第903話 パパと娘ー2!
「それで、モクレンやヒイラギに報告できるようなことは纏めてあるのか?」
俺は親切心から、エリーヌに質問をする。
「あー、タクト。モクレン様や、ヒイラギ様を呼び捨てしている‼」
「……好きで呼び捨てにしているわけじゃないぞ。こうなった原因は、そもそもお前だろうが‼」
「……あっ、そうか! ゴメン、ゴメン」
悪びれる様子も無く、軽い感じで謝罪を口にする。
「まぁ、何とかなるんじゃないの。私、優秀だしね!」
「……優秀ね」
「タクト、疑っているでしょう⁈」
「当り前だ。ポンコツが、どうしたら優秀になるのか信じられないし、もしそんな農法があるのなら、俺が知りたいからな」
「もう‼」
自分の優秀さを否定する俺に、エリーヌは不快感を露わにする。
「私の評価が上がれば、タクトの評価だって上がるんだからね‼」
「いやいや逆だろう。俺の評価が上がるから、エリーヌの評価が上がるんだろう?」
「そっ、そうとも言うわね」
……いや、そうとしか言わないだろう。
こいつの頭の中は一体、どうなっているんだ?
話が噛み合わないので、この話題を終えることにした。
「もう一度、言うけど……問題行動だけは起こすなよ」
「失礼ね。私は優秀なんだから、問題行動なんて、起こす訳ないでしょう‼」
「……頼むぞ」
「分かっているわよ‼」
失礼なことを言われた! と、かなり御立腹だった。
「それなら、私も言わせてもらうけど、タクトはママは勿体ないんだからね!」
「おいおい」
完全に感情的に、そして攻撃的に俺に言葉をぶつけてきた。
「なんで、ママのような人がタクトを選んだのか、神の私でも不思議だよ」
「お前、失礼過ぎるだろう」
「ふん! 私に対する無礼な発言よりマシだよ!」
俺への口撃が止まらない。
それよりも、ユキノのことを自然に”ママ”と呼んでいることに驚きだった。
それだけ、ユキノとの関係が成立しているのだろう。
俺自身、ユキノとエリーヌの疑似親子関係も悪くないとさえ、感じていた。
ただ、俺を”パパ”と呼ぶたびに、悪そうな顔をするエリーヌに、イラッとしていた。
「私が担当神として、エリート街道を歩めるように協力するのが、タクトの役目なんだからね」
「それを言うなら、役目じゃなくて役割だろう?」
「細かいことを気にしていると、ママに愛想着かされるよ」
「……」
本当に失礼だと思いながらも、ユキノとエリーヌの二人から意見を言われると、反論できない……な。と、想像する。
「ママを泣かせるようなことをしたら、私が許さないからね‼」
「……なんで、お前にそれを言われるんだ?」
「そんなこと決まっているじゃない。私はママの娘だからよ!」
「……いや、お前は俺とユキノの娘じゃないだろう」
「違うよ。ママは私のことを娘って言ってくれたもん」
ユキノの名を出せば、俺が何も言えないと分かっている。
それを免罪符にして、俺になんでも言えるとでも思っているのだろう。
「私は
……娘なら、もう少し父親である俺を敬え! と思ったが、面倒なので言い返すことを止める。
「でも……あんなに優しいママが、あと数年の命だなんて――」
エリーヌは俺にしか聞こえない小さな声で呟いた。
誰かに聞かれる可能性もあるので、気を使ってくれたのだろう。
「寿命なんて神の匙加減なんだろう?」
「違うよ!」
エリーヌは叫ぶ。
「たしかに生まれる前に、ある程度の寿命は振り分けられるし、それは生物によって違うけど……その後の寿命は、生まれた後での生活で変わるんだもん!」
自分がユキノの寿命を決めたと思ったのか、怒りながら俺に反論する。
「それに……ママは一度、冥界に行ってるし――」
ユキノの寿命は、自分のせいではないと、俺に必死で説明をする。
うっすらと目に涙を浮かべていた。
ここまで、エリーヌがムキになるとは思っていなかった。
「私だって――」
エリーヌは、そう言うと黙ってしまった。
「悪い……言い過ぎた」
「いいよ。タクトの気持ちも分かるから……」
気まずい雰囲気が流れる。
エリーヌなりに、ユキノのことを気に掛けていたのだろう。
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