第40話

 マーズとヴィエンス、エルフィーとマグラスがハイテックへとやって来たのはそれから三十分後の事だった。

 マーズは改めて崇人とコルネリアから状況を聞き、小さくため息をつく。


「……全く、どうしてタカトが居たのに攫われてしまったんだ……。というか、どうしてお前らは探索もせずジェットコースターで遊んでいたんだ!?」

「それについては、本当に言い訳が出来ない」


 崇人は項垂れた様子で言うと、ヴィエンスが崇人の胸ぐらを掴んだ。


「おい、タカト。お前やる気があるんだろうな? 騎士団長という役目も出来ないんなら、今回の任務はお荷物に過ぎないと思うんだが」

「それまでにしておけ、ヴィエンス」


 マーズの言葉を聞いて、ヴィエンスは舌打ちをして手を離す。

 マーズは咳払いをして、話を始める。


「……予想外の事態が起きてしまったことには変わりない。ここで、もうひとつの作戦を考える。機械都市カーネルの攻略に次いで、エスティ・パロング団員の救出作戦を、現時刻を持って開始する」


 その口調は静かで、重々しいものだった。

 そして、その一言は、騎士団の意識を高めるものでもあった。

 マーズのスマートフォンが通知音を鳴らしたのはその時だった。


「……ルミナスからか」


 そう言って、マーズは通話に応じる。


「もしもし、こちらマーズ」

『マーズ? ルミナスだけど』


 ルミナスの口調は、どことなく緊張しているようだった。


「そいつはスマートフォンの画面表示で嫌というほど解る。用件を手短に頼むよ。こちとら一つ大事な作戦が追加されてしまったからな」

『そうかい。だったら、悪い知らせになってしまうね。残念ながら』

「……おい、どういうことだ」


 その発言に耳を|欹(そばだ)てるマーズ。

 騎士団の面々は、マーズの一挙動一挙動を見てそわそわしていた。その内容によっては、彼らに課せられる任務の重量が増したり減ったりするからだ。


『悪い知らせといい知らせが一個ずつある。どちらから聞きたい?』

「どっちでもいいが、悪い知らせを先に聞いたほうがいいだろうな。気持ちの問題だが」

『わかった。それなら、悪い知らせから話そう。つい先程、カーネル側からヴァリエイブルへ通告がきた。通告というよりかは勧告に近いかもしれないな。内容はどんなもんだと思う?』

「まあ、大方予想はつくな。ラトロのことだ。インフィニティのことに関してだろう?」


 それを聞いて、崇人がマーズの方を見る。

 そのあとも、マーズは電話を続ける。


『そうだ。カーネルは「インフィニティの分析・研究を認めるならば、今回の戦争を終えても良い」と言い出してきた。当然ヴァリエイブルは反発したさ。そんなことをされては戦争の切り札が奪われることになるからね。我々としてもまだ解析が済んでいない「|番外世代(アウタージェネレーション)」のインフィニティをおめおめとラトロに奪われたくはないしな』

「だったら、どうするんだ? カーネルもそう簡単には引かないだろう?」

『ああ、その通りだ。だから、カーネルはだというのなら、戦争をしようと持ちかけた。「よろしい、ならば戦争だ」と言いたげにな』

「ほう……」


 マーズはゆっくりと、しかしその事態を楽しむかのように、にやりと口が綻んでいく。


「面白いことになっていくようだな、今回の戦争も」

『戦争を楽しんでいるのは君くらいだよ、まったく』


 そう言ってルミナスは小さくため息をつく。


「そういえば、もうひとつのほうは?」

『ああ。それがね――』


 その時、崇人は背後から近づく足音に気がついた。

 そして、彼はゆっくりと振り返った。

 そこに居たのは――。


「……アーデルハイト?」

『今作戦においてペイパスとヴァリエイブルが休戦条約を締結。なおかつ、協力としてアーデルハイト・ヴェンバック少尉が参加するようだよ』


 アーデルハイトの和やかな笑顔が、崇人の目に写りこんだ。


「良い知らせってのは、そういうことか……」


 マーズは通話を切って、改めてアーデルハイトと対面する。

 アーデルハイトは今、完全に私服であった。青のダメージジーンズ、白いTシャツ(模様はよく解らない幾何学模様である)に緑のジャンパーを羽織っていた。


「……それって私服?」

「ええ、そうよ」

「すんごいヤンキーっぽいな……。イメージと違う」

「あなたの方こそ、私服はすごく可愛らしいのね。イメージと違うよ」

「ま、まあまあ。今は争うことじゃないし……」


 マーズとアーデルハイトが火花を散らしているのを崇人が手で制して、アーデルハイトは小さく頷いた。


「まあ、そうね。たしかに今はそんなことを言っている場合じゃない。さっさと事を済ませなくてはいけないわ。事はあなたたちが思っている以上に重大になっているからね」

「……と、いうと?」

「私が再びヴァリエイブルに召還されたことを考慮しても、解るんじゃない?」


 崇人の問いにアーデルハイトは明確な答えを示さなかった。


「カーネルが提示した『インフィニティの解体を含めた解析・研究』をヴァリエイブルは頑なに否定した。そりゃそうだろう。たとえそれがヴァリエイブルでなく、ペイパスやアースガルズでもそうだっただろう。しかし、問題はそれから先だ。カーネルはその事象に酷くお怒りだそうだ。なんでも、『研究においては一番である自分たちに任せないのはおかしい』というとんでも理論を展開している。まったくもって、薬でもキメているんじゃないかと思うくらいだ」


 アーデルハイトはそう言って肩を竦め、鼻で笑った。

 そんなことはどうでもいいとでも言いたげな表情を浮かべていた。


「……そうして、どうするんだ? ヴァリエイブルはもうカーネルには協力しない。ということは、交渉は決裂。戦争をする……そこまではルミナスの電話でも聞いたとおりだ」

「そこまで聞いていたのなら、話は早い」


 アーデルハイトはそう言って、ポケットから何かを取り出す。それは情報の電子化が進んでいるこの世界では珍しく何かの用紙だった。

 その用紙は折り畳まれており、アーデルハイトは何も言わずそれを広げる。

 それは地図だった。それも機械都市カーネルの地域地図であった。


「……ただの地図じゃないか。これがどうかしたのか?」

「バカ、タカト。これがどういうことなのか理解していないのか」


 崇人の言葉にマーズが指摘する。


「どういうことだ?」


 崇人の言葉に答えたのはマーズではなく、アーデルハイトだった。


「これはただの地図じゃない。バツ印でマーキングされている場所があるだろう? そこは私たち……いや、正確にはヴァリエイブル軍の息がかかった場所だ。アジトと言ってもいいだろう」

「そのアジトに潜り込んで、勝機を狙うってわけか?」

「間違っているようで間違っていない。その返答はどうも中途半端だ」

「その言葉こそ、回りくどくて中途半端にしか見えないな」


 崇人の言葉は、アーデルハイトの心に深く突き刺さるものだったが、そんなことは崇人は考えてなどいない。強いて言うなら、あるべき指摘をしたまでである。


「アジトは凡てで八十八箇所存在する。その八十八箇所凡てにリリーファーの整備施設が敷設してあるし、ミーティングルームも常備。仮眠室もあればレストランも存在している」

「そんなものを作る暇があるなら、別のものを充実するとかすればいいんじゃないかな」

「ともかく!」


 アーデルハイトはひとつ咳払いをして話を続ける。


「これからアジトに向かい、体制を整えます。何があったかは、詳しくは聞いていないけれど、大体の様子で解るもの。……一先ずは、私が入って欠員を補います。それでいいね?」


 アーデルハイトの言葉にハリー騎士団の面々は頷くほかなかった。


「……あれ? 何をしているの?」


 そこに、不意に声が聞こえ、ハリー騎士団の面々は振り返る。

 そこに居たのはエスティだった。


「エスティ!」


 はじめに崇人が抱きつく。エスティは思わず顔を赤らめて、崇人の顔面に右ストレートを浴びせた。



 ◇◇◇



 八十八箇所あるアジトは、その地図を見なくては本当に行くことは出来ないのだろうか?

 答えはイエスだ。そんなものできるわけがない。もっとも、脳内に地図を凡て叩き込んでいるならば話は別だ。

 アーデルハイトが起動従士として、国の戦力として、雇われているには幾つかの理由がある。

 一つにはパイロット・オプションの適格者であること。これは重要であるし、起動従士になるのであれば譲れない。

 次に圧倒的な記憶力。それは彼女が持つ特異体質とも言えるし、彼女しか保持できない記憶力であるといえよう。

 なぜならば、今彼女は。

 カーネルにあるヴァリエイブル軍のアジト、八十八箇所の位置を凡て把握しているのだから。

 西カーネル地区にある小さな郵便局に崇人たちはやってきた。

 郵便局、とは言っているがもう既にその機能は停止していて、現在はただの廃墟となってしまっている。

 郵便局の扉を開けようとするも、棧が錆びてしまっていたらしくうまく開かない。崇人とヴィエンスが二人で押し合って漸く扉が開くぐらいには、そのドアは錆びついていたのだった。

 いったいどれくらいの時間、この郵便局(とは言っているが、ポストもなければそれっぽい特徴もないので、アーデルハイトから「ここは昔郵便局だったのよ」などと言われない限り解らない)は使われていなかったのだろうか。


「……にしても、よくこんな場所を使おうと思うな」

「こういう場所を使うからこそ、隠れ家として役立つんでしょ」


 崇人の言葉にマーズが答える。

 マーズはカウンターの後ろにあるソファに腰掛け、そして寝そべった。


「そんなところで寝たら風邪をひくぞ」

「寝るたって横たわっているだけなのだから、問題ない」


 そんな言い訳をするマーズにアーデルハイトは一瞥をくれて、小さく微笑む。そしてメンバーを見渡した。エスティが少しふくれっ面だったが、それ以外は皆健康そうな表情を浮かべている。


「まあ、そんなことは置いておきましょう。作戦を考える必要がありますから。……従来通り、私たちはどこへ向かうのか、タカト……いいや、騎士団長ならば知っているのでしょう?」


 その言葉を聞いて、崇人は首を振った。


「あら、ならば誰が……」

「私なら知っているぞ」


 対して、その疑問に答えたのはマーズだった。


「どうして、あなたが知っているのかしら?」

「あいつに知らせたくなかったからだ」

「今の彼は一般人ではない。ハリー騎士団の騎士団長サマよ?」

「それでも、だ。あいつはまだ一般人から殻を破ったヒヨっ子に過ぎないよ。そんなやつには荷が重すぎる」

「……ああ、その甘えでよくあなたは『女神』などと呼ばれるのだろうか。いや、もしかしたらその甘えで人々は救われるから女神などと呼ばれるのかしら?」

「……いいえ、違うわ」


 アーデルハイトの挑発には乗らず、ただマーズは自分のペースで語りだす。


「決して甘えなどと呼ばれるものではなく、どちらかといえば希望を伝えるもの。……いつ言うかというタイミングを決め兼ねていたのもあるけれど」

「やはり。甘いのよ、あなたは」

「……今はそんなことを話している場合じゃあないだろう?」


 アーデルハイトとマーズがあわや接触する――と思っていたその時、助け舟を出したのはヴィエンスだった。ヴィエンスは壁に寄りかかりながら、作戦会議に参加していた。


「そうね。確かに今はそんなくだらない議論をしている場合ではない」


 そう言ってマーズは立ち上がった。

 カウンターに置いてある、先程マーズが買っておいたコーヒー缶の蓋を開け、それを一気に飲み干した。

 それから、缶をカウンターに再び置いて、マーズはカウンターに寄りかかる。


「先ず、私たちの狙いは起動従士訓練学校だった。あそこは起動従士を育てている学校だ。当然リリーファーに載れる人間も多いだろう。そいつらを片っ端から殺す」


 それを聞き、崇人は思わず肩を震わせる。

 それを見て、マーズは小さくため息をついた。


「……だから言いたくなかったんだ。タカト、お前は優しすぎる。そんな性格は戦争ではやっていけない。だから、私は、なるべく作戦の情報を知らせたくなかった。どうにかしてタカトを蚊帳の外に追いやろうとした」

「マーズ、それも甘えよ。あなたは仕事についてはそんな優しい人間ではなかったはず。『女神』などと呼ばれるのはあなたが居た戦場は十中八九ヴァリエイブルが勝利しているから。畏怖する他国がつけたコードネームみたいなものだった」

「だけれど、それを知ったヴァリエイブルはそれを正式な名前に仕立て上げたのよ。おかげで、リリーファー『アレス』と私は揃って、戦場の女神等と揶揄されるようになった。その勢いは公式のファンクラブが、会員規模一万人を超えるまでにね」

「だけれど」


 ここでアーデルハイトは話を転換させる。


「今のあなたは少しおかしいわ。優しすぎる」

「戦争を知らない人間を邪険に扱うことの、何が甘えなのかしら?」


 アーデルハイトが今のマーズに深く切り込んで話をするには、幾つかの理由があった。

 一つとして、出来ることならチーム内での隠し事は避けておくたいということ。これは『チーム』で戦う上ではかなり重要となる案件だ。

 第二に、マーズが何らかの思いを隠しているのではないかということ。

 それは彼女の話している雰囲気からして、恐らくアーデルハイトの推論は正しいものであるだろう。


「あなたは何かを隠しているのではないかしら?」


 だから、アーデルハイトはそれを確信して話を続ける。

 マーズはその言葉を聞いて目を細める。


「……どういうこと?」

「だってあなたは何かを隠しているふうにしか見えないもの。結局、どうなの? あなたは何か隠していないの? 隠していないというのなら、このチームで協力するというのなら、あなたは凡てを曝け出して欲しいのだけれど」


 アーデルハイトとマーズは向かい合って、睨み合った。

 お互いがお互いを敵視している形となり、基地の中では緊張が走った。

 その緊張の糸を解したのは――。



 ――ぐう。



 誰かのお腹から鳴った、腹の音だった。


「……」


 一体誰からのものなのか、誰も探ろうなどとはしなかったが、直ぐにエスティが顔を赤らめているのが、アーデルハイトの目に映った。

 しかし、彼女はそれを追求しようなどとはしなかった。

 それを問い質そうなどとする必要もなかった。

 対してマーズは、その腹の音に感謝すらしていた。


「……ともかく、作戦の続きを話しましょう」


 マーズの言葉に、アーデルハイトは小さくため息を付きながら、頷く。


「一先ず、作戦の最初として、訓練学校へと向かい、そこにいる未来の起動従士たちの息の根を止める。その後、残った現行の起動従士の居る場所を突き止め、そのまま殺してしまうか、捕虜にする」

「そう簡単にうまくいくものかしら?」

「うまくいかせなくては行けない。そうでなくては、生きていけないよ」

「……ふうん」

「それに、カーネルはもうこんなことをしないように軍備を縮小、あわよくばゼロにしてしまいたいものね。そうでなくては、この世界の安寧があっという間に消し飛ぶこととなる。カーネルは世界のリリーファーのほとんどを製造している。それゆえ、世界の最先端技術が一同に集まっている。これがどういうことだか、言わずとも解るよね?」


 カーネルを倒すことは、どの国にとっても躍起になるべき事象だ。

 カーネルを統治すれば、最先端技術が丸々入ってくる。

 カーネル自体は自治権を持っているため、統治とはいえ貿易の優先を図るなどといった外部的支配に過ぎないのだが、それでも貿易が優先されるということは、リリーファー等最先端のものがいち早く手に入るということになる。

 これはほかの国と戦争していく上では重要となることだ。

 戦争は、どの国も知らない技術を使っていれば、それによって相手の隙を狙うことが可能となる。

 だから、どの国も躍起になってカーネルを手に入れようとしているのだ。

 今回の戦争でヴァリエイブルがカーネルを倒したとしても、それで戦争は終わったと言えない。それにより、漁夫の利を狙おうと企む他国が現れてもおかしくないからだ。


「……カーネルは結局今回の戦争の顛末をどうするつもりなのだろうね」


 アーデルハイトは小さく呟き、腰につけたポーチから小さいペットボトルを取り出す。

 ペットボトルの中に入っているのはどうやら緑茶のようだった。蓋を開け、一口飲んだ。


「それは解らないんだよ。現時点においても、カーネルが何をしたいのかが見えてこない。恐らくは世界から独立するのが目的なのではないかと思われているが、それとは違うようにも見える。……ならば、何だというのか? それは私の推測に過ぎないが……カーネルは『凡てを終わらせたい』と思っているんじゃないだろうか」

「凡てを終わらせる?」


 マーズの言葉が、アーデルハイトの考えていることの斜め上をいったからか、彼女は気持ちが抜けたような、そんな中途半端な声を上げた。


「……考えてもみれば解る話よ。カーネルは世界的に科学崇拝の場所よ。科学を知らない人間は虐げられるし、それだけで存在意義を失ってしまう場所。そんな彼らのプライドは恐ろしい程に高いでしょうね。プライドの高い彼らが他国に吸収され、顎で使われ、ただただ作っていくことが飽きてしまったのだと思う。そうして彼らは発起し、凡てを終わらせてしまおうとした。これはただの戦争なんかじゃあない。リリーファーとリリーファーがぶつかる、勝者によっては世界が大きく変わる戦争よ」

「世界が変わる……、それは文字通りの意味か?」


 崇人が訊ねると、マーズは小さく頷く。


「ええ、その通りよ」


 世界が大きく変わる。それは言葉通り、文字通りの意味だった。

 もし、カーネルがマーズの考えている通りの意味で戦争を起こしているのだとすれば。

 カーネルが勝てば、リリーファーによる絶対的な権力のもと、世界から離脱することすら考えられる。

 ともなれば、リリーファーや、それ以外の科学技術は大きく衰退する。リリーファーはこの二百年という時間で恐ろしい程の機体が現れ、カーネルが新機体を発表する毎に世界の期待も大きく膨らんでいった。

 世界の期待を大きく背負う機体は、それに見合う価値を産み出し、世界へと羽ばたいていく。それは開発者からすればどのような気持ちだったのだろうか? 自分の発明が、世界を破壊し、混沌の根源となっているのを見て、どう思っていたのだろうか?

 その気持ちは――誰にも解らない。

 しかし、いい気持ちではないはずだ。

 だとすれば、どのような行動をとるか――それは直ぐに理解できる。


「……だったら、どうする?」


 崇人は、マーズとアーデルハイトに告げる。

 マーズは少なくとも今、自分を庇っている。自分は無力な存在だ――崇人はそう考えていた。

 しかし、崇人は男だ。

 そして、前の世界では企業戦士として日夜戦ってきていた。

 そして、この世界に来て、『自分の世界とは違うから』とあまり戦いたいとは思わなかった。

 だが。

 それがどうしたというのか。

 リリーファーによる戦闘と戦争。

 間に合わない納期とデスマーチ。

 似て非なる二つは、どれも似たようなものではないか。

 彼は考える。ここで、どの結論を導くのがベターなのか。

 そして、崇人は。

 ひとつの結論を導いた。


「……教えてくれ、マーズ」


 それは、マーズにとって、出来ることならその選択をして欲しくなかった結論。

 しかし、現時点においては最善の選択でもあった。


「その、もともと伝えられていた作戦というのを」


 彼の目はまっすぐ、マーズの目を見ていた。

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