第858話 お手伝いー1!
休憩場所に行くと、作業員たちが談笑していた。
「改めて自己紹介をする――」
コンテツの職業は
使っている剣が軽いものでなく、普通よりも重そうな剣を腰から、ぶら下げている。
このトゥラァジャ村には、正式なクエストとして訪れているそうだ。
クエストと言っても、報酬は少なく重労働だ。
どちらかといえば、ボランティアの意味合いが強いと説明をしてくれた。
「それで、ランクSSSの冒険者タクトが、セイランと一緒とは、なんの用だ?」
俺の名前が出ると、周囲がざわつく。
「俺は付き添いだ」
「……付き添い?」
「えぇ、そうよ。シキブさんが、故郷に戻っているのよ。いい機会だから、父さんや母さんたちも兄貴やシキブさんと会わないかな? と思ったの」
「そりゃぁ、シキブさんには会いたいわよ。でも、ここから行くとしても、かなりかかるわよ」
「そうだ。それに、ここでの作業も終わっていないしな」
確かにコンテツの言うとおりだ。
受けたクエストが終わっていないのに、途中で投げ出すことはできないだろう。
「横から悪いが、ここでの作業は何処まで終わればいいんだ?」
「一応、瓦礫の撤去と焼却までだ。地面の整備は含まれていない」
トゥラァジャ村のものを全て残さないようだ。
仮にトゥラァジャ村出身者が、村に戻って来たとしても、ここは自分の知っている村ではなくなっている。
思い出を感じることはない――。
生半可に放っておくと、盗賊の根城にされたり、魔物たちが寄ってきたりする可能性が高いからこそ、こういった決断をするのだろう。
「……俺も手伝っていいか?」
「手伝ってくれるのは有り難いが、報酬は出ないぞ?」
「あぁ、別に気にしていない。俺がガルプの戦略を読みきれなかったため、今回のようなことが起きてしまった。すまないと思っている」
「いや、それはお前が気にすることじゃ――」
コンテツの言おうとすることは、なんとなく分かっていた。
紅月の影響によるものだ。
しかし、
俺への恨みがなければ、
もちろん、被害の状況も変わっていただろう。
「どうぞ」
兎人族の女性が、俺たちに飲み物を持ってきてくれた。
「ありがとう」
俺は彼女に礼を言う。
「ありがとうね、キャエット」
「いえいえ」
兎人族の女性はキャエットというらしい。
偶然だろうが、どことなく人参を示す英語のキャロットと名前が似ているのは、兎人族だからかと思った。
「私たちは、そろそろ仕事に戻りますね」
「俺たちも、作業に戻るつもりだ」
「でも、お客様が……」
キャエットは俺のほうを見る。
「あぁ、俺も手伝うから気にしなくていい」
「そうですか、分かりました」
俺たちはキャエットに出された飲み物を一気に飲み干して、立ち上がった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「それで、俺は何をすればいい?」
「何ができる?」
「……言われたことは、だいたいできると思うが――」
「そうだな――」
コンテツは俺に、家屋の廃材を一か所に集めて欲しいと頼む。
「それだけで、いいのか?」
「……そんな簡単に終わらないぞ?」
「まぁ、少しだけ俺一人でやらせてもらってもいいか?」
「それは構わないが……」
コンテンツは、他の作業員たちと俺の作業を少しだけ見学してもらうことを伝える。
なぜか、俺の作業に興味津々の作業員たち。
作業員とはいえ、冒険者だからランクSSSの俺が、どのような作業をするのか気になるのだろう。
「この辺りに散らばっているものを、あそこに集めればいいんだな?」
「あぁ、そうだ」
「じゃあ、やるとするか!」
俺は転がっている廃材を集積場所へと投げる。
遺品になりそうなものは一応、仕分けしておく。
終われば、移動して同じ作業をくり返した。
集積場に近い場所から作業をしたので、徐々に範囲は広がっていく。
俺が、集積場へ廃材を的確に投げることに、見学していたコンテツたちは驚いていた。
外すことはない。なぜなら、【命中率自動補正】のスキルがあるので、俺の思った通りの所に飛んでいくのだ。
【転送】を使おうとも考えたが、一度触れたものでないと、スキルは発動できない。
不特定多数の廃材などでは、効率が悪い。
俺は、淡々と作業をこなしていた――。
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