甘い血を下さい。(ルビィ)

(*'ω'*)ルビィ(10)×テリー(12)

他の人物のストーリーとは関係ありません。別のものとして見てください。

――――――――――――――――――――――――――――











バレンタインとは、カップルが愛を誓いあう日。

しかし、それだけではなく、友情に感謝する日でもある。

親しい友人にお菓子やプレゼントを渡し、その愛情を誓い合う。

とある者は、愛の告白を。

とある者は、恋人と微笑みを。

とある者は、友人と微笑みを。


それぞれの、バレンタイン・デー。


(お菓子が貰える!)


ひょこりと、赤ずきんを被った少女が、顔を覗かせる。


「キッド!」


とんとんと扉をノック。


「トリック・オア・トリート!」

「それは違う日」


キッドが呆れた顔で扉を開けた。キッドの目の前には、背の小さな泡栗色の髪の毛を二つに結んだ可愛い女の子、リトルルビィがにこにこしてバスケットを差し出していた。


「お菓子頂戴!明日、メニーと一緒に食べるの!」

「お前ね、俺がお前に用意してると思ってるの?」

「え?」


途端にリトルルビィの顔が青ざめる。


「用意してないの?嘘でしょ?」

「くくっ」


キッドが大きく扉を開く。


「おいで。入ればわかる」

「え?」


リトルルビィがきょとんとして、キッドの家の中へと入っていく。

中からは甘い匂いが充満している。


(お…?)


甘い匂いに困惑しながら、キッドの言う通り、狭いログハウスの中へ入る。すると、すぐにその匂いの原因がわかる。


「あれ?」


リトルルビィが目を丸くする。


「テリー?」

「うららららららららららららららら!!!」


テリーが人を殺す目でクッキーを大量生産していた。

くくくっ、と愉快そうにキッドが笑うのを、リトルルビィが見上げる。


「テリー、お菓子作ってるの?」

「そうだよ」

「ここで?」

「そうだよ」

「どうして?」

「俺が連れてきた」

「おお…」


(誘拐されたんだ…)


リトルルビィが幼いながらも、事を察し、テリーの横に歩いてくる。


「テリー!」

「っ!」


テリーがぎろっ!と睨んでくる。


(わっ。可愛い…)


思わず、ふにゃりと微笑むと、テリーがきょとんとしてリトルルビィを見下ろした。


「あれ?リトルルビィ?あんたなんでここにいるの?」

「キッドからお菓子貰おうと思って来たら、テリーがいたの!テリー、何作ってるの?何作ってるの?」


わくわくしたように訊けば、テリーが舌打ちして、憎しみを込めてキッドを横目に見た。


「聞いてくれる?ルビィ。あの糞下種野郎。四歳年下のいたいけで可愛いあたしを誘拐して、ここに来させたと思ったら、いきなり二人だけの二度目のバレンタイン。クッキー・プリーズ!よ?おかしくなあい?」

「おかしいね!」

「おかしいわよね。酷い奴なのよ」

「酷い奴だね!」

「そうよ。あいつは酷い奴よ。頑張って生地を捏ねてるあたしの背中見てにやにやしてるんだから。気持ち悪い」

「気持ち悪いね!」

「気持ち悪いでしょ?」

「ちょっとー?」


キッドが微笑みながら、片目をぴくりと痙攣させた。


「人の目の前で人の悪口言わないでくれるかなー?」

「あんたが悪いんでしょ」

「俺は愛しい婚約者にクッキー作ってほしいなってお願いしただけだよ?」

「ほざきなさいよ。散々あたしに怖い思いさせたくせに」

「怖かったの?ごめんね?テリー」


その言葉には、嘘があり、嘘しかない。


「くそが…」


唸りながらキッドを睨むテリーに、リトルルビィが微笑む。


「テリー!私も何か手伝うよ!」

「座ってなさい。形も出来たし、後は焼くだけだから」

「むう!」

「むくれない。一足遅かった自分を恨みなさいな」


そう言って、クッキーを窯の中に入れる。


「あとは焼き上がるのを待つだけよ」

「リトルルビィ、待ってる間お菓子食べようよ。俺、沢山貰って、食べきれないんだ。お前にあげるよ」

「やったー!」

「おまっ…!」


会話を聞いてたキッドにテリーが振り向く。


「そんなに貰ってるなら、あたしのなんか必要ないじゃない!」

「何言ってるの。お前は別でしょ」

「あたしはお前の奴隷か!」

「婚約者だ!」

「婚約者という名の玩具では!?」

「愛しい婚約者というのは、愛しい婚約者のためにクッキーを作るものだ!」

「くたばれ!」

「結構!」


高笑いするキッド。

苦い顔で歯をくいしばるテリー。

二人の間で、お皿に盛られたお菓子を頬張るリトルルビィ。


(美味しい!)


ぱくぱくぱくぱく。


「ん?」


大人っぽい包みを見つける。


「チョコレートだ」


勝手に開けて、お皿に盛る。そのチョコレートを頬張る。


「もぐもぐ」

「むきゅむきゅ」


ん?


「何これ。苦い…」


リトルルビィが顔を歪める。


「チョコレートなのに」


もう一度手に取って、頬張る。


「むきゅむきゅむきゅむきゅ」


食べてみる。

苦い。


「ううう…苦い…」


チョコレートが苦い。


「そんなわけない」


もう一度手に取って食べてみる。


「むきゅむきゅむきゅむきゅ」


ごくり。


「……………………」


リトルルビィが黙った。

黙る中、キッドとテリーの言い争いが聞こえる。

黙る中、ログハウスにビリーが帰ってくる。


「おや、これは賑やかな」

「じいや、お帰り」


キッドが殴りかかってきそうなテリーの頭を押さえながらビリーに振り向く。

テリーもビリーに振り向き、キッドの手を振り払う。


「ミスター・ビリー!こいつの教育をもう少し厳しくしてちょうだい!こいつ、今年で16歳になるくせに、生意気なのよ!」

「生意気なのはお前の方だろ!それに、俺はまだ15歳になったばかりなんだ!16歳になるまでは、15歳を謳歌させてもらうよ!」

「くそが!クソガキが!」

「へーーえ?そういう事言うの?」

「ほにゃあああ!ほっへをふへふはあああ!」


ビリーがふふっと笑って、椅子に座る。向かいの席でリトルルビィが俯いて黙っている。それを見て、ビリーが首を傾げる。


「うん?」


リトルルビィの傍に置かれた開封されてる袋を見る。


「ふむ?」


袋の概要欄の文字を見て、ちらっとお皿に盛られたチョコレートを見て、黙るリトルルビィを見て―――――静かに、呼吸する。


「キッドや」

「なんだよ!じいや!今いいところなんだよ!」

「くうううううう!」

「あはははは!ばーか!テリーのばーか!テリーのぶーす!」

「むううううううううううう!!」


――――ビリーが、テーブルを叩いた。


「キッド!!!!」


キッドが硬直した。

テリーも硬直した。

ビリーが静かに髭を撫でた。


「自分より幼い子の面倒を見るとき、目を離してはいけないと教えたはずじゃ」

「…な、なんだよ。ほら、目を離してないよ?」


掴んでいるテリーの頬を、むにむにと触る。


「ああ、そうじゃのう。確かに、テリー殿の面倒は、見ていたようじゃな」

「…え?何?リトルルビィの事だって見てたよ」

「本当か?」

「そこでお菓子食べてるだろ」

「ならば」


ビリーが開封された袋を、手で掴み、ひらひらと揺らした。


「なんでこれが開けられてるんじゃ」

「何それ?」


キッドとテリーが一緒に首を傾げた。

ビリーがため息交じりに、その名称を答える。


「ウイスキーボンボン」


お酒入りチョコレート。


聞いた途端、キッドの顔が青くなる。

聞いた途端、テリーは目を輝かせる。


「お酒入り!?」


テリーが叫んだ瞬間、


「水!!」


キッドが飛び出す。

と同時に、リトルルビィが力尽きたように、テーブルに突っ伏した。


「わっ!リトルルビィ!」


テリーが駆け寄り、リトルルビィの顔を覗き込むようにかがみ、背中を撫でた。


「ねえ、リトルルビィ!どんな味がした!?どんなウイスキーだった!?どのチョコレート!?あたしも食べたい!!」

「テリー殿」

「…ごめんなさい」


ビリーに制され、少ししゅんとしながらも、テリーの手がリトルルビィの背中を撫で続ける。


「でも、たかがチョコレート如きで酔っぱらう?」

「テリー殿、忘れておりませんか?」


その子は、吸血鬼。


「吸血鬼は、酔いに弱いのですよ」

「そうなの?」

「ええ」

「だから俺もこんなにテンパってるんだよ」


キッドが速やかに水を持ってきて、しゃがみ、リトルルビィの頭に手を置く。


「ほら、ルビィ。飲めるか?」


リトルルビィは顔を起こさない。


「寝てるんじゃない?」


テリーが顔を覗き込むと、

ぎょろっと目を開けた、赤い目と目が合う。


「ん」

「血」

「え」


その目を、テリーは知っている。


(あれ)


デジャブ。

襲われた時の、目に、よく似ている。

全く同じもののようにも感じる。


「血」


リトルルビィが、微笑んだ。


「寄コセ」

「へ…!」


ぞっとし、テリーが下がった瞬間、


「血!」


リトルルビィが、テリーの腕を掴んだ。


「ひゃっ!」

「っ」


キッドが即座に剣を抜く。しかし、それよりも先に、リトルルビィがテリーを抱き上げ、足を動かす。


「ちょ!」

「テリー!」


キッドの叫ぶ声が聞こえた直後、風が吹く。


(ひえっ!?)


瞬きすると、場所が変わっている。

髪の毛が、かなり乱れている。


「ひえっ」


(瞬間移動!)


リトルルビィの家の中に、移動されていた。


「えい」

「ぎゃっ!」


リトルルビィがテリーを小さなベッドに投げた。テリーが背中から倒れると、ベッドがきしむ。


「ちょっと!あんた!」


慌ててテリーが起き上がる。


「このテリーをベッドに投げるなんて、身の程を知りなさい!」


強気に出ると、その上からリトルルビィが乗っかってくる。

その目は、赤い。


「テリー…」

「うぇっ…!?」


色気のある赤い目に、驚いて、目を丸くする。


「り、リトルルビィ?」

「血」

「え」

「血」


リトルルビィが、微笑む。


「血、頂戴?」

「あ」


両手を押さえられる。


「あ」


体が、押し倒される。


「え」


顔を青ざめると、リトルルビィの顔が、首に近づく。


「あ」


声を出すと、



がぶっ!


「いたあああああああい!!!」


悲鳴をあげて、足をばたつかせる。


「痛い痛い痛い!ルビィ!痛い!痛いってば!!」


悲鳴のように、叫ぶ。


「痛い痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!!」


テリーの強気な目が、涙目になっていく。


「痛い!痛いってば!ルビィ!!」


その声は、鼻声になっている。


「離して!痛い!離れて!一旦離れて!!」


血を吸われて、初めての感覚。


「いったいっつーーーーの!!」


しかし、手は離れない。


「うううううう…!」


唸るしか出来ない。


「うううううう…!」


泣くことしか出来ない。


「ううええええええ…!」


ほろほろ、泣くことしか出来ない。


「んんんんん……!!」


ぼろぼろと、ほろほろと、涙を落とす。その嗚咽に気づいたように、赤い目がテリーを見上げた。涙を流すテリーを見て、赤い目が見開かれ、その首から鋭い歯を抜く。


「ひっ…」


テリーの体が跳ねる。涙は、ほろほろと流れる。

それを、リトルルビィが舐めた。


「ゃっ…」

「あ」


リトルルビィが声を出す。


「あまい」


リトルルビィが微笑んだ。


「アマイ」


リトルルビィの視線が、水滴に奪われる。


「苦クナイ」


もう一度、舐める。


「ルビ…」

「甘い」


リトルルビィの舌が、テリーの頬を舐める。


「んっ…」

「甘い」


リトルルビィの舌が、テリーの目じりを舐める。


「ルビィ」

「もっと」


リトルルビィがうっとりと、ねだる。


「もっと、甘いの」


舌が下に下がっていく。


「お姉ちゃんの」


首に向かう。


「テリーの甘いの」


首を舐める。


「んっ」


テリーの顔がしかめられる。リトルルビィが穴の開いた傷から、舌だけで、ぺろぺろと、舐めるのだ。赤ん坊のように、猫のように、犬のように、テリーの血が溢れる傷口から、舐めていく。


「…くすぐったい…」


テリーが体を強張らせ、肩をすくめると、握られる手に力が込められた。


「…ぁっ」


指を絡められる。


「…ルビィ…」


義手の手も、自分の手も、指が、テリーに絡まれる。


「ぴりぴりするんだけど…」


リトルルビィが黙る。黙って、ぺろぺろと、舌を動かす。


「…ルビィってば…」


不安そうな声を出す。


「何とか言ってよ…」


テリーの眉が、切なげにひそめられ、リトルルビィを見下ろしたと同時に、リトルルビィの顔が上げられ、赤い目と目が合う。


(あ)


吸血鬼の目。


「ルビィ」

「テリー…」


ちゅ。


血がついた赤い唇が、テリーの額にキスをする。


「ん」

「ふふっ」


テリーのおでこに、血がついちゃった。


「なめてあげる」


ぺろりとテリーの額を舐める。


「ちょ、っと…」

「次は…」


ちゅ。


頬にキス。


「ルビィってば!」

「テリー…かわいい…」


ぼうっと、テリーを見つめる。

自分の下で、顔を赤らめて、戸惑う目のテリーを見つめる。


「かわいい…」


胸がどきどきする。


「のませて?」


赤い目が、テリーを見定める。


「テリーの血」


目が鋭くなる。


「テリーのあまい血」


血、血、血、血、血、


「あまいののみたい」


血、血、血、血、血、


「テリーのはとくべつあまいから」


テリーの血テリーの血テリーの血テリーの血テリーの血


「の…ま…せ…て…」


あー、と、大きく、リトルルビィの口が開く。


「ルビィ!!」


その瞬間、テリーの目が、カッ!と見開かれた。


「良い子になるなら!いくらでも飲ませてあげる!!」

「え…?」


ぱちくりと瞬きをして、リトルルビィが顔を上げる。


「いいこ…?」

「そうよ!良い子になったら、好きなだけ!同意の元!たくさん血を飲んでいいわよ!」

「わたし、いいこだよ…?」


テリーの胸に顔を摺り寄せ、上目でテリーを見つめる。


「てりーのいうこと…きく…いいこだよ…?」

「だったら!」


テリーが電話に、目をくれる。


「あれで、キッドに電話しなさい!」

「んう…?」

「テリーと一緒に、おねんねしてるって!電話しなさい!」

「てりーとおねんね?」

「そうよ!おねんね!」

「わかったぁ!」


ふわあ、とリトルルビィが微笑む。


「おでんわ、する!」


テリーから離れ、ふわふわと立ち上がり、ふらふらと電話機に向かい、受話器を持ち、番号をなぞる。受話器から音が出る。


『はい』


老人の声。


「おじいちゃん!」


リトルルビィが、笑って、言った。


「テリーとおねんねするの!」

『ほう』


ビリーが、微笑む声がする。


『テリー殿とおねんね、するのかい』

「うん!」

『どこでだい?』

「おうち!」

『ルビィのお家かい?』

「うん!」

『そうかい』

「うん!」

『殺してはいけないよ』

「ころさないよ!いっしょにおねんねするの!」


(うおおおおおおおおお…!!)


テリーが首を押さえて、息を切らす。


(やばい。くらくらしてきた…!早く来い!キッド!早く来い!!)


「てりー!」

「うわあああ!」


思いっきり体を乗せられ、テリーが悲鳴を上げた。


「ちょちょちょ!あたし、今、貧血気味で…!」

「まだだいじょうぶだよ!」

「大丈夫じゃないわ!」

「まだだいじょうぶ!」


だから、


「ちょうだい?」


また、手を掴まれる。


「ちょおお!」


傷を、ぺろりと舐められる。


「っ」


ぺろぺろと、舐められる。


「んん…」


リトルルビィが、ぎゅっと手を握ってくる。


「ルビィ…」


リトルルビィの、乱れた息が聞こえてくる。

犬のように、舐めてくる音が、耳に響く。


「んう…」


眉をひそめ、痛みに耐える。

けれど、先ほどよりも痛くない。


(ぴりぴりする)


そう思うが、


(舐められるたびに、それが緩和されてる気がする)


リトルルビィが舐めてくる。

犬のように、舌を動かす。

愛情がそこにあるようにも感じる。

舐めることで、それを伝えているように感じる。


(ううううう…)

(なんであたしなのよ…)


血がおいしそうな輩なら、いくらでもいる。


(メニーだっているじゃない…)

(そうよ)

(こういう時、狙われるのは穢れの知らないメニーでしょ…)

(真っ白なメニーが汚れるから美しく感じるっていうのもあるでしょ…)

(なんであたし…?)


「てりー」

「ん?」


ちゅ。


目じりに、キスをされる。


「んっ…?」

「てりー」


赤い目が、見つめてくる。


「なかないで」


甘い声が、言ってくる。


「なかないで」

「…もう、泣いてないわよ」

「なかないで」

「泣いてないってば」

「なかないで」

「もう…」


テリーの手がリトルルビィの手から無理矢理離れ、リトルルビィの頬を撫でる。


「もう泣いてないでしょ?」


リトルルビィの手も、テリーの頬を撫でる。


「もうないてない…?」

「泣いてない」

「なかないで?」

「泣いてないでしょ?」

「なかないで?」


リトルルビィが、切なそうに、哀しそうに、眉をひそめる。


「わらって?」


リトルルビィが言う。


「てりー、わらって?」

「今日のあんたは注文が多いわね…」

「わらって?」

「はいはい。にこにこにー」


い、と口の形を無理矢理作れば、リトルルビィが嬉しそうに微笑む。


「えへへ」


そして、傷口を指でなぞる。しかし、目は、テリーを見たまま。


「てりーかわいい…」

「あたしは可愛いじゃないの。美しいの」

「かわいい…」


ふにゃりと微笑む。


「かわいい…」

「可愛いのはあんたでしょ」

「かわいい…」

「駄目だ。酔っぱらってるわね…」

「てりー、かわいい…」


ちゅ。


再び頬にキスをされ、テリーの顔が真っ赤に染まる。


「うおわ…!」

「かわいい…」


ちゅ。


「ちょ、」

「かわいい…」


ちゅ。ちゅ。ちゅ。


「ちょちょちょっと、ちょっと待った」

「かわいい…」


テリーの首に、キスを落とす。


ちゅ。


「きゃっ!」


びくっと、テリーの体が跳ねる。


(なななな…!?)


さっきとは、違う感覚。

背中がぞくぞくする。

それは決して嫌悪ではなく、


(…なに、これ…)


胸が、どきどきしてくる。


「てりー…」


ちゅ。


「あっ、ちょ、」

「てりー」


ちゅ。ちゅ。


「てりー」


ねえ、


「てりー」


欲しい。


「てりー」


ちょうだい?


「てりー」

「あ」


その唇が、近づく。


(あ…)


自分の唇に、重なる。


(あ)


直前に、




キッドの手が、リトルルビィとテリーに口に壁を作った。


「駄目!!!」


その唇は!!


「俺のものなの!!」


そう言って、リトルルビィの体を押し倒す。


「やだ!」


リトルルビィが暴れだす。


「やなの!キッドいや!」

「はーあ…」


キッドが苦い顔をして、リトルルビィの顔を覗き込む。


「良い子だから、テリーの首の傷口、塞いでくれる?」

「いいこ!」


リトルルビィが「良い子」に反応して、微笑む。


「わたし、いいこだから、ふさぐよ!」


リトルルビィが起き上がり、テリーに抱き着く。そして、その傷に唾液を流す。すると、みるみる傷が塞がっていく。


「えへへぇ!いいこ!わたしいいこ!」

「良い子ならこれ飲んで」


水。


「はーい!」


ごくごくごくごく。


「はい、おかわり」

「はーい!」


ごくごくごくごく。


「えへへ…」


リトルルビィがテリーの胸に顔を摺り寄せ、その瞼を閉じる。


「すや…」


安らかに眠る。

それを見て、テリーとキッドが顔を見合わせ、ため息をついた。


「はあー…」

「テリー、お前にしてはよくやったよ…」

「死ぬかと思った…」


そっとリトルルビィの頭を撫で、自分にしがみついて離れないリトルルビィを見下ろす。


「ねえ、どうしたらいい?」

「とりあえず起きるまでそれで待機」

「何よ。あたしだけ?」

「俺は帰るよ。もう大丈夫そうだし」

「ちょっと待ってよ。あんたにも責任はあるのよ?」

「お菓子置いておくよ。お前が作ったクッキーがちょうど出来上がったんだよ」


乱暴に袋に入れられた焼きたてのクッキーが、目の前のテーブルに置かれる。


「じゃあね。俺は、街のレディたちにお菓子を貰いに行かないと」

「この裏切者!」

「はっはっはっはっ!悔しかったらここまでおいで!」

「ぐっ!」


寝ているリトルルビィは、寝ているとは思えないほど力をこめて、テリーを放そうとしない。

テリーは拳を握り、笑うキッドを睨む。


「起きたら俺のところに来るよう言っておいて。説教だ」

「…あまり虐めないでよ」

「わかってるよ」


キッドが微笑み、扉を閉める。


二人、部屋に残される。


「はあ、困ったわね…」


テリーがうなだれる。


「とりあえず…」


抱きしめ、その小さな少女と一緒に横になる。


「起きるまで、待機ね」


起きたら、


「あたしも説教してやる」


そう言って、その体を抱きしめ、瞼を下ろす。

目の前のリトルルビィは、幸せそうに、すやすやと、眠っていた。



―――数時間後、目を覚ましたリトルルビィは、テリーに連れられ、キッドの家で頭を抱えていた。


「…………………頭痛い」

「こうなったのはお前のせいだぞ。キッドや」

「なんで俺が怒られるわけ…?」

「はっ!キッド!ざまあみろ!おっほっほっほっほっ!」

「テリー殿」

「えっ、あたしも…!?」


ビリーの横で頭を押さえるリトルルビィ。その前では、キッドとテリーが不満そうに眉をひそめていた。




番外編:甘い血を下さい。(リトルルビィ)END

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