第792話 王都襲撃-14!

 ガルプは強かった――。

 俺のスキルは殆ど通用せず、ガルプは肉体の頑丈さとスキルを多用することで、俺はかなり劣勢だった。


「先程までの大口はどうした?」

「まだ、本気じゃないからな!」


 俺は強がってみせる。


「ほぉ、では本気を見せてもらおうか!」


 ガルプが一瞬、目の前から消えると腹部に痛みが走る。

 辛うじて見ると、腹部が無くなっていた。


「なるほど。これは殺しても殺せないという訳だな」


 ガルプは、楽しそうに俺の体を破壊していく。

 激痛に気が狂いそうになりながらも、必死で意識を保つ。


「そこまでじゃ!」


 アルがガルプに攻撃を仕掛ける。


「おやおや、助っ人ですか?」

「タクトよ。手を出させてもらうぞ」


 俺が返事をする間もなく、アルはガルプと戦い始めた。


「最古の魔王とはいえ、お前も俺の作品だと忘れていないか‼」

「自惚れるな。一度たりとも、お主に感謝などしたことは無い」

「相変わらず、反抗的な態度だな」


 ガルプの攻撃が、アルの顔面を捉える。


「最強と恐れられる魔王も、こんなものですか⁉」


 不満そうにガルプは話す。


「お前の相手は俺だろう!」


 俺はガルプの背後に回り、近距離から【雷撃】を打ち込む。


「……こんなものですか?」


 【雷撃】が効いていないのか、体の向きを変えて反撃をしてくる。


「――っ!」


 一旦、距離を取るが、ガルプを攻略する糸口が見つけ出せない。

 空中戦だから不利だという訳でも無い……。


「アルシオーネが暇そうなので、相手でも作ってあげるか」


 ガルプは影からアンデッドや魔物を召喚した。

 その数は、先程よりも断然多い……。


「プルガリスの奴も出し惜しみせずに、全て使えばいいものを……本当に使えない奴だ」


 俺は咄嗟にアルの方を見る。

 アルは何も言わずに頷いた。


「まぁ、アルシオーネに掛かれば一瞬だろうが、暇つぶしにはなるだろう。それよりも……」

「俺では相手として不足か?」

「まさか、面白い遊び相手だ」


 俺は【鑑定眼】でガルプを見る。

 全て見ることは出来なかった。

 おそらくプルガリスのステータスと干渉しているからだろう。

 しかし、ユニークスキル【転魂てんこん】【肉体超強化】があることは分かった。


「ほぉ、俺を鑑定したのか。それで、どうするつもりだ?」


 俺は【肉体超強化】を理解したので、スキル値を振り習得する。

 そして【転魂】。言葉からして、魂を移すスキルだと思うが、習得出来ていない。


「俺のステータスに驚いて、何も言えないのか?」


 言い終わらないうちに俺に拳を打ち込んだ。

 しかし、【肉体超強化】で先程以上に、防御力が上がった為、ダメージは殆ど無くなった。


「……どういうことだ?」


 警戒したガルプは距離を取る。


「この短期間に進化したのか?」


 ガルプの問いに俺は答えることは無く、有効な攻撃は何かを確認する。

 しかし、俺は背後に懐かしい気配を感じる。


「……何故、お前が此処にいるんだ」


 俺より先にガルプが口を開く。


「ごめんなの~、遅くなったの~」

「ネロ!」


 ネロが俺の隣に来る。


「セフィーロとの戦いは……勝ったのか?」

「引き分けにしておいたわ」


 背後からセフィーロが返事をする。


「……お前にはガルプスリーが、足止めを依頼したはずだろう」

「えぇ、だからプルガリスとの戦いまでの足止めはしたわ。貴方はガルプスリーでもプルガリスでも無いのでしょう」

「……所詮は失敗作の吸血鬼か!」

「えぇ、そうよ。貴方たち神の作り出した失敗作よ」


 セフィーロは殺気の交じった言葉で返す。


「まぁ、私とネロは戦っていなかったけどね」

「そうなのか?」

「えぇ、助けに行くネロを説得していただけよ」

「そうなの~。お母様がまだ、行っては駄目って言うから喧嘩しただけなの~」

「そういうことか……セフィーロは、こうなると読んでいたのか?」

「まぁ、そうなるかしら。貴方なら、出来ると半分くらいは期待していたわよ」

「半分ね……」


 とりあえず、こちらの戦力は増えた。

 それだけでも有難い。


「ガルプ。貴方が私たちを此処に来させたくなかったのは、私たちが自分と相性が悪いからでしょう?」

「何のことだ?」

「プルガリスは、ネロをこの戦いに参加させないことを条件に、私の出生の秘密を教えると言ったわ」

「それが、どうした?」

「私はプルガリスいえ、ガルプスリーが来る前からこの世界に居た。そう、貴方の前任者の時代からね」


 ガルプの前任者時代から……。

 確かに、ガルプに前任者がいても、おかしくはない。


「だから、それがどうした⁉」

「つまり、私の出生の秘密を知っているのであれば、貴方か前任者になるのよ。今迄、無関心だったのに急に話を持ち出すのは変だと思っただけよ」


 確かに何百年いや、何千年と生きて来たのに今迄、何も音沙汰が無かったのに急に、話を持ち掛けられること自体、不自然だ。

 それにガルプや、その前任者の神は勿論だが、その上の中級神や、上級神だってこの世界のことを知らない筈はない。

 つまり、神としてセフィーロの存在を認めて放置していたことになる。

 セフィーロは、中級神や上級神の存在を知らないので、そこまで深く追及は出来ないのだろう。


「ふっ! それは、お前が不要になったからだろう」

「そうかもね。新しい実験体を見つけたという訳ね」


 セフィーロは言いながら、俺を見ていた。


「低次元の話に付き合うつもりは無い。それに、お前たちはここで死ぬから問題無いだろう」

「不死の私に向かって、死ぬと! 面白い冗談ね」

「不死のお前が死ねるんだから、感謝して貰いたいものだがな」

「思い上がりもいい加減にしなさいよ」


 怒りを抑えきれないセフィーロは、ガルプへと向かっていく。

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