第233話 開通
「そ、ソピア様? 今の光の柱は一体……」
「ああ、あれね、先代の神様のジャンヌが、異世界で拾った神格の欠片を飛ばしてくるのよ。ほんと迷惑。」
『!--ちょっと! 聞き捨てならないわね! これでもあなたの為を思って……--!』
『!--あー、はいはい、有難うございます!便利に使わせてもらってます!--!』
確かに、色んな分野の知識は便利だけどさ、時と場合を考えて欲しい訳よ。
もうね、ジニーヤにマジックライトを出して貰わなくても、私自体が電球みたいに光っちゃってるのが、自分でも分かるもん。夜、トイレに行くのに便利だから良いけどさ。
それは今はどうでもいいや。
この遺跡に溜まった土砂をどうにかしないとだよね。
私は、遺跡の内部を探る様に、意識を集中してみた。
「あれっ? わかる……」
「何が?」
「遺跡の内部が、立体的に映像として見えるの。」
今の追加により、通常のレーダーがフェーズドアレイレーダーに進化しました(笑
カッコ笑いじゃねーよ!
なんなん? 私、どんどん人間離れして行くんですけど!?
そのうち、イージスシステムも装備されるのか? データリンクもって、ああ、データリンクは既にされてるのか……
なんかもう、諦めの境地ですよ。
「中の方まで土砂が詰まっているから、どうしようかな……、土砂を掻き出して、この遺跡を修復して使うよりも、ここは諦めて新たに掘った方が良いんじゃないかと思うんだけど、どう思う?」
「遺跡は、文化遺産的価値も有りますから、出来るなら修復して後世に残したいと思っています。」
「うーん、確かにそうかー。」
そうなんだよね、遺跡は出来るだけ残しておきたい。
歴史的遺物として、ハードだけを保存する物として扱うんじゃなくて、実際に使える歴史的建造物として、ハード、ソフト両方が備わって居てこそ、文化財的価値が増すのだ。
ビオスの人は、文化というものを良く理解していると見える。
そうと方針が決まれば、土砂を取り除いて、遺跡を補修しなければならない。
私は、空間を人差し指で突き、空間壁に波紋を起こすと、ピンクの扉を出現させた。
『!--子猫ちゃんも、僕と同じ位に扱いがスムーズに成った様だね~。--!』
よし!フィンフォルムに並んだぞ!
「遺跡内部の土砂を空き地へ移動。」
遺跡横の広場に、ちょっとした小山が出来た。
川が氾濫した時に流れてくる、肥沃な土壌だ。農業に利用出来るぞ。
「おお、これは良い。この地に果樹園でも作りましょうか。」
「いいね! ダルキリアにも輸出してよ。南国の果物大好き!」
和気藹々。
後は、遺跡の破損部分を補修して、中を綺麗に掃除しないとね。
「構造材は、大丈夫なんだろうか、人が通っている時に落盤なんてしたら危ないからね。アーリャ、
「えっ?」
「え?」
なんか、キョトンとしている。
建物の基礎とかに入っている、
「こうして、石の内部に超音波を通して、変な反射が無いか調べるんだよ。」
私は、入り口の石柱に頬を当てて、内部に超音波を通してみた。
ああ、自然にやっちゃったけど、習わなくても出来るように成ってるぞ。こりゃ便利。
「あ、有るな……、アーリャ、やってみて。」
「あ、ああ、
アーリャも私の真似をしてやってみたところ、確かに内部におかしな反射をする部分が有るのが感じ取れた様だった。
他の賢者様達も、順番に真似をしてみて、感覚を掴もうとしている。
私は、石柱の裏側へ回ってみて、縦にヒビ割れが入っているのを見つけた。
「ほらね、ここの所、ヒビがあるでしょう? 放置していると、雨水なんかが入り込んで、冬場に凍って、ヒビを更に広げて行くの。今はまだ大丈夫な大きさかも知れないけれど、ヒビが広がったら、ある時いきなり崩れ落ちるよ。だから、見つけ次第補修しなければならない。」
「どうやって補修すればいいの?」
そうだなー……、こっちの世界には、コーキング剤みたいな物は無いだろうし……
そうだ、ユーシュコルパスが洞窟を修理したときみたいに溶かしてくっつけるか。岩の溶接初挑戦だ。
私は、岩のヒビに意識を集中して、溶かしてくっつけるイメージをして見た。
石柱のヒビの部分は、白く輝いたかと思うと、溶けて完全にくっ付いてしまった。
「これで良し、っと。」
皆が目を丸くして見ている。
「こんな調子でやってみて。」
「ちょ、ちょっと、ソピア? こんな芸当、あなたしか出来ないわ。岩を溶かす程の熱量を発生させるなんて、私達の魔力では不可能です。」
「えっ、そうなの? うーん……、じゃあ、全員でヒビの位置を調べてくれるかな? くっ付けるのは私がやるよ。」
ビオス組は、全員で
私は、ヒビとか破損が見つかったら教えて貰って、そこへ行って溶接作業をする。
そんな作業をしながら、地下の大空洞までやって来た。すると、奥側から人が出て来るのが見えた。お師匠達と魔族達の合同調査チームの面々だった。
「人の話し声が聞こえる通路が在ると報告があったので来てみたのじゃが、やはりお前達じゃったか。」
「という事は、これで魔族の国とダルキリアとビオスは繋がった訳ね。」
「この広い空間は、一体何なのでしょう?」
恐らくだけど、空港のロビーみたいな感じの所だったんじゃないのかな。
そして、シャトルバスなんかがここから発着していたのかも。当時はここが地上に在ったのだと思う。
だから、ここを利用しようとするなら、奥の通路への手前に、入国を管理する関所を設けたら良いんじゃないかな。
「これで、アーリャ達も何時でも国に帰れるようになったね。」
私は、広い空間と通路を照らすためのマジックライトを設置し、ビオス側の調査隊にお別れを告げて、アーリャと共にダルキリアへ帰った。
「ところで、ソピア、その身体が光っているのって、抑えられないの? そのままじゃ、学院に通い難いんじゃない?」
「そーなんだよねー、どうすれば良いのか……」
『!--あ~ら、そんなの、んっ! っと身体に力を入れて我慢すれば漏れないわよ~。私達ぃ~、誰も光って無いでしょう?--!』
『!--そうそう! トイレ我慢するみたいな感じだよー。--!』
マナ漏れを防ぐ方法は、まさかのおしっこを我慢するみたいな感じだったー! マナちょっぴりもれたろうか!
でも、神竜達がそういうのなら、そうなんだろう。試しにやってみる。
「あ、光が止まったわ。」
本当だった。ヤバイな。
でも、我慢しきれなくなったらどうすれば良いのかな?
『!--そんなの~、トイレで出しちゃえばいいじゃな~い。--!』
『!--排泄物っぽく言うの、やめーい!--!』
『!--冗談はさておき、マナ水を大量に作って、皆にどんどん配布してやれば良いと思うぞ。--!』
『!--成る程!--!』
私は、アーリャにちょっと行って来ると告げ、何処へという質問に答える間も惜しむ様に空間扉を開き、その中へ入った。
出口はもちろん、聖地の泉の真上だ。
扉から出るやいなや、泉に飛び込み、フンっと水にマナを込めると、泉の水は、黄金色にまばゆく輝き始めた。
よしっ、我慢出来なく成ったら、今度からここへマナを捨てに来よう。
誰にも見られてないよな……、と周囲を見回してみたら、大勢の村人達と目が合ってしまった。ヴェラヴェラも居る。何で居るの?
「何でって、ビール工場が完成したから、新鮮な水を汲みに来ただよー。」
なんてタイミングの悪さ。まさかこんなに大勢に見られてしまうなんて、もうお嫁に行けない。
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