第56話





 二つのものを一つのものに一体化させることが出来る能力。

 それだけ聞くと非戦闘向きの能力のように思われるが、しかし それは使いようだ。

 このように手榴弾を一体化させれば、対象物の強度に関係なく破壊することが可能であり、他にも骨折した骨を一体化させれば応急処置は可能であり、あるいは火傷などを人口皮膚を一体化させれば傷口を塞ぐこともできる。また、建物や壁と一体化すれば障害物に関係なく侵入・脱出が可能となる。

 シンプルだが、だからこそ価値があると黄太郎は自負している。

 余談だが、鉄雅音は自分の能力が ここまで応用性の高いものだとは思っていなかった。

 応用性の高さは黄太郎の思考の柔軟性によるところが大きい。


「さて、これでゴーレムは無力化したかな?」

『みたいだね』


 黄太郎の言葉に鉄雅音が答える。

 と、そのタイミングで崩れたゴーレムの瓦礫に身を潜めていたスライムが黄太郎を急襲しようとするが――。


「テーラー、『ろ‐2』」


 黄太郎が“朝顔”を発動してスライムを結界で覆う。

 頑強な結界に包まれたスライムは身動きが取れずにグネグネと体を変形させるが、強度の高い“朝顔”からは易々と逃れることはできない。


「貴様――ッ!!」

「安心してください。アンタも忘れてませんよ」


 傷口を抑えながらも襲い掛かろうとした悪魔騎士に対し、黄太郎は釘を弾き飛ばして騎士の爪先と地面を縫い付け、一体化させる。

 


「うおおお!?」


 そのまま地面に沈み込み、上半身だけを浮き上がらせた悪魔騎士に対し、黄太郎は更に“朝顔”を張ることで完全に動きを封じた。


「とりあえず これだけか。……他に罠はなさそうだな。急ぎましょう、二人とも!!」

「え? あ、ああ!!」

「は、はい! 急ぐのです!!」


 黄太郎に促され、武器を構えたまま固まっていたメアジストとアザレアも慌てて駆け出した。

 まだ敵をすべて倒したわけではないのだ。

 とはいえ、気になるものは気になる。

 走りながら、メアジストは黄太郎に尋ねた。


「君のさっきのは……何だ? 何をした?」

「さっきの? ああ、そっか。手榴弾ってこの世界にないんですね。要は爆発物をゴーレムと一体化させることで、。と言っても爆発力は元の爆薬の量に依存するので、手榴弾一つ分なら身体の内側が爆発して崩れるくらいですね」

「いや、それでも十分に強力だと思うのだが。……他にも色々と体内に隠し持っているだろう? 一体何を持っているんだ?」

「企業秘密です」

「……また隠し事か」

「そりゃ、お互いにまだ信用しきってませんからね。……それと、これからは無駄口を叩いてる暇はないと思いますよ。……なんだか嫌な予感がします」


 黄太郎の言葉通り、彼らの進む先には何やら嫌な空気が漂っている。

 単なる林に囲まれた貯水池、という何処にでもあるような場所のはずだが、今だけは何やら不気味な空気を感じる。


「ああ、分かっているさ。……お前も用心しろよ」

「もちろん」


 そう話しているうちに林を抜け、目的地である貯水池に辿り着いた。 

 一見すると、何の変哲もないように見えるが、しかし黄太郎は何か嫌なものを感じ取った。


「二人とも!! 俺の後ろに!! テーラー、『ろ‐2』!!」


 その言葉を受けてメアジストとアザレアは黄太郎の背後に回って姿勢を低くし、黄太郎は自分の正面に結界を張って身を守った。

 ――その直後、貯水池の水が爆発した。

 水の中から強大な魔法を放ったことで、貯水池の全ての水が吹き飛ばされたのだ。

 飛び散った泥水が周囲を汚すが、それだけでなく高速で弾き飛ばされた石礫が木の幹に突き刺さっている。

 あのまま突っ立っていればかなりグロテスクなことになっていただろう。


「……そう言えば、名を名乗っていなかったな」


 かつて水底だった場所には、そう語る一つの影があった。


「何をカッコつけてんですか。アンタのせいでこっちは危うくスーツが汚れるところだったんですが?」

「ふははは!! 貴様こそ恰好つけたことを言うではないか!!」


 水蒸気を風の魔法で打ち払い、姿を現したのは先ほどの悪魔だった。

 しかし、彼の胸部には黒い結晶が埋め込まれ、まるで生きているかのように脈打っている。

 いや、それだけではない。

 黄太郎に折られたはずの右肘も、アザレアにやられた肩の傷も既に治っている。


「吾輩は『角の魔王』配下のブロックチェック・ネイビー。貴様らを打ち滅ぼすものだ」







 

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