コルネリアの顔が火照ってきたのを見計らって、エスティはその山全体を掌で優しく包み込んだ。直に、彼女の鼓動や体温が伝わっていく。
そしてゆっくりと、彼女の胸を揉みしだいていく。細かく、切なく、儚くコルネリアの口から嬌声が漏れる。彼女もその声を聞いて恥ずかしくなるのか、右手で口を抑えて出ないようにする。
だが、本能には逆らえない。
「んんっ……! ああっ……」
儚い声が、部屋の中に広がっていく。
そして次にエスティは、下腹部に手を添えていく。指で肌をなぞっていく。
そのたびにぞくぞくと悪寒がコルネリアに襲い掛かる。しかし今の彼女はその悪寒すら快楽と変わっていた。
エスティはコルネリアの着ているズボンに手をかける。
「やめてくれ……それだけは……そっちだけは……」
コルネリアの必死の言葉に、一度は手を離す。
だが、二回目はそうはいかない。
ズボンに手をかけて、そのままゆっくりと下ろしていく。すぐに白いパンツが姿を見せた。白いパンツの正面にはリボンがワンポイントついている。質素ではあるが、コルネリアらしいパンツだとエスティは思った。
「エスティ……もう、もうやめてくれ」
「何で?」
エスティは微笑む。
「何で、って……私たち、女性だろう? ……女性同士で、そんなことをするのは……」
エスティはコルネリアの言葉を無視して、コルネリアの秘所を布越しに触れる。ほのかに二つの山となっており、その合間は湿っていた。
「あれ? どうしてまだ何もしていないのに湿っているの? ……ああ、そっか。胸を揉んだからだね。それだけで濡れちゃうなんて、コルネリアって変態ね」
「違う、違う……」
もうコルネリアは泣きそうだった。
エスティはその表情を見つめながら、ゆっくりとコルネリアからパンツを脱がしていく。
そして、コルネリアは生まれたままの姿になった。
秘所からぽたり、ぽたり、と蜜が垂れていた。脹脛を伝ってズボンにもしみこんでいた。
「見ないで……」
コルネリアは顔を赤らめて、そう言った。
「可愛い、コルネリア」
エスティは彼女の秘所に顔を埋める。そして、エスティは舌を這わせ秘所から溢れる蜜を舐めていく。舌の感触が彼女にとって快楽となり、舐められるたびにコルネリアは喘いだ。
「ねえ、コルネリア」
息も絶え絶えになっているコルネリアに、エスティは訊ねる。
「続きは、ベッドの上でしましょう……?」
「…………」
コルネリアはその言葉にノーとすぐに言うことは、出来なかった。
◇◇◇
彼女が目を覚ました時、ベッドの上に横たわっていた。
起きると何も着用していなかった。秘所からは薄い赤色の液体があふれ出ていた。
それだけを見て解らない彼女では無い。ここで何があったのか、彼女の身体から『何』が失われたのか――。
彼女は何があったのかを思い出す。エスティに胸を揉まれ、服を脱がされ、そして――。
「ああ、私……」
コルネリアはエスティとここで、行為に及んだ。
それを思い出して彼女は頬を紅潮させた。
そして、彼女はまた思い出す。
「そうだ、あの渦……!」
彼女は服を着て、急いで部屋を後にする。
管制室へ向かうまでそう時間はかからなかった。
管制室に向かうまで、違和を多々感じられた。
――なぜ人が居ないのか?
レーヴにそう多くない人間とはいえ、三十人近い人間が常にアジトに居る。だから、いないわけがない。すれ違わないわけがないのだ。
管制室に入ると、その不安は的中した。
管制室にも、誰も居なかった。
「……どういうこと?」
モニターを確認する。モニターはレーヴアジトの凡てを映し出している。そして、その画面さえ見ればどこかに人がいるか解る――そう思っていた。
だが、どこにも人間が居なかった。
「どこに……みんなどこへ消えてしまったというの?」
モニターの画面を一つ一つ確認するコルネリア。
どこへ消えてしまったというのか、どこに居なくなってしまったというのか。
そして彼女は一つの画面を見つける。
「いた――!」
人間の姿が見えた。
しかも、その姿を見た限りでは――そこに居たのはエスティ、崇人、ヴィエンスだった。
「エスティ……タカトをどこに連れていくんだ?」
そして、コルネリアは管制室に用意しておいた拳銃を装備して、管制室を後にした。
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