1-67 圭人

 圭人は渡利のクラウンアイの中を泳いでいた。

 そこにはひどく抽象的な映像が流れていた。

 子供達に囲まれて暖かい笑顔を浮かべる若い渡利。

 そんな写真が何枚かあった。

 その一枚を見て、圭人ははっとした。

 日本からの技術で作ったりんごが豊作となっている。

 村人達は喜び、子供は美味しそうにかじっていた。

 圭人はその写真をゆったりと、心をぽかぽかさせながら、浮いて眺めた。

 君になら分かるだろう。

 そう言った渡利が言った意味が少し分かった気がした。

 圭人が感じた感情は決して0と1で構成された無味無臭のものではなく、曖昧で抽象的で捉え所のない何かだった。

 それを感じながら、圭人は幸せそうに呟いた。

「僕は・・・・・・僕だ・・・・・・・・・」

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