第129話 皆で飛行術その2
クーマイルマは今は勉強に集中したいそうなので、それ意外の人達は、今日はすることも特に無いし、飛行術の特訓にでも行こうかな?
「それは良う御座いますね。では、私は今日は王宮でのお仕事にお休みを頂きとうございます。」
「分かったわ。頑張って来て頂戴。場所は何時もの草原なのね?」
「うん、そのつもり。竜達にも覚えてもらわないと。ね。」
「はいっ! 頑張ります!」
「う、うむ……」
「「「わーい、わーい!」」」
ピクニックセットを倉庫へ入れて、9人で何時もの草原へ。
草がふかふかだから、間違って落ちても怪我し難いから、飛行術の練習には何時もここを使ってる。
「えーと、まずこの中で浮上術を使えていないのは、プロークと親飛竜のフリーダの二人だけね。」
「あらまあ、子飛竜達は、飛べる様に成りましたのですか。それはすごい。」
そう言えば、ウルスラさんは子飛竜達が飛べる様になったのを見ていないんだっけ。
「そうなんだよね。見ただけで覚えちゃったみたいなの。」
「それは凄い。流石に人より知能が高いと言われているだけは御座いますね。」
「ちょっと子飛竜達、私達はピクニックの準備してるから、あなた達のお母ちゃんとプローク姉さんに飛び方教えててくれる?」
「「「はーい! わかりましたー!」」」
同じ竜同士なら、覚えやすいだろうと、二人を子供達に任せ、私達はピクニックセットを広げる準備をした。
平らな場所を探して、分厚いフェルトの絨毯を敷き、お茶とジュースの瓶に、サンドイッチのバスケットを出す。
絨毯の上に寝転んで、空を見ると、雲一つ無い快晴で、逆に空の彼方へ落ちて行きそうな錯覚がする。
日差しが気持ちいいな。
「ソピアせんせー。お母ちゃんは飛べる様になりました。だけど……」
うーん、やっぱりプロークは無理だったか?
「じゃあ、先生交代。今度はヴェラヴェラが教えてあげて。」
「あたいがかー? いいよー。」
「うん、変身術教えたのもヴェラヴェラだしね。きっと上手くいくと思うんだ。」
「了解だよー。」
あの二人、何故か気が合うんだよね。
私達は、飛竜親子と一緒にジュースを飲みながら、二人の様子を見ていたら。なんか、
「うーん、天使の翼じゃないのが残念。」
確かに。竜の翼の付いた人間って、何か悪魔みたいだよね。
飛べるならあれはあれで良いのか? いやいや、あの形態で飛ぶのだと、音速出せないだろう。
「うーん、
だろうね。だって、同じ飛ぶと言ったって、飛行原理が全然違うんだもん。
「ふん! 竜族は翼で飛ぶのが矜持なのだ!」
うーん、プロークはこのままでも良いのかな。
本人が飛びたいと思っていないのに無理に教えるのは良くないよね。無理強いは良くない。うん。
「では、プロークは翼で飛ぶという事で、他の皆は次の段階に進みましょう。プロークは見学しててね。」
「えっ!? ちょっと……」
「えっ?」
「えっ?」
「……」
『!--(プローク? 本当は皆と一緒に飛びたい?)--!』
『--(う、うむ、でも上手くいかないのだ。)--』
『!--(わかった。後で一緒に練習しよう。ジェット推進の理論を先にやっちゃうから、今はちょっと休んでて。)--!』
『--(うむ、済まない……)--』
私は、伊達メガネと黒板と指し棒で、理論を解説。
「……で、渦巻き状に前方から空気を吸い込んで圧縮……熱膨張が……後方に吹き出すジェット推進となります。」
黒板に図を描いて説明した。
その上には、『目指せ! 毎刻500リグル!(毎時400キロ)』の文字。
指し棒でその文字をパンパンと叩いて見せる。
「目標は、最低でも毎刻500リグルの速度です。私は、この魔導ジェットエンジンを2つ装備して音の速さを超える事が出来ました。今日はここまでの習得を目指します。更に、音速の2倍の速度を出す方法は、また次回に。」
私は、伊達眼鏡と指し棒と黒板を倉庫へ仕舞い、実践してみせる事にした。
「まずは、毎刻500リグルの速度から。」
ケイティーに飛行椅子で全速力で飛んでもらう。
サントラム学園の校章がでっかく下に表示されている。うーん……
周囲を旋回してもらってから、向こう側の山肌近く迄行って貰い、そこから全速力で私達の居る草原の上を通過してもらう。
フィイイイイイイイーーーーーーーーーン
「キャアアアアアアアァァァァァァァァ……!!」
うーん、ドップラー効果で悲鳴を残してかっ飛んで行った。
相変わらず、最高速度の時は、嬉しそうに悲鳴を上げているのね。
頭上を通過する時に、その速さを体感出来る。自分が飛ぶよりも、外から見る方がスピードの具体的な実感を掴みやすい。時速400キロは凄く早い。だって、F1カーよりも100キロ以上早いんだもんね。
「ふう、楽しかった。」
「ケイティー、ありがと。今度は私が飛ぶね。」
ケイティーが戻ってきたので、選手交代。
今度は私がその倍の速度、毎刻1000リグル(時速800キロ)で飛行し、皆の頭上を飛んで見せる。
「「「「「「「おーーーーー……」」」」」」」
次は、エンジンを双発にして、音速を突破する。
私の前方に、
遅れて衝撃音が響き渡る。
「はい、今のが音の速さを越えた速度です。最終的には皆にそこを目指してもらいます。」
「「「「「「「おおぉぉ。」」」」」」」
皆、目がキラッキラしているね。特に子飛竜達の興奮が凄い。自分もあの速度で飛べるのかというワクワク感? いいね。
「はい、では各自、自主練。分からない所が有ったら、聞きに来て。」
私は、フェルトの絨毯の上に仰向けになり、一息ついた。
「あー、のんびりするー。遊びながら訓練サイコー!」
上からケイティーが覗き込んで来て、ジュースをくれた。
「ありがとう。」
「うふふ、お疲れ様。」
二人で座って、皆が飛ぶ姿を眺めていたら、背後からドーーーーン!! という爆音が響いた。
「音速越えたね。はっや。」
音速を越えたのは、案の定子飛竜の3人だった。早いわ!
見ただけで覚えてしまうなんて、その才能怖いわ!
「ソピア先生ー、見てくれたー?」
「「見てくれたー?」」
瞬間は見てなかったけど、誰かは直ぐ分かったよ。
「うん、君達はもう免許皆伝。こっち来て一緒にサンドイッチ食べよう。」
「「「わーい!」」」
ヴェラヴェラもウルスラさんも500リグルは達成しているかな。ヴェラヴェラって、意外と何でも卒無くこなすよね。
ふと横を見ると、プロークが一人でピョンピョンやって、皆を羨ましそうに見ている。
『!--プローク、手伝うよ。--!』
『--すまぬ……--』
私はプロークの体を魔力で持ち上げてやり、自分の魔力で地面を押して、逆立ちをする感じだと伝えてみた。
プロークは、最初地面を凹ますだけだったのだが、段々とその反動を体で受ける感覚が分かってきたみたいだ。
プロークは、割と感性が私と近いみたい。私の例え話の方がすんなりと入るみたいだった。
お昼ご飯を食べる時間になる頃には、何とか体を浮かせる事が出来る様になった。
皆で輪っかに成って座って、持って来たサンドイッチを食べた。竜達が凄く食べるので、大量に持って来たから、幾ら食べても大丈夫だよ。飲み物も沢山あるし、私の倉庫には綺麗な聖地の泉の水も大量に入っているんだよね。
「午後は、みんなで独自に工夫してやってみて。十人十色のやり方があっても構わないです。それを皆でシェアして、最も効率の良さそうな方法を採用して教え合って行きましょう。」
「「「「「「「はーい!」」」」」」」
「ケイティーは、私と剣術の稽古でもする?」
「そうしよう、そうしよう!」
私は木刀、ケイティーは真剣。
うーん、ケイティーっちの動きが人間じゃない。
あっという間に私の木刀がへし折れた。
「ごめんね、既にケイティーとは木刀では相手に成らない。剣を使わせてもらう。」
「いいよー。」
剣で打ち合う。打ち合う、打ち合う。
ちょっと待て、何かが可笑しい。私の剣、ボロボロに成ってるんだけど。刃こぼれしてるんですけど。
何そっちの剣の切れ味、何?
本当に真剣? 神剣なんじゃないの?
ケイティーソード、
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