10.




「ぱんぱかぱーん、結果発表ぅ。今年の再検査は五十八人でしたー! 全体の、んー……六分の一を切っている! なんと珍しい!」

 貴重な電動式機械は検査中に片づけられ年代物のマイクの代わりに〈拡声器〉魔法を使って司会者が話す。余計な物音は消えハウリングも起こらない予定調和のなか、会場はどよめいていた。世界一難関な入学試験をパスし入学の煩雑な手続きも済ませ持ち物、提出物、ルール、期日なども厳しくチェックされやっとのおもいで国立学園の校門をくぐった歴戦の猛者たちが、たかが荷物検査ごときで六分の一も引っかかったという。司会者は式中とは打って変わったニヒルな物言いで〈拡声器〉に言葉を流した。

「毎年八十人くらいは再検査になるんですよねェ。だって君たち、バレるとおもってなかっしょ? 装置の検査でコードを全文読む奴なんか普通はいない。今までの学校生活でも、検査のときは先生がシリアルナンバーでいちいち製造元へ『個人情報開示してくださ~い』って公用請求をして、数日がかりで照合してたんだろうから、賢い君たちはナンバーをちょいっと細工したり装置にハッキングしたりして期限や対象者を誤魔化してきた。バレたの、生まれて初めての人もいるんじゃないかな? いやぁー同情するよ」

 少年といっていいくらいの年頃に見える司会者は、人好きのする笑顔を浮かべて陽気に喋る。喋り続ける。会場は若干殺気立っている。新入生はおおかた成人済みだし、今まで地元で神童だ天才だとちやほやされて国立に受かってきたのに、あんな少年に小馬鹿にされるのは我慢ならないのかもしれない。しかし彼は最上級生つまり五年生の首席だ。司会は毎回成績優秀者が受け持つならわしになっていて、何故なら司会をしていると目立つからだ、国唯一の国立学園には、式典のたびにそれなりの来賓客が出席するのだ。

「今回検査してくださった十名は我が学園が誇る『教官』方だよ。有名だからもちろん知ってるよね。助手、助教、講師、准教授、教授、その上の教官。我が学園特有のアレです。あまり直々教鞭をとっていただく機会はないけど、教官方は学園で研究したり眠ったり王宮関連の仕事したりオンラインゲームをしたり散歩したり――」

「ファウザード! いい加減にしろよ!」

 体育会系の教官に笑いながら言われ司会者は肩をすくめた。

「……っということで、今の検査みたいにすれ違いざま一瞬で装置の魔法陣を読み解かれちゃうとやばい学生たちは、早急に対策しましょう。教官って揃いも揃ってよく散歩するよ。なんでかなぁ? ま、次からはバレたら成績に反映されます。特に学則装置ね。小学校でつけさせられる子ども向け装置だしさぁ、気持ちは分かるけどつけてね! 上級生から見たら一年なんて子どもだもん! 簡易シールド(笑) 持ってたほうがいいよ(笑)」

 戦闘科あたりの席が殺気すごいことになっている。構わず司会者は端末から巨大な学内地図を映しだした。よく喋る少年だった。事務棟を拡大して早口に説明する。もうほとんど誰も聞いていなくてそれぞれに近くの席の人たちと出身地の自慢やグリクトの思い出話などに花を咲かせ始めた……。地図が拡大される。事務棟二階保健課、学則以下の義務装置の貸しだしや修理。処方装置の登録。処方。一階庶務課、国内法装置と国際法装置は役所へ行かなくても庶務課で交付してもらえる。届くまで役所より数日時間がかかり一週間程度。国際法違反一ヶ月以上は魔法管理局に通報されるので期日に余裕を持つこと。その他補助装置のショップは商店街でどうぞ。装置について何処へ行くか迷ったら庶務課へ……。――そして検査もお開きとなった。

「歓迎パーティーは大ホールで午後五時からやります。服装自由。持ち物なし。酒もあります。あ、未成年は酒だめだけど。飲む人は学生証持ってきてください。持ち物あんじゃんって感じっすねぇ。じゃあホールで会おう!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます