図書館司書の猫夢日記



 ――非常に、心地が良い。


(……気持ちいい……)


 とても安らかな気分だ。


(……清々しい……)


 そんな中、ふみ、と、顔辺りに体重。


「……ん……」

「ソフィア、起きにゃさい!」


 変な声が聞こえる。ソフィアの眉間に皺が寄った。


「……んー……」

「ソフィアってば! こら!」


 ぺしりと頬を叩かれる。


(痛くないけど……なんか煩わしい……)


「ソフィア!」

「誰……? 私はとても気持ちよく眠って……」


 ソフィアがようやく目を開ける。目を開けて、視界に映ったものを見て、きょとんと瞬きをした。


「えっ」

「やっと起きたにゃ!」


 自分を睨むテリーがいる。猫耳と、尻尾の生えたテリーがちょこんとその場にいた。


(!!!!?)


 ソフィアが一瞬で目を覚ます。目を見開く。慌てて起き上がる。


「え!? え!? テリー!? え!?」

「いつまで寝てるにゃ! いい加減にしにゃさいよ!」

「寝てるにゃ!? しにゃさいよ!?」

「うん? にゃに?」


 こてんと、猫テリーが首を傾げる。ソフィアの体が震えだす。


(な、……なんて可愛いんだ……!)


 涎を垂らし、ぶるぶると震え、手をわなわな震わせ、ごちゃごちゃの頭を整理しようと深呼吸をする。


(えーと、えーと……。……一体何が……。……えーっと……)


「……ソフィア、頭でも打った?」


(え?)


 猫テリーがよちよちと近づく。ソフィアの上に乗っかる。


(え!?)


 ソフィアの目が見開かれる。猫テリーは構うことなく、ソフィアの頭を撫でだす。


「痛いの痛いの」


 猫テリーが手を上げた。


「飛んでけー!」

「ひゃあああああああ!!」


 猫テリーがソフィアの理性をばこんどごんと破壊していく。ソフィアが悲鳴を上げ、猫テリーを抱きしめた。


「にゃっ!」

「もうどうでもいいいいいいいいいいいいい!!」


 ぎゅうううううううううううう!


「テェェエエエエエリィィィイイイイイ!」

「にゃーーーーーーー!!!」


 ぱーーーーん!!


 猫パンチの痕がソフィアの頬につく。猫テリーがぷんぷんと怒り出した。


「全く! にゃによ! いきにゃり! はしたにゃい! 下品だにゃ!」

「……一体、何が起きているんだろう……」


 ソフィアが頬をさすりながら考える。


(えーっと……。……改めて整理し直そう……。この子はテリー。私はソフィア。……テリーは……)


 ……。


「はっ! そうか! テリーは私の猫だった!」


 捨てられて虐められてるところを、私が助けて、大切に大事に愛でて育てているのだった。テリーを拾ったのを機に、泥棒業もやめて誠実に図書館で働いているんだった。そうだそうだ。


(私としたことが……頭がごちゃごちゃしてた……。疲れてるのかな……)


「ソフィア? だ、大丈夫にゃ……?」


 顔を覗き込んでくる猫テリーの頭を、ソフィアがそっと撫でた。そして、でれんと頬を緩ませる。


「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。今日も恋しいよ。私の子猫ちゃん」

「にゃっ……!? も、もう……何言ってるにゃ……! ……ソフィアの……ばか……」


(え、何これ普通に可愛い)


 顔を赤らめてもじもじさせてたまにチラッと自分を見てくる猫テリー。


(可愛い)


 どこから見ても、可愛い。


(……くすす)


 ソフィアの鼻の下が伸びていく。


「テリー、寝ててごめんね。これから私と一緒に遊ぼうよ」

「遊ぶにゃ?」


 テリーの鋭い目が輝きだす。


「べ、別に、遊びたいわけじゃにゃいけど、暇だから相手してあげるにゃ。何して遊ぶにゃ?」

「ああ、堪らないよ。君のそういう素直じゃないところも恋しい。くすす」


 頭を撫でていた手をずらし、猫耳の裏部分を撫でると、猫テリーの肩が上がった。


「にゃっ!」

「え?」


 ぽかんとするソフィアに、猫テリーがぎろりと睨み、爪を立てる。


「どこ触ってるにゃ! えっち!!」

「ひゃっ!」


 猫テリーが引っ掻いた直後、ソフィアの腕に目立つひっかき傷が出来た。


「にゃっ」


 猫テリーがぎょっと目を見開き、すぐに手を引っ込め、ソフィアの腕の傷をじっと見た。


「にゃ……。……傷……」

「大丈夫だよ。テリー。こんなのかすり傷だから」

「うにゃー……」


 猫テリーがソフィアの腕をそっと掴んだ。


(え?)


 ソフィアがその光景をじっと見る。


(え?)


 猫テリーの口が開いた。


(え?)


 猫テリーの口から舌が出てきて、自分が引っ掻いた傷を、ぺろりと舐め出した。


(っっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!?)


 ソフィアの顔は真っ赤に燃え上がる。


(テリーがぺろぺろしてる!! わ、わわわ、私の腕うぉ! ぺろぺろしてる!!)


 いや、猫だから当たり前なんだろうけど!!


 ぺろぺろ。ぺろぺろ。


(か、可愛い!! 可愛い!!! かわいいい! かわEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!! 何これ何これ何これ!!)


 ぺろぺろ。ぺろぺろ。


「テリー! テリー!! 私のテリー!! 可愛い! 遊ぼう! ねえ! 早く遊ぼうよ!!」

「にゃっ……」


 ソフィアに抱きしめられ、猫テリーがびくりと体を揺らす。猫耳をへこませ、上目でソフィアを見上げた。


「い、痛くにゃい……?」

「痛くないよ!! 何も痛くないよ!! とっても気持ちいいよ!!」

「……変態だにゃ……」


 呆れた目で見られても、ソフィアは平気のようだ。テリーが可愛いからいいようだ。もう何もかも全部どうでもいいようだ。


「さあ、テリー……」


 ソフィアがにっこりと微笑み、どこからか素敵なカメラを取り出し、構えた。


「……綺麗なお姉さんと、写真撮影ごっこして遊ぼうよ……」


 黄金の瞳が、猫テリーを強く見つめる。


「いい写真が撮れるよ……? テリーならすごく可愛い写真が撮れるよ……? ほら、ポーズして……。ピースサインして……? ほら、テリー……」

「に……、……にゃっ……」

「ほら……、笑顔でポーズ……。くすすっ……。……テリー……、ポーズして……? ……ほら、……わん、つーの後は……?」

「す、すりぃ……」


 いの口になった瞬間、ソフィアによってシャッターが切られる。


「そうそうそうそう! その恥ずかしげな顔がいいいいいいいい! テリーいいいいいよおおおおおおおお!!」


 ぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃ!


「にゃーーーー! ライトいやーーーーーー!!」

「テリー!! 私の可愛いテリー!! もっとこっち見て! もっと! もっと!!」

「にゃーーー! 触るにゃーーーー!」


 ばりっ!


「ひゃっ!」


 ソフィアが悲鳴を上げて、腕を押さえた。


「……あっ……」


 テリーが声をあげる。ソフィアの腕から血が垂れた。


「にゃっ……」

「あれ? 切れちゃった」


 ソフィアがごしごしと指で擦れば、血は止まる。


「大丈夫だよ。ほら、止まった」

「で、でも……、……血が出たにゃ……」

「大丈夫。ほら、ね? 大丈夫だよ」


 ソフィアが微笑むと、猫テリーの耳がまたへこんだ。


「……で、でも、……痛かった?」

「大丈夫だよ」

「ほ、本当のこと言って!」

「本当に痛くなかったよ」

「血が出たのに!」


 猫テリーが不安げな目でソフィアの腕を再び握る。


(テリーは心配性なんだから)


 ソフィアが猫テリーに微笑み、頭を撫でる。


「大丈夫だよ。ほら、もう血は止まってるでしょう?」

「……にゃ……」


 テリーの口から、また舌が出てくる。


(あ)


 ソフィアが目を見開く。凝視する。強く見つめる。絶対に瞬きをせず、じっと見つめる。猫テリーの舌がソフィアについた傷に、触れた。


 ぺろり。


 ――っっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!


 ソフィアの頭の中で、山が噴火した。


(ああ、そんなことされたら……!!)


 ソフィアの理性が、とうとうプツンと切れた。


「テリー」


 ソフィアの手が猫テリーの顎を掴む。猫テリーが強制的にソフィアを見上げる形になる。


「にゃ……」

「二回も傷つけられて、私、とてもショックだったなあ……?」

「うにゃ……」

「テリー?」


 ソフィアの黄金の目が光る。


「前に教えたでしょう? ほら。……ごめんなさいをする時は、どうするんだっけ?」

「うっ……。……にゃ……」


 猫テリーが目を潤ませた。泣きそうだ。それでもソフィアは猫テリーを鋭く睨む。猫テリーが体を震わせ、ソフィアの痛い視線を浴びたまま、ソフィアの前にごろんと転がる。仰向けで倒れ、ソフィアを見上げる。頬を赤らめ、目を潤ませ、柔らかそうな唇が動いた。


「ソフィア……、……ごめんにゃさい……」

「そうだよ……! テリー! そうやって謝るんだよ! 完璧だよ!! いい子だね! いい子だよ!! 恋しいよ!!」


 ソフィアが猫テリーの上に立ち、仰向けで倒れるテリーをカメラで撮り始めた。


「可愛いいいいいいいいいい!! 流石私の子猫ちゃん! マイ・キャット! マイ・テリー!!」

「にゃあ……」

「ほら! もっと私を求めて!」

「にゃっ……。……ソフィア……」

「ほら! エッチなポーズして!」

「やっ……! えっちなポーズにゃんて……っ、貴族猫として、はしたにゃい……」

「いいから足を開きなさい!! ほらぁ!!」


 ソフィアがカメラを片手に、猫テリーの足を左右にがばーっと開けた。猫テリーの頬が羞恥心によってさらに赤らんだ。


「にゃぁあああああ!」

「ああ! いいよ! テリー! このアングル最高だよ!! M字開脚テリーなんて、最高すぎりゅ!!!!」

「にゃぁあっ……! 恥ずかしいにゃぁ……! もうやめるにゃぁ……!」

「そんなこと言って! そんな顔してぇ! けしらかん! 実にけしからん!!」


 ソフィアが両足でテリーの両足を押さえながら、シャッターを切り続ける。テリーが両手で顔を押さえ、カメラから隠れる。


「にゃぁ……! もういやにゃぁ……!」

「テリー! 我儘言うなんていけない子!! ほら、そのいけないお顔見せなさい!」

「いやにゃぁ……! これ恥ずかしいにゃぁ……!」

「はっ!!」


 ソフィアが見る。テリーの開かれた足を、改めて見下ろして、目を見開く。


「白のかぼちゃぱんてぃだと!!!!??? けしからん!!!!!!」

「ソフィアが穿かせたくせに!」

「テリー!! 私にお尻を向けて、そのけしからぬ白のかぼちゃぱんてぃを、私にちゃんと見せなさい!」

「んんん……。にゃぁ……!」


 テリーが涙目になり、体が震わせる。しかし、逆らうことはせず、大人しく仰向けからうつ伏せになり、腰を浮かせ、ぱんつが見えそうで見えないぎりぎりのライン部分を、ソフィアに向ける。


「こ、これで満足だにゃ……?」

「いいよ! ああ! いいね! テリー! 最高だよ! 完璧だよ!」

「ぐうううう……! お前覚えてろにゃ……! あたしが完璧な貴族猫ににゃったら、お前にゃんてぶつって潰してやるんだからにゃ……!」


 上からぱしゃぱしゃ聞こえる音に、猫テリーが唸った。一方、ソフィアのにやけは止まらない。


「テリー……、自分でスカート押さえてみて……」

「ん……? ……こう……?」


 テリーが押さえたら、ソフィアに怒鳴られる。


「違う!!!!!!」

「ひぇっ!」

「前を押さえて! そして! お尻は継続的に私に向け続けて!!」

「ぐっ……! にゃんにゃのよ……! 畜生……!!」


 猫テリーがスカートの前を押さえる。ちらっとパンチラ。


「……こう?」

「そうそうそうそう! はい! きたこれ! シャッターチャンス!!」


 ぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃ!


「次は両手でスカートを押さえて、パンツを隠して」

「にゃ……」


 猫テリー後ろに手を回し、スカートを押さえる。


「こう?」

「完璧! 素敵! エクセレントのパーフェクト!!」

「ぐううう……!!」


 ぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃ!


「ほら、テリー! もっとそのかぼちゃぱんつを見せて!」

「にゃ……」

「腰浮かせて! 膝立てて!」

「にゃ……」

「スカート捲って!」

「ぐうううううううう!」

「はい可愛い! かぼちゃぱんてぃ! はい! 可愛い!」

「い」


 猫テリーが叫んだ。


「いやああああああああああああああああああああ!!」

「っ」


 ソフィアがぎょっとカメラから顔を離す。猫テリーが逃げ出した。


「あ」

「にゃーーーーーーー!!」


 壁の隅で耳としっぽを逆立て、うずくまる。


「いじめちゃいやぁ!」


 そして、ソフィアを鋭く睨んだ。


「ふしゅーーー!!」

「ああ……」


 ソフィアが正気を取り戻す。


(またやりすぎてしまった……。……私としたことが……)


 ソフィアが一歩近づいた。


「テリー」

「っ」


 猫テリーが警戒して、壁の隅に顔をこすりつける。それ以上行けないのに行こうとしている。


(ああ……完璧に怖がってる……)


 ソフィアがソファーにカメラをぽいと投げた。


「テリー」


 猫テリーに向き合う。


「ごめんね。仲直りしたいから、こっちにおいで」


 しゃがみこみ、猫テリーの顔を覗き込む。そして、両手を広げる。


「テリー、こっちおいで」

「……」

「もう撮影ごっこおしまい」

「……おしまい?」

「おしまい」

「……えっちな写真撮らない?」

「うん。もうおしまい」


 ソフィアが優しく微笑んだ。


「だから、こっち来て?」

「……にゃ……」


 テリーがゆっくりと動き出す。ソフィアの胸に体を寄せ、ぎゅっとソフィアを抱きしめる。


「……ん」

「ああ、テリーってば……」


 ソフィアも猫テリーを抱きしめ、豊満な自分の胸に閉じ込める。


「虐めてごめんね? もう大丈夫だよ」

「……にゃ……」

「怖かった?」

「……ん」


 こくりと頷くテリーに、ソフィアが微笑み、顔をすりすりと寄せた。


「テリーが可愛いからだよ」

「……にゃー……」

「くすす。テリーは温かいね」

「……にゃ……」


 ソフィアの胸の中で、とろんと、猫テリーの目がとろける。くたりと脱力して、その身をソフィアに預けた。


「……ソフィア……」

「テリー……。……可愛い……。……私のテリー……」


 ソフィアの手が猫テリーの腰を撫でた。


「さて、テリー、今穿いてる白のかぼちゃぱんてぃを、私に渡しなさい」

「……脱ぐの?」

「猫がパンツを穿くなんて贅沢すぎる」


 嘘だ。そんなこと思っていない。ソフィアはただ欲しいだけだ。猫テリーの脱ぎたてほやほやのカボチャぱんつを。


(私の手で脱がせたいところだけど、それでは盗みになってしまう。残念だけど、私は泥棒業を引退してしまったんだ)


 だから、テリーに脱いでもらわないと。


「テリー、自分で脱いで?」

「あ、あたしが脱ぐの……?」

「私の言うことが聞けないの?」

「……にゃ……」

「つべこべ言わず、早く」


 ソフィアの目が据わってくる。


「私にお尻を向けて、ちゃんと脱いでるところが見えるように、立ったまま脱ぎなさい」

「……変態にゃ」

「変態じゃないよ。私はペットの猫のぱんつを回収しようとしているだけさ」


 涼しい顔をしてそれっぽく猫テリーに話す。猫テリーの顔は明らかに引き攣っている。


「……にゃー……」

「立って。テリー」


 ソフィアが手を離すと、猫テリーがすくっと立ち上がる。そして言われた通り、ソフィアに尻を向ける。


「ほら。脱いで」

「……んん……」


 猫テリーの手が動く。カボチャぱんつの裾に指をひっかける。短いスカートから見えるその光景に、ソフィアがごくりと唾を呑んだ。じいいいいいいと見ていると、ちらっと猫テリーが振り返る。


(うん?)


 ソフィアが瞬きすると、猫テリーが視線を外して、頬を赤らめて一言。


「……見にゃいで。えっち」

「くすす」


(お尻向けてるのはテリーの方なのに、見ないでだって?)


 見ますとも!!!!!!


(えっちだから何?)


 女にだって性欲くらいあるんです!!!!!


「テリー、早くパンツ」

「は、恥ずかしいから……見ちゃいや……」


 ゆらゆらと尻尾が揺れている。


(ん?)


 ゆらゆら揺れている。


「テリー、尻尾が揺れてるよ?」


 ソフィアが猫テリーの尻尾を掴むと、猫テリーがびくんと腰を揺らした。


「にゃあ!!」


 驚いて腰が抜け、ソフィアの胸に再び猫テリーが戻ってくる。


「ふにゃあ……!」

「うん?」


 ソフィアがふにふにと猫テリーの尻尾を握ると、猫テリーが悲鳴を上げた。


「にゃあ! そこ、触るにゃ! ばかっ!」

「え?」


 ソフィアの口角がにやあと上がる。


「えーーーーー?」


 ソフィアの手がにぎにぎと動き出す。


「どうしたの? テリー? 顔が真っ赤だよ?」

「あっ……! そこ、らめらにゃ……! あっ……!」

「一体どうしたのかな? そんなえっちな声出しちゃって」


 にぎにぎにぎにぎ。


「ぁあっ……! らめっ……! それ……、らめぇ……!」

「ちょっと、そんなはしたない声駄目だよ? 私は尻尾を触ってるだけなんだから」


 すりすりすりすり。


「ああんっ……! やめっ……! すりすり、ぃやぁっ……!」

「じゃあ、これは……?」


 ふにふにふにふに。


「んんっ……! らめぇ……! そんな風に……触ったらぁ……!」

「テリー、そんなえっちな声で誤魔化そうたってそうはいかないよ。ほら、早くぱんつを脱いで」


 ソフィアの指が、カボチャぱんつの裾をつまんだ。


「にゃっ……!」


 猫テリーが目を見開き、首を振る。


「にゃっ、脱がしちゃいや、らめ、ソフィア、らめぇ……!」

「猫がぱんつを穿くなんて贅沢すぎる。ほら、大人しくして」

「ぁっ……! いやぁ……! 脱がせちゃ、いやぁ!」

「どうして? テリー? 何をそんなに焦ってるの?」

「あぅ……」


 猫テリーが真っ赤な顔でソフィアを見つめる。ソフィアはにやにやと、いやらしい笑みが止まらない。猫テリーの目がうるると潤み、頬を赤らめ、息を荒くさせて、後ろにいるソフィアに顔だけ向ける。


「ぱ……ぱんつの中……、ぐちゃって、にゃってるからぁ……!」

「ぐちゃ……? 何それ? 猫のくせに、はしたない子……」


 しっぽをにぎにぎにぎにぎ。


「……にゃぁ……! それ、いやにゃぁ……!」

「どうしたの? テリー。乳首まで出てきてるよ?」

「あっ、違うの、これ、違うんだから……!」

「テリー、ぱんつを脱がないなら、私が盗んでしまうよ? いいね?」

「あっ、いや、そんにゃっ、恥ずかしいにゃ……!」

「恥ずかしがることなんてないよ」


 ソフィアがくすすと、猫テリーの耳元で笑った。


「私が君の全てを、盗んであげる」

「にゃっ……! ……ソフィア……」


 ソフィアの手が下にずれていく。


「にゃぁっ……」


 猫テリーのカボチャぱんつが脱がされていく。


「んっ……、ソフィア……」


 猫テリーの大切な部分が見えてくる。


「ぁっ……それ以上は……!」


 スカートで隠そうとする猫テリーの尻尾を再びソフィアが握ると、猫テリーの腰がびくんと跳ねた。


「ああっ……! ソフィア……! ぁっ! 見えちゃう……! 見えちゃうにゃぁあ……!」


 いやらしく、猫テリーが体を震わせた。



















「ぐすすすすす……!」


 ソフィアはにやにやしている。


「にゃんこ……。にゃんこ可愛い……。ぐすすすすす……」

「「……」」

「ああ……、……可愛い……! ……私の子猫ちゃん可愛い……! ぐすす……! ぐすすすす……!」

「「……」」


 テリーとメニーが顔を見合わせた。メニーが受けつけカウンターで居眠りしているソフィアを起こそうと腕を伸ばすが、テリーに止められる。


「メニー、やめておきなさい」

「……でも、起こした方がいいんじゃない?」

「大丈夫よ。他の優しい人が、きっと起こしてくれるだろうから」


 二人がソフィアを見る。ソフィアがいやらしくにたにた笑っている。


「メニー、気持ち悪いソフィアに触れたらあんたの手が汚れるわ。行きましょう」

「本……、借りたかったんだけどな……」

「またこいつがいない時に来ましょう」

「……はい……」

「ぐすすすすす!!!」


 テリーが冷ややかな目をソフィアに向ける。


「……気持ち悪い……」

「ぐすすす……! 可愛いよ……! にゃんこ可愛いよ……!」


 ぞくぞくぞくぞく。


「ああ、何かしら。変な寒気がする」

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「さっさと帰りましょう。いつまでもこんな奴の綺麗な寝顔見ててもつまらないだけよ」


 テリーが歩き出す。早足で歩き出す。メニーの腕を引っ張って逃げるように歩き出す。


「メニー、あんな大人になっちゃ駄目よ」

「はい」

「……ああ。何かしら……」


(なんかすごく背中がぞわぞわする……!)


 テリーが顔を青ざめて歩き続ける。受付カウンターでは、気持ちよさそうにソフィアが眠っていた。









 図書館司書の猫夢日記 END

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