第73話

 時間は少しだけ遡る。

 具体的にはエレンがイグアスに遠くに逃げるように命じた、そのタイミングでのことだ。

 彼女は、マーズの推測通り人工降雨システムを行使していた。

 人工降雨システムはあまりにも強すぎて、その代償が計り知れない。しかし、このリリーファーを倒せる可能性が一番高いのは、この人工降雨システムにほかならなかった。


「これを使うしかない……まさかこのムラサメがここまで追いつめられることになるとはね」


 エレンは呟く。そしてその呟きは誰に聞こえるでもなくコックピットの内部に霧散した。

 人工降雨システムはあまりにも強すぎる。

 だから彼女の中でもそれはセーブすべき存在であることは充分に理解していた。人工降雨システムを使うのは、あまりにも強すぎてそれを使うに値するリリーファーにのみ使う、と彼女は心の中で決めていたのだ。

 そして、今。

 彼女は人工降雨システムを使う時がやってきたのだ。

 彼女はキーボードめいた操作盤を巧みに操って、あるコマンドを入力する。

 すると、彼女の乗っているコックピット全体に音楽が鳴り響いた。それは悲しい音楽だった。郷愁を漂わせる、そんな音楽だった。

 エレンは突然流れてきたその音楽に驚いたが、すぐに平静を取り戻す。


「……ほんっと、悪趣味な音楽ね。まあ、だいたい誰がつけたのかは想像つくけれど」


 彼女は頭の中に思いついた幾人かをすぐにかき消して、再び戦局に集中する。

 ムラサメの背中からはすでにドライアイスを封入した弾丸が空に向かって放たれている。そう時間もかからないうちに雨雲が空に形成され、そして雨が降り注ぐ。

 その雨は強い酸性で、リリーファーの装甲をも溶かすほどだ。

 だからこそ、彼女はそれをむやみやたらに使おうとはしなかった。

 なぜなら、彼女は雨が嫌いだからだ。カーネルの育成した『|魔法剣士団≪マジックフェンサーズ≫』はすべて孤児を引き取ってカーネルの人間によってリリーファーの技術及び魔法を究極までに教え込まれたエリートである。

 しかしながら孤児の時代の記憶が完全に消えたわけではない。ある情景をみるとその時代をフラッシュバックしてしまうのだ。




 ――彼女にとって、それが『雨』だった。




 雨をみると、彼女はいつもある情景を思い出す。

 雨の降る町並みで、彼女は町行く人々を眺めていた。

 彼女の服はボロボロで、薄汚れていた。そして誰からかもらったのもわからない青いタオルケットを持って暖を取っていた。

 べつに彼女は施しを受けたいから、人々を眺めていたわけではない。しかし、そのような風貌の人間がじっと人々を眺めていればそのように誤解する人間がいるのもまた、当たり前のことであったりするのだ。


「そんな格好をして、お情けが受けたいだけなんだろう!」


 ある人間は彼女を蹴った。だがそれについて咎める人間はいない。笑っているか見ないふりをしているかのどちらかだ。

 彼女はごめんなさいと何度も謝りながら泣いていた。だが、その人間は蹴るのをやめない。

 きっと憂さ晴らしの意味もあるのだろう。その人間の住む世界が息苦しくてストレスもあったのだろう。だから、その人間よりも地位の低い彼女を攻撃することでそのストレスを少しでも軽減したかったのだ。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!!」


 彼女は何度も謝る。

 でも、その人間は蹴り続けた。自分の気が済むまで。

 暫くして、漸くその人間は蹴るのをやめた。煙草に火を点け、何事もなかったかのように歩いて行った。


「やっといなくなった……」


 彼女が安心したのは、その人間がまったく彼女の視界から見えなくなってから、の話だった。




「なんでも好きなものをあげよう。ほら、君の大好きなお菓子だって何だって、食べさせてあげるよ」


 そう言ったのは、彼女と同じように薄汚れた服を着た人間だった。

 でも小さい彼女はそれに何の疑問を抱かぬまま、ついていくのだった。それを疑問に思う人間はいない。ただ、『ないもの』同士のやりとりなのだと思いはするが、それだけにとどまる。

 路地を歩き、道を歩き、彼女は漸くその場所を目の当たりにした。

 そこは大きな屋敷だった。凡てが金色に出来ていた屋敷だ。金箔を塗ったなどと言っていたが、どうみても金で作ったような感じだった。

 屋敷に入り、風呂に入った。彼女にとってそれは初めてのお風呂でもあった。今までのお風呂なぞ雨のシャワーで充分だったからだ。

 汚れた身体をきれいにして、彼女はその人間の部屋に招かれた。

 人間は裸になって、ベッドに横になっていた。


「おいで、おいで」


 そう人間は手招きするのを、彼女は何の疑問も抱かずに、頷いた。

 ――彼女は破瓜にされ、純潔を失った。

 痛みを伴い、血を流した。

 そんなあいだでも、人間は笑っていた。

 何回も痛み、何回も涙を流した。

 そして涙を流すと、人間は彼女の頬を叩いた。

 人間は、彼女に何の反応もしてほしくなかったのだ。


「お前はただの人形だ。ただ善がっていればいい」


 口調を変えた人間の言葉は、彼女にとって恐怖そのものだった。

 暫くして、人間もその行為に飽きたのか彼女を捨てた。

 彼女は本当に要らなくなった人形よろしくゴミ箱へと捨てられた。

 流石に焼却処分とまでは至らず、ゴミ処理場の人間に助けられたが、彼女はそれを最低限だけ受け取った。

 彼女はこの時点で――もう人間が嫌いだったのだから。




 そして舞台は再び、戦場へ戻る。

 エレン・トルスティソンは長い夢を見ていたようだったが、しかしそれでも雨はまだ降ってはいかなった。


「まだ降らないのか……」


 遅い。エレンは一瞬そんなことを考えた。

 しかし、あのリリーファーにはそれをとめる手段などないはずだった。

 とはいえ、あまりにも遅すぎる。


「……わからん。まったくわからんぞ。どうしてこんなに遅いんだ」


 コックピットにつけられた時計をみた限りでは、もう一分近く経過している。もうそろそろ雨が降ってもおかしくないのに、まったく降らない。

 と、思っていたちょうどその時だった。

 大地に一滴、雫が落ちた。

 それを追うように一滴ずつ増えていき、それは次第に『雨』と化していった。


「なんだ。ちょっと早すぎただけか」


 雨は降り頻る。そしてその雨の一粒一粒が強い酸性を持っている。そう簡単に抜け出すことも出来ないこの状況ではおとなしく装甲が溶けるのを待つしかなかった。

 この酸性雨を浴びても装甲が溶けないリリーファーなどいない。

 少なくとも、このときの彼女はそう思っていた。

 しかし。

 敵のリリーファーの装甲は、溶ける様子もなかった。


「……おかしい。こんな溶けないわけがない……!!」


 そう。

 溶けていない。溶けていないのだ。

 その状況で、明らかに彼女は『動揺』していた。

 そして。

 その隙を突かれた。

 刹那、ムラサメの中心部が何かの力で刳り貫かれた。

 敵のリリーファーはただ、触れただけだった。


「……へ?」


 そして、ムラサメ00は停止する。エンジンの部分が破壊されてしまったからだろう。


「ここが私の空間だったのに」


 彼女は操作盤を叩く。

 しかしエンジンが破壊されたリリーファーが動くはずもない。


「ここが私の空間だったのに! 今まで人間にひどい目に合わされて、見返そうとして! 魔法剣士団のリーダーになって! ずっとずっとずっとずっと、私の一番好きな空間、私だけの空間はここだけだったのに!!」


 叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く。

 けれども反応するはずもない。

 反応するわけがなかった。


「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!! ここは私の空間、私の場所、私の世界、私の凡て! 何もかも! ここには私という存在があって、私という存在が唯一私だと確認出来る場所!!」


 彼女が言っても、ムラサメは動くわけもない。

 エンジンのないリリーファーなど、ただのガラクタなのだから。

 そして彼女は、考えることをやめた。

 もう何も出来ない――自分は何も出来ない、臆病な人間だと思い知らされたからだ。

 だから、インフィニティが攻撃をした時も、彼女は何も考えていなかった。

 強いて言うなら、自分が終わったということを理解したくらいだろうか。

 このまま眠ってしまいたい。

 このまま消えてしまいたい。

 そう思いながら、彼女は微睡みの中に落ちていった――。



 ◇◇◇



「どうやら、俺が色々している間にこっちも色々あったようだな」


 リリーファー格納庫にてムラサメとロイヤルブラストの修理が急ピッチで行われているのを眺めながら、崇人とマーズは会話をしていた。

 マーズは紙コップのコーヒーを一口含んで、それをはっきりと飲み込む。


「何が一番苦労したか、ってエレンをムラサメから降ろす時の話だよ。修理するから降りろ、と言っているにもかかわらず『ここは私の世界だ』と言い張って降りようとしなかった。それどころか整備士に殴りかかってきたんだぞ」

「そりゃ本当か?」


 崇人はマーズから聞いた事実に、思わず目が点になった。


「嘘だったらこんな話はしない」

「……なら、どうやってそいつを止めた? そのエレンとかいう奴は見た限りだと居ないみたいだが」

「そうだったな。タカトはムラサメの姿は見たことがあってもその中の起動従士までは見たことが無かったか。綺麗だが可愛げの無い奴だ、まぁなんというか……ツンデレ?」

「いや、見たことがないからはっきりとは言えないが、絶対それはツンデレの定義と合致しないだろう……」

「話を戻すわね。どうやって彼女を落ち着かせたか、というと簡単な話よ。ちょっと強めの鎮静剤を使ったの。それで睡眠導入剤も追加して、今は眠らせているわ。……どうやら彼女は相当ひどい過去があったようね」

「一つのモノにそこまで執着するのは、まるで子供の言い分だな」

「あら、あなただって今は子供じゃなくて?」


 マーズはそう冗談めいた発言をした。しかしながら、崇人が昔居た世界でもこの世界でも、法律上子供は十九歳までと言われているため、結果としてマーズも言うなれば『子供』の部類に入る。

 だからといって崇人はマーズも子供ではないか、などとツッコミは入れない。話のテンポが悪くなるし、野暮だ。


「……まぁ、とりあえず」


 崇人は腰をポンポンと叩いた。


「俺が寝ている間……どんな出来事があったのか、そしてこの戦争はどうして発生しているのかを簡単に教えてくれないか」


 崇人のその言葉に、マーズは頷くほかなかった。



「……なるほど。つまり戦局はどちらかといえば劣勢にある、ということだな」


 崇人はマーズから簡単な話を聞いて、そう言った。

「それで、話を聞いてあなたはどう思う?」

「どう、って?」


 そのままの意味よ、とだけ言ってマーズは歩いて何処かに行ってしまった。


「おい、ちょっと待てよ。俺は何処に行けば……!」


 崇人の悲痛な叫びを他所に、整備士たちは必死に負傷したリリーファーの修理に全力を注いでいた。



 ◇◇◇



 マーズ・リッペンバーは一人ある場所へ向かっていた。

 本当は騎士団長である崇人に行かせるべきなのだが、彼はここに来たばかりでまだ理解しきれていないところが多い。だから、崇人には言わずにマーズだけが行くこととなった。

 そもそも、崇人がまさかここまで早く復活するとは、誰一人として思っていなかったのもまた事実である。今回の戦争についてはマーズがずっと騎士団を引っ張っていかねばならない――と彼女も考えていたのだろう。

 彼女は唐突に咳き込んだ。一回だけではなく、何回も、何回も。身体を曲げ、苦しい表情になりながらも咳は止まらなかった。

 漸く咳が止まった頃には、息も絶え絶えだった。

 しかし二回ほど深呼吸しただけで乱れた呼吸は落ち着いた。

 彼女はこのようなことがもう半年以上前から続いていた。風邪薬を服用していたが、それでも治ることはなく、寧ろ悪化していった。

 しかし一度咳き込んでしまえば数時間は出なくなるために、この症状は風邪ではなく、また別の疾病なのか。そう思わせるほどだった。

 とはいえ彼女が起動従士を休むわけにもいかなかった。どれくらいの期間にしろ起動従士を休んで、専門的な治療に専念すれば、もしかしたら治るのかもしれない。

 だが、それは間違っていた。放っておいても治るはずなどなく悪化していく。あまり咳き込んだタイミングに他の人に見られていないのは救いだといえるだろう。


「まったくもって……ムカムカする症状だ。訳が解らない」


 これが風邪ではないことは、彼女はもうとっくに気が付いていた。

 気が付いていたからこそ、他の誰にも相談することは出来なかった。

 彼女の周りの人たちはとても優しい。優しいが、彼女はその優しさを気安く使おうなどとは思わなかった。

 それは女神マーズ・リッペンバーの、一種の『|矜持≪プライド≫』のようにも思えた。しかし、彼女がその矜持を持ち続ける理由等は、生憎殆どの人間が知り得ない情報だった。


「ハリー騎士団副騎士団長、マーズ・リッペンバーです。入ります」


 彼女が扉の前に辿り着いたのは、彼女が考えていた様々な思考が纏まりきる少し手前のことだった。とはいえその思考は他愛のないものなので、直ぐに脳内のワークスペースから片付ける。


「入室を許可します。どうぞ」


 扉の向こうから声が聞こえて、彼女は扉を開けた。

 そこは操舵室だった。とはいえ今は運転などしていないから仕事などないのではないか――などとマーズは思っていたが、操舵室は予想外に活動していた。


「済まないな、マーズ・リッペンバー副騎士団長。このような場所まで呼んでしまって……」


 彼女を呼ぶ声が聞こえて、マーズはそちらを向いた。

 そこに立っていたのはメガネをかけたショートカットの女性だった。軍服を着ていたが胸ポケットには花弁をあしらったボールペンが刺さっていることを考えると、普通の女性と似たようなもので可愛いものが好きなのだろう。


「私は通信部長のセレナ・ディスターだ。以後、よろしく頼む。……まぁ、堅苦しいのが嫌いならばセレナと呼び捨てにしてくれて構わない」

「……早速で悪いが、用件について話してくれないか? 生憎こちらも途中参加の団長に様々なことを教えなくてはならないから、それに時間を割く必要があってね」

「解った。それでは手短に話すとしよう。私の役職から薄々解ると思うが、本国からの通信がメインだ。出来ることならば早急に会議を開きたいのだが、艦長も忙しくてな……。取り急ぎハリー騎士団とメルキオール騎士団の二つの騎士団には伝えねばならない、そう思った次第だ」

「なるほど……メルキオールの方には伝えているのか?」

「同時に連絡は行ったが早く来たのはそちらの方だ」


 セレナがそう言うと、扉の向こうから、


「メルキオール騎士団騎士団長、ヴァルベリー・ロックンアリアーです。入ります」


 そう、ヴァルベリーのはっきりとした声が聞こえてきた。


「入室を許可します、どうぞ」


 それを聞いてセレナは答える。


「失礼します。……なんだ、マーズの方が早かったようだな」


 そう言うとヴァルベリーは小さくため息をついた。


「なんだそのため息は。私が早かったからなんだというのだ」

「いや、別にな……。ただ私の方が早く着いたと思っていたから、尚更」

「……ちょうどお二人集まりましたようですし、話を始めてもよろしいですか?」


 セレナはヴァルベリーとマーズの会話に苛立ちを覚えていたらしい。少しだけ眉間に皺が寄っていたからだ。

 それに素早く気が付いたマーズは、セレナの言葉に小さく頷いた。


「それでは、話をさせていただきます。先程、本国国王陛下から連絡がありました。ガルタス基地にて法王庁自治領の所有するリリーファー三十機と戦闘を行ったバルタザール騎士団が僅か数分で殲滅、及び騎士団とリリーファーは法王庁が拿捕していった、とのことです」

「……それ、冗談のつもり?」


 簡略化されたようにも思えるその発言は、マーズとヴァルベリーの二人を大いに驚かせた。

 だが、セレナはそれを否定するように首を横に振る。


「いいえ。それは残念ながら真実です。哀しいことではありますが……」

「ならば、バルタザール騎士団はどうするというのだ。法王庁から解放させる、とでもいうのか?」


 質問したのはヴァルベリーだった。


「そのようですね。現に国王陛下は『バックアップ』を使って、改めて法王庁に挑むとおっしゃっておりました」

「馬鹿な……! 鍛錬を積んだ正規の騎士団と、所詮二番手のバックアップだとその能力は段違いだというのに!」

「私も一応そういいました。しかし、国王陛下は既にそれを決定なされているようで……」

「陛下はいったい何を考えているというのだ……。まったく解らんぞ」

「そんなこと、私にだってわかるはずがない」


 マーズとヴァルベリーはそれぞれ言葉を交わす。


「まあ、仕方ありません。とりあえず、本国からの通信は以上です。再び、業務にあたってください……とでも言えたら気分が楽なんですがね。もう二つ報告があります。此方はもっととんでもないものですよ」

「もっととんでもない?」


 マーズはこれ以上に酷いことが起きたのか、と口を挟もうとしたが、ともかくセレナの話を聞かねば何も始まらないこともまた事実だ。


「……もしかしたら、もうラジオで聞いた話かもしれませんが、ペイパス王国が先程独立宣言をし、今回の戦争に参戦すると発表しました。参戦は、法王庁の味方として、です。そして、最後の一つ。これこそが一番重要でヴァリエイブルの国民ならば知らなくてはならない事実とも言えるでしょう」

「なんだ。もったいぶらずにさっさと言え」


 ヴァルベリーは苛立っていた。それを隠す様子もなく、セレナを急かす。


「そんな急かさなくてもすぐにいいますよ。……国王陛下、ラグストリアル・リグレーが、何者かに暗殺されました」


 その表情は、とても慎重な面持ちであった。

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