第197話 アカシックレコード13連発
ユーシュコルパスの棲み処へ向かう途中、大きく抉られたテーブルマウンテンが目に入った。
「あらまあ、凄いわね。あれがソピアちゃんのやっちゃった所なのね?」
ヴィヴィさんが下を指差した。
うーん、改めて見ると、結構傷跡大きいかなー……
近くに降りて、良く見てみると、テーブルマウンテンの3Dオブジェクトに球体をブーリアン減算したみたいに、すっぱりと球形に岩が無くなっている。
「うーむ、改めて見ても、凄まじいものだな。」
「これは、神様がやっちまったのかいー? おっちょこちょいなんてレベルじゃ無いだよー。」
体積にしたら、星の0.0000000005%程度の事なんだろうけど、この質量変化で星の公転軌道が変わっちゃったりとかあるのかな?
いや、それ以前に超重力発生させて、自転運動に影響与えたりなんて……してるんじゃないのかな? 見た感じ、特に何かがおかしくなったみたいな事は無いみたいだけど、ピラミッド云々どころじゃない事やらかしちゃってる気がしなくもないんだけど……
「ああ、そういうのは大丈夫だぞ。我ら四神で、上手い具合に調整してるからな。」
「えっ、そうだったの? じゃあ、ピラミッドの件も、なんとか上手い具合にー……」
「それがね~ぇ、星の運動に関する物理的な事は調整出来ても、星の寿命に関わる事は、私達では何とも出来ないのよ~。」
「そっかー……」
「心配なら、この穴を埋めておくか?」
「えっ? でも、他から岩を持ってきても、失った質量は戻らないでしょう?」
「他の宇宙から持って来れば良いではないか?」
「他の宇宙?」
「お前の所有している宇宙があるだろう。」
「あっ!」
私は、謎空間を開いて、宇宙の中で、生物の住んでいない、丁度良い大きさの岩石質の小天体を探した。
「あった!」
テーブルマウンテンの上に謎空間の出口が開き、そこから穴と同じ大きさの準惑星が落下し、轟音と共に穴にすっぽりと収まった。うーん、ジャストサイズ。
「多分、星は、この程度の質量の増減は、気にしていないと思うけどね~。」
うん、ブランガスの言う通り、星の生まれた時代から隕石とかずっと落ち続けているのだから、星の質量は増え続けているのだろうけどね。まあ、気休めです。
だけど、後世の人がこの地形を見たら、頭捻っちゃうかもしれない。私、余計な事しちゃったかな。
「お前という奴は、今では何でもありじゃな。」
お師匠が呆れている。
自分でもそう思うよ、ホント。
ユーシュコルパスの棲み処の洞窟に到着。
「お邪魔しま~す。ユーちゃん、結構良い所に棲んでいるじゃなぁ~い。」
そう、ここは、外の氷の世界とは違って、清流が流れ、木々が枝葉を茂らせ、草花が芽吹き、動物が走り回る、緑の楽園なのだ。
この中の生物達は、この中だけで食物連鎖のサイクルを完結させた、完全なるビオトープになっている。
「沸騰した硫酸と硫化水素の地獄に棲んでいるブランガスに比べたら、何処でも天国だけどね。」
「ソピアちゃん! 言ったなぁ~、こうだ!」
「アヒャヒャヒャヒャ!」
抱き着いてくすぐって来るよー、助けてユーシュコルパス!
「ちぇ~、ユーちゃんだけソピアちゃんに頼られちゃって、ず~る~い~!」
「お前がそういう事ばかりするからだろう。」
「スキンシップなんですよ~! 愛情表現!」
洞窟内を見学しながら、のんびりしていたら、例のやつが急に来た。
ドドドドドドドドドドドドドーーン……
うはー、想像していた通り、13発来たー。フィボナッチ数列で確定じゃん。何の意味があるのか知らないけど。
もうね、すっかり慣れっこで、今では頭皮マッサージでもされている程度のもんですよ。
『!--減った分を補充しておきましたー。--!』
「ジャンヌかよ! コンビニ店員かよ! TPOを考えてよ!」
『!--もう慣れたもんでしょう。じゃあ、あとよろ!--!』
うわあ、ジャンヌの対応が雑だよー。
神竜達は、昔、ジャンヌの対応に不満は無かったの?
「ジャンヌ? 誰だっけ?」
「あ~、あれよ、ソピアちゃんの先代よ!」
「ああ、あの、ハーフエルフの!」
「ええっ!? ジャンヌって、ハーフエルフだったの? 今初めて聞いたんだけど。」
『!--あれれっ? 言ってなかったかしら? そうなのよ。--!』
「えっ? 何それ、初耳ですよ?」
「わしもじゃ。まさかの建国の祖が、ハーフエルフだったとはな。じゃが、そう言われると納得の部分もある。初代から数代の寿命が200歳とか300歳とか、不自然な部分があったのじゃ。」
あー、それ、日本もそうだよねー。日本人もエルフの子孫だったりするのか?
普通は、歴史書の記述が創作されてるとか、架空の人物が入っているのだろうとか考えるのが普通だけど、んー、まさかのエルフの血が入っていたとはね。
「神竜達は、ジャンヌの事、どう思ってたの?」
「どうって言われてもなぁ……普通だぞ。」
「そうねぇ~、のほほんとした子だったけど、仕事はきっちりこなす子だったわよね~。」
「神格は、我々より下だったよな。」
「私達の眷属だったしね~。」
マジかよ、まさかの初代女王が神竜達のパシリだったとは! この衝撃の事実は皆に言えねー!
『!--パシリちゃうわ! ぶっとばす!--!』
「ぎゃはは! ジャンヌにぶっとばされる!」
「神様ー、何か楽しそうだなー。」
「傍から見てると、結構危ないやつよ?」
やべえ、一人で怒ったり泣いたり笑ったり、確かに危ないやつだ。自重。
その後、ユーシュコルパスのコレクションを見たブランガスが、プロークに掴みかかったり、私に泣き付いたり、一悶着在ったけど楽しく過ごして、御暇する事になった。
ユーシュコルパスにサヨナラをして、空間に掌底で扉を開き、我が家へ全員帰還。
扉から出ると、そこは何時もの食堂で、王様とエバちゃまも来ていて、王宮の料理人達やクーマイルマと一緒に食事をしていた。
「おう、エイダムとエバも来ておったのか。」
「ああ、ロルフ、お前の報告を待ち侘びておってな。」
「本当は、王宮の料理人に、アイスクリームのレシピを覚えさせようと思ったのよねー。」
「これっ! ばらすでない!」
「そんな事だろうと思ったわい。」
「わははは、良いではないか、良いではないか。」
私達も席に着くと、さっと、料理が運ばれて来る。
もう、おなかぺこぺこだよ。今日は色んな事がてんこ盛りだったなー。
王様達と、楽しくおしゃべりしながら食事をしていると、隣で誰かがガツガツと豪快に食べている。
「へ~、これがアイスクリームという物なのね~。びっくりの美味しさだわ~。」
ふと横を見ると、ブランガスが居た。
「ぎゃー!! 何で居るのー!!?」
「失礼ね~! さっきからずっと居るじゃない~!」
てっきりもう自分の棲み処に帰ったものと思ってたよ!
何で家まで付いて来ちゃってるんだよ!
「あら、ソピアちゃん、そちらの人竜の方をご紹介して頂けないかしら?」
「えっ、あ、うん、あの、ごにょごにょ……」
「ん? なあに?」
「私ぃ~は、火竜ブランガスよぉ~! 小さき者の王と王妃よ、覚えて置きなさ~い!」
ドドーーーーン!!!
神格のエネルギーに威圧を載せて放射しやがった、こいつ。
屋敷の外の通りや公園でも、謎の失神事件が発生。
ほら! 給仕のメイドさん達や料理人が気絶しちゃったぞ、どうするんだよこれ! ヤバイからヤメロ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます