第895話 シーランディアでの戦闘ー7!
エクシズに戻った俺は、覚悟を決めていた。
まず、蜂人族相手に向かって行く。
蜂人族と蟻人族は、俺が女王を倒しに行くと思っているのか、女王の側を離れようとしなかった。
俺は素早く移動しながら、敵を翻弄する。
そして【分身】を使い、さらに混乱させていた。
攻撃をする訳でも無く、ひたすら移動の身をくり返した。
女王たちも俺が何をしたいのか分からないが、守備をしないといけないことだけは分かっているようで、複眼で俺の動きを追いながら俺への攻撃を狙っていた。
俺の作戦は、ひたすら動き【転移】できる場所を増やすことと、女王と蜂人族や蟻人族に触れて【転送】を可能にすることだった。
体に触れさえすれば、あとは距離を取りながら俺の所に引き寄せて殺せばいい。
俺の分身が女王の体に触れる。と、同時に蟻人族から攻撃をもらうが
蟻人族に触れることに成功した。
その瞬間、別の分身が蜂人族に触れることにも成功する。
俺は【分身】を解く。
「逃げ回っているようにも思えたのじゃが、お主は何をしておったのじゃ?」
「今に分かるよ」
俺は【転送】で女王を手元に引き寄せる。
後ろにいる筈の女王が、敵である俺の目の前に現れたことで、蜂人族と蟻人族が驚き、自分たちの背後を確認した。
(恨むなら恨んでくれていい。ただ次、生まれ変わったら……神たちの提案を受け入れてくれ)
【念話】で女王に話すが、女王は聞く耳を持たずに、鋭い手で俺に攻撃をする。
俺はそれを躱して、蜂人族の背後に回り羽根と手足を【一刀両断】を使った手刀で切る。
芋虫のように転がる蜂人族。
これで蜂人族は何もできない。
すぐに蟻人族へ体の上下を分断させようと、【風刃】を連射した。
目の前で倒れる蜂人族と蟻人族を見た女王は、発狂したかのように叫び声を上げて、俺に向かってきた。
攻撃力でいえば、女王はそれほど高くない。
先程まで相手にしていた兵隊蟻のような奴の方が強いだろう。
苦しまないように向かってくる女王に向かって【風刃】を使い頭と胴体を幾つもに切り刻んだ。
屍になった女王を見て、地面に転がっている蜂人族が叫んでいたが、蜂人族の体を女王と同じように切り刻んだ。
俺は【魔力探知地図】を見ながら、クロとシロに連絡を取り、全ての蜂人族と蟻人族を殺したことを確認した。
「終わったようじゃの」
「あぁ、ネロはまだ、蜂人族の巣か?」
「そうみたいじゃの」
「外で待っていると伝えてくれるか?」
「分かったのじゃ」
俺とアルは【転移】で外に出る。
俺たちの姿を発見したシロとクロとも合流する。
シロに、この島を燃やし尽くすように頼む。
上空から俺も【炎壁】や【炎弾】などで島を火の海に変える。
熱に弱いウィルスなどを一層する意味もあるのだろう。
しかし、俺の【浄化】があれば、このような火の海にする必要はない。
やはり、この島の生態系を一から作り直そうとしているのだろう。
その間も【魔力探知地図】を見ながら確認をしていた。
すると、今まで反応のなかった場所で、次々とマークが表示された。
「どういうことだ⁈」
俺は思わず叫ぶ。
しかし、一気に増えた原因がネロによって明らかとなった。
俺の目の前に現れたネロは手に白い楕円形のものを持っていた。
「一杯あったので、持って来たの~」
ネロの手にあったのは卵だった!
孵化の時期だったのか、島を燃やす熱の影響で孵化したのかは定かではないが、一気に孵化したことには間違いない。
「ネロ。それは多分、蜂人族の卵だ」
「えぇ~、面白くないの~」
ネロは手から卵を離す。
卵は火の海へと飲み込まれていった――。
孵化した蟻人族と蜂人族も徐々に息絶えて行っているのか、マークの数が減っていっていた。
俺は確認も含めて、マークのあった場所へと移動をした。
そこには、おびただしい数の卵があった。
孵化していない卵もある。
俺の【魔力探知地図】に表示されるのは、孵化した状態だけのようだ。
これでは全滅したかが分からないと思っていると、今まで表示されていなかったマークが増えた。
多分、エリーヌが手を加えたのだろう。
俺は、そのマークが消えるまで、全ての場所を回った。
この世界を見ることなく、死んでいく卵たちを目の前にして申し訳ないと思っていた。
そして、今度こそ全てのマークが消えた。
俺にとって、気分の良い戦いとは言えなかった。
――とりあえず、これで終わりだ。
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