二人でお出かけライフ(1)
(*'ω'*)年齢参照:キッド(15)×テリー(11)
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新年、あけましておめでとうございます。
そんな挨拶に回る人々の姿。
キッドも、例外ではなかった。
「キッド、あけましておめでとう! これあげる!」
「ありがとう。今年もよろしくね」
――ちゅ。
頬にキスをすれば、
「ひゃっ、き、キッドってば……もう!」
喜ぶ少女達。キッドは、その顔を見るのが嬉しかった。
「だって、俺にキスをされて嬉しそうにする女の子たちは、何よりも可愛いからね!」
ぱちんと、ウインク。
今日もキッドは絶好調である。
「キッドや」
ビリーがキッドに声をかける。
「年賀状が届いとるぞ」
「わーい! すごい量だね!」
ポストから溢れるハガキの量に、キッドは喜び、一枚一枚目を通していく。キッド宛はキッドが。ビリー宛はビリーが。二人で微笑みながら読んでいく。
――だが。
「??????????」
最後の一枚を読み終えて、キッドの目が点になる。宛先をもう一度ザッと確認し、
「??????????」
やはり、疑問が頭の上で交差する。
「じいや」
視線を移す。ビリーが顔を上げる。
「何です?」
「俺への年賀状は数百枚を超えてるよ」
「はい」
「ビリーは何枚だった?」
「仕事関係の方もいらっしゃいました。はて、今日のところは五十枚、というところですかな」
「俺の勘が間違えてなければ、あるはずだ。じいや、訊くぞ」
キッドが、ビリーに、真剣な眼差しで視線を定める。
「テリー・ベックスからの年賀状はあるか?」
「ここに」
「あのやろおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
キッドが大きくテーブルを叩いた。それはそれは、大きく派手に。ビリーが自らで淹れたアップルティーを飲み、ふうと一息ついた。
「やめなさい。新年早々テーブルを壊す気か」
「じいや! 言っただろ! 俺には! 年賀状が! 数百枚! 超えてるんだよ! 全部! 町の女の子達からさ!! すごいだろ!? ねえ、すごいことだよな!?」
「ええ。あなたは本当に人から好かれますね。尊敬してますよ」
「それが! たった一人! 関わりのある女の子が一人! たった一人、来てないんだ! それも、ただの知り合いじゃない! ただの友達じゃない! 最高に最強に深奥で深甚で深遠に関わりの深いはずの! 婚約者! テリー・ベックスからの年賀状が!! 来てないよ! これは、一体、全体、どういうことだ!!」
「普段の行いでしょう」
「じいや!?」
ぎょっと目を丸くするキッドに構うことなく、ビリーは優雅にアップルティーを口につける。冷静なビリーに、戸惑うキッド。しかし、完璧なキッドはすぐに立ち直る。ふっ! と、いつもの余裕のある笑みを浮かべ、足を組む。
「テリーは、きっと照れてるんだな。そうに違いない」
「個人宛ですな。私の名前がきちんと書かれている。ほう、このお葉書もなかなかの代物です。さすが、名の知れるベックス家のご令嬢ですな」
「……」
沈黙。引き攣る顔。後、再びキッドが微笑んだ。今度は腕を組む。
「まあ、『俺の誕生日』でのこともあった。恋焦がれる大好きな想い人の俺に、直接渡したいと思って、ポストに入れなかったのかもしれない」
「ほう。ということは、近いうちにここへ来られると?」
「当たり前だ。あいつは俺の婚約者。俺の事が大好きなんだ。来ないはずがない」
ふんぞり返り、余裕綽々とキッドが笑みを浮かべ、微笑み、笑い、その少女を待つ。
――しかし、一日経ち、二日経ち、一週間が経ち、二週間が経ち、一ヶ月が経った。
少女からの手紙も、年賀状も、ラブレターも、電話一つ、キッドには届かない。
その姿も、見かけない。
キッドはその間も、毎朝早起きをしては新聞を取りに行き、ビリーに届けていた。俺はもう読んだから読んでいいよ。と言って渡した。それがハガキを確認したいからの行動であることも、ビリーには察しがついていた。健気なのか、彼女からの評価を認めたくないのか。どちらにしろ、他の人々からの年賀状はしばらく届いたが、その後も待ち続けている少女からの連絡は、一切無かった。
ただ、ビリーには届いたのだ。
キッドではなく、ビリーには、初日に、届いたのだ。
初日に。
個人宛で。
「……」
ビリーがリビングに行くと、キッドは両手指を絡ませ、その指に額を乗せ、うつむき、何か考え込んでいた。そんなキッドに、ビリーが朝の挨拶をする。
「おはよう。……キッドや、今日は早いのう」
「……」
「何か飲むかい? 朝ご飯は?」
「……もう食べた」
「そうですか」
「出かける」
キッドが立ち上がる。コートを着て、少女から貰ったマフラーを首に巻いて、ビリーに振り向く。
「すぐに戻る」
「すぐに、ですか」
「うん。今日さ、雪祭があるだろ」
「はあ」
「うん。すぐ戻るよ。一時間もあればいい。……じいや」
「はい」
「紅茶の準備だけ、頼む」
「はい」
ジンギスカン。
チンギスハン。
「誘拐はああああああああああああああああん!!!!!」
悲鳴が聞こえたと思い、ビリーはゆっくりと家の扉を開けた。
すると、キッドは素晴らしい笑顔で小さく縮こまった少女の首根っこを捕まえて、家の前に戻ってきていた。
茶色のコートを着た少女は、目を見開き、冷や汗でいっぱいの、血の気が引いた顔で、怯えるように、体を震わせ、引きつった顔で、キッドを凝視していた。
中に入れ、キッドが少女を抱き上げ、抱きしめ、にこにこと、にっこにこと、にこにこにこにこと、微笑んでいた。
「あはは! テリー! お前、新年のご挨拶はどうしたんだ? ん? 家にも来ない。電話も無い。年賀状も無い。あはははははは!」
少女――テリーは黙る。ひたすら黙る。黙って、怯える目で、警戒した目で、キッドを睨みつけるだけ。はたして、本当にキッドの婚約者というのも、疑うほどに、鋭く、誰よりも殺気深く、キッドを睨みつけている。
キッドもひとしきり笑った後、じっと、抱き抱えるテリーを見上げた。
「ねえ」
「年賀状」
にこりと微笑む。
「来てないんだけど」
「……。……。……。……。……。……。……ミスター・ビリーには送ったもん……」
ぼそりと、蚊の鳴くような声で言う彼女に、キッドは、ははっ! と笑う。
「俺には?」
「なんであんたに書かなきゃいけないの?」
「あはは。お前、本当に人を煽るのが上手いね。そんなにお仕置きされたいの?」
キッドが言った途端、ぞっとテリーの表情が青ざめる。青ざめていた顔が、もっと青ざめる。青だらけの顔色。酷く、怯え始める。
「お、お仕置き?」
だが、この少女はここで終わらない。青ざめた顔から、強気のある顔色に変わり、じろっと、キッドを睨みつけるのだ。
「なんで、あたしが、あんたに、そんなことされなきゃいけないわけ? くだらない! 勝手なこと言って脅さないでくれる!?」
「うん。じゃあ謝るまで、俺、こうしてテリーを放さないよ」
「うぎゅっ!」
ぎゅっと、抱き抱えた体を抱きしめる。そして、眉を下げ、切なそうな表情で、悲しそうな瞳で、キッドがテリーを見つめた。
「分かってるよ。お前、大好きな俺に素直になれないだけなんだよ。照れちゃって可愛いな、テリーは」
「……あたしが、いつ照れたって言うの?」
「照れて、年賀状、出せなかったんだろ? 俺はちゃんとわかってるよ」
「はっ! あんた、本当脳みそがお花畑なのね! 送りたくなかったから、送らなかったのよ!! あんただけにね!!」
「あはははははははははは! いけないことを言うお口はこれか? この口か? こうしてやろうか? ほれほれ! どーだ? テリー? どぉぉおだーーーーあ?」
空いてる片手でキッドがテリーの両頬を掴み、むにむにと動かす。テリーが悲鳴をあげ、唸り、手足をばたつかせ、視線を必死にビリーに向ける。
「みしゅしゃー! みしゅしゃーびりーーー!!」
「キッドや」
呆れたような声に、キッドはにこっと微笑み、ソファーに座る。膝の上にテリーをお人形の如く置いたまま。そして、今まで笑っていたのが嘘のように、むすっと表情を曇らせ、口角を下げ、眉間に皺を寄せた。
「じいや。悪いのはこいつだぞ。俺はちゃんと待ってたってのに」
「だって、キッドだけには送りたくなかったんだもん……」
言いづらそうに言うテリーの言葉にキッドがぎょっと、目を見開く。
「なんでだよ! 俺が特定の人物から年賀状を待ってること自体すごいことなんだぞ! ここまで待ってた俺に感謝してもらいたいくらいだよ!」
「キッド、……自意識過剰って言葉知ってる?」
「テーーーリーーー……」
「なーーにぃいいよーーー……」
お互いにじいいいいっと睨み合う。
15歳のキッドと、11歳のテリー。
ビリーは微笑ましくない二人に、ストップをかける。
「喧嘩をするなら、外でやりなさい」
「ほら、ミスター・ビリーも言ってるわよ! もう! そろそろ放してよ! あんたに構ってる余裕は今のあたしには無いのよ!」
テリーはいつもに増して怒っている。キッドは首を傾げる。
「ん? なんかあるの?」
訊いた途端、テリーの顔が引き攣った。こいつだけには絶対話すもんかという顔をする。
「へえ!」
キッドがきらりーんと目を輝かせて、にやける。
「何々? 俺に何を隠してるの?」
「か、関係ないことよ! 放っておいて!」
「テリー?」
じっとその目をキッドが見つめる。考えを読む。何か隠している。でも、それは自分には関係ないことだろうと悟る。しかし、テリーが困っていることがあるのは確かだろうと察する。
キッドはにんまりと微笑み、テリーの頭をなでる。
「ねえねえ、何に困ってるの? 俺に言ってみてよ?」
「……」
「テリー?」
「……」
「よし、言うまで、お前に紅茶を飲ませまくる」
「……」
「で、トイレに行かせない」
「……」
「おしっこしたいのを我慢して、顔真っ赤にするお前を眺める」
「……」
「漏らして泣きわめくお前を、見て楽しむことにする」
にやぁと、悪魔の笑みを浮かべる。
本気でやります。ええ、本気でやりますとも。決めたら全力投球。それがキッド。
キッドは、本気で、ティーポットを掴んだ。その瞬間、顔をぞおおおっと青ざめたテリーが口を開いた。
「た、誕生日!」
「ん?」
「……妹の、誕生日……」
テリーが、言いづらそうに、喋り出す。
「もう少しなのよ。……メニーの誕生日」
「……へえ」
「何あげていいかわかんなくて……、……雪祭で参考になるものでもと思って行ったのよ」
そしたら、
「いきなりマフラー掴まれて! 首が絞まったと思ったら! あんたがニコニコ笑ってて! 引きずられて! 逃げようとしたら! てめぇのお手伝いさんに囲まれて! てめぇに抱っこされて! 本当に! あたし! 死ぬと思ったわ! 今度こそ! 地獄からの迎えが! 来たと感じたわよ!!」
「キッドや!!!!」
ビリーが叱ると、キッドがあざとく、可愛く微笑み、テリーの頭にすりすりと顔をくっつける。
「だって、テリーがいたから、つい、悪戯したくなっちゃったんだ。怖がらせちゃってごめんね。テリー」
「その顔、ごめんねなんて思ってないでしょ。この嘘つき」
かちん。
キッドの表情が不機嫌に切り替わった。
「あのさあ、先に喧嘩売ったのはテリーだろ。なんで俺が怒られるわけ? 意味がわからないんだけど」
「11歳のいたいけな女の子を虐める15歳がどこにいるのよ! 本当に怖かったんだから!」
「お前が悪いんだろ! 年賀状送らないから!」
「なんでそんなに年賀状なんか欲しいのよ! あんた、いっぱい貰ってるんでしょ!?」
「俺、テリーからの年賀状が欲しいんだ。えっへん」
「気持ち悪い」
「ほーう! いけない子の口は、この口かー? ほれほれー!」
「ふううううう! みしゅしゃーびりーーー!!」
先ほどのやり取りが繰り返され、ビリーは呆れたため息を吐いた。
「テリー殿、それで、プレゼントは決まったのかい?」
テリーは首を振る。
「何も決まらないの。どうしよう」
「また本でも買ってあげたら?」
キッドの意見に、テリーも頷く。
「そう思うでしょ? でもね、もうそれはあたしの姉さんが準備しちゃったのよ。さすがに同じものは渡せない」
「なるほどね」
「ああ……、……どうしよう……。憂鬱だわ……。お腹痛くなってきた……。吐き気もしてきた……」
「メニーの誕生日だろ? いくらなんでも、思い詰めすぎてないか?」
「お前はお気楽でいいわよね……。思い詰めるくらい慎重にならないと駄目なのよ……。特に、このイベントに関しては……」
「あはは。お前は本当にメニーが大好きだねえ」
キッドの言葉に、テリーが複雑そうに表情を曇らせ、黙り込む。
「……」
「んー。……そういうことなら、俺も付き合うよ。一緒に探しに行こう」
キッドからの誘いに、テリーがちらっとキッドを見上げる。
「……いいの?」
「暇だし、テリーとの時間が欲しかったからちょうどいいよ。くくっ! デートだ!」
「何がデートよ。メニーのプレゼントを探すだけでしょ」
ふんっ、とそっぽを向くテリーの頭を、キッドがぽんぽんと撫でる。
「というわけで、じいや、出かけてくるよ」
「うむ」
「どこに行く? テリー」
キッドがテリーを見下ろすと、テリーが考え、ひらめき、人差し指を立てる。
「広場付近?」
「商店街かな?」
「9歳の女の子って何が好きなのかしら……。ああ、わからない……」
「メニーって、何が好きなの?」
「本」
「本ね」
「本に触ってるところ以外、見た事ないわ」
「鞄は?」
「鞄?」
「本とか入れるような鞄。持ち歩けるだろ?」
キッドの意見に、テリーの目が輝いた。
「なんでそれを思いつかなかったのかしら!」
「ふふっ。すごいだろ? だてに女の子と仲良くしてないよ!」
「メニーに鞄……。多分、少し素朴な方がいいわね……。よし、あたし、行ってくる」
「ちょっと待ってよ。俺も行くって」
「いいわよ。買うものが決まったんだから、一人で行く」
「待ってよ、テリー」
キッドがテリーの腕を引っ張り、引き寄せる。
「わっ」
背中からテリーを抱きしめ、彼女の耳元で、とろけるような声で、キッドが囁いた。
「提案した俺にご褒美は?」
ぱちんとウインクすれば、完璧に決まる――予定なのだが、相手はテリーなのだ。
「……はあ?」
テリーの唸るような低い声に、ビリーがふっと笑い、キッドはもっと笑った。
「あっはっはっはっはっ! このクソガキ!! お前は本当に恩知らずだね! ご褒美ちょうだいよ! ご褒美!!」
そのまま、また頬をぐちゃぐちゃにして遊びだす始末。
「むううううう! ううううううう!」
「キッドや」
ビリーが声で止めると、キッドはまたテリーを抱きしめ直す。
「あはは! だからさ、一緒に出掛けようよ。商店街を歩くだけ! メニーの誕生日プレゼント探しに俺も連れて行って!」
「なんでそこまでついて行きたいの?」
「暇なのさ!」
「他の子と遊びに行きなさいよ……」
はたして本当に婚約者なのだろうか。
ビリーはずっと疑問に思っていた。
キッドが婚約者を連れてきたと聞いた時に冗談かと思った。本気で連れてくるとは『思っていなかった』。キッドには『欠陥』がある。その『欠陥』を補える相手がいるとは、到底思えなかった。
だが、キッドはやり遂げた。
生まれながらにしての天才。しかし、婚約者はさすがに無理だろうと思われた。そもそも、条件に合う人物が、この城下町にいる可能性も少なかった。
しかし、キッドは、連れてきたのだ。このテリーを。貴族令嬢。4歳年の離れた少女。見た目もそこまで悪くない。ただ、髪の色が少し濁っているだけ。ただ、吊り目の形が猫の目のように鋭く見えるだけ。言ってしまえば、目つきが悪い。髪が汚れたような赤色である。
それ以外は、必要以上に条件のいい相手を、見つけてきた。
無駄な詮索をせず、黙って、キッドの側にいる。どこまでの事情を知っているのか把握は出来ていないが、この様子を見る限り、何も知らされていないと、ビリーは見えた。
それでも、テリーは何も言わずに、キッドの婚約者を続けている。
きっと、何か、弱みを握られたか、脅されているのか、理由は何であれ、キッドの悪い部分が見えている唯一の人物であることに変わりはない。
そのテリーが、キッドを不快そうに見上げて、唇を尖らせた。
「今の時期はバレンタインまでイベントが何も無いから、みんな暇なのよ。仲良しの女の子を誘ってどこかに遊びに行けばいいわ。ほら、離せ。クソガキ」
「うん。だから誘ってるんだ。テリー、俺と出掛けよう」
「呆れる……。11歳のいたいけな少女をデートに誘う15歳がどこにいるってのよ……」
「ここにいるだろ? それに、テリー、愛に年齢は関係ないのさ!」
「あのね、20歳を超えてからなら、いくらだって言えるのよ。そういうこと。でもね、ほら、見て。あたし、まだ11歳なのよ。子供なのよ! 赤ちゃん同然なのよ! 色気も何も感じないでしょう!?」
「何言ってるの? お前みたいなベビーちゃんに、色気なんて10年早いよ」
テリーが、かちんと頭をいらつかせた。
「だから! だったら! 誘うな!!」
「嫌だね!! 誘うよ!! 誘いまくるよ!!」
そう言って、テリーの手をあえて取る。
「行こうよ。俺のプリンセス。優しくリードしてあげるからさ?」
「離せ。気持ち悪い。この嘘つき。よくもそれで女の子にモテるわね。本当に信じられない」
「ねえ、テリー? なんでそんなこと言うの? 婚約者でしょ?」
婚約者、と言葉を使えば、テリーが言葉を詰まらせる。ぐっと体を縮こませ、じっとキッドを睨み、キッドは勝利の確信をもった目で、テリーを見下ろしている。
「婚約者のお願いを聞いてくれないの? テリー?」
「……」
しばらく、お互いがお互いの目線で、攻撃し合い、にらみ合い、――いつもの如く、テリーが折れた。
「……ついて来るだけよ」
「ああ、もちろん」
「支度して」
「じいや、出かけてくる!」
ようやくテリーを放す。テリーが立ち上がり、コートの皺を手で伸ばし、長い髪を払う。
「……悪魔め」
じろりと睨み、ぼそりと呟いたのを、ビリーは見逃さなかった。だが、そう言うのも、キッドと関わる者でテリーだけだ。
婚約者だからこそ、キッドとわかり合えるところがあるのかもしれない。少なくとも、害はないはずだ。……もう少し見守ってみようか。
そんな思いを心に秘めながら、ビリーはカップを片づけ始めた。
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