失態の魔術師

作者 野村 勇輔

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★★★ Excellent!!!

主人公は魔術師である。そう、半端ない魔力を持つ魔術師である。

 彼は征服民族ノクサス人の貴族の父と被征服民族トルケ人の母との間に生まれた“忌み子”であった。彼を愛した母親は差別の中で命を落とし、父も愛する妻を失い失意のうちに亡くなった。
 最後まで彼を守った母、暴行の末に命を奪われた母、目撃した怒りからか魔法爆発で大勢の命を奪った主人公、その事件は彼の心に影を落としていた。

 彼は、生来の性格のせいか、不幸な生い立ちに関わらず、魔術探求以外の欲がない。そばで面倒を見てくれている幼馴染の気持ちにも自分の気持ちにも気がつかないほどに。

 その彼を、逃れるべくもない陰謀が絡め取っていく。
これは、彼が、彼を保護すると同時に隔離していた檻から解き放たれるまでの物語である。


 確かな文章力に裏打ちされた、正統的魔術ファンタジーである。読みやすく安心して読み進めることができる。よく考えられた世界観がストーリーに厚みをもたせ次へ次へと読み進めてしまう。憎めない主人公、いじらしいヒロイン、派手さはないものの裏の理屈に裏打ちされた魔法の記述も楽しめる。

「失態の魔術師」はこの第2部で終わり、第3部からはタイトルが変わると予告されている。逃亡中とはいえ檻から解放された主人公たちと弟子を加えた3人の活躍が楽しみである。