第785話 王都襲撃-7!
「なぜ、エビルドラゴンがいる!」
「さっきも言ったでしょうが。事前準備ですよ」
自分の思惑通りにことが運ぶことに満足しているかのように、嬉しそうな口調で答える。
影の中にいたのであれば、アルが必死で探しても見つからない筈だ。
しかし、アルであればエビルドラゴンの気配に気付くはずだ。
必ず、この場に来ると信じている。
「そのエビルドラゴンが、お前の切り札か⁉」
「さぁ、どうですかね」
相変わらず不敵な笑みを崩さずにいる。
「もう、これ以上の諜報活動は不要ですし、回収しますか」
プルガリスは何か呟くと、両隣に人族が二人現れた。
気を失っているようだが、俺は二人を知っている。
右側にいるのは、オーフェン帝国の鑑定士コルサ。
そして、左側にいるのは……エルドラード王国護衛衆の一人、王宮鑑定士のターセルだ。
王宮で国王であるルーカスの側にいたのであれば、俺の【結界】の効果があるはずだ。
ターセルは魔族では無い……。
俺のスキル【転送】に似たスキルを使ったのだと推測する。
「いいですね。その驚きの表情は!」
「……二人とも、お前の仲間だったという訳か⁉」
「私は優しいので、特別に教えてあげましょう。何故、この二人が通常よりも鑑定能力に優れていたか、疑問に思った事はありませんか?」
確かにターセルの鑑定能力は優れていたが、スキルのせいだと納得していた部分はある。
「私が力を与えていたからですよ」
「……」
「まぁ、二人とも私に力を貰っていた事など知りませんけどね。私は鑑定した内容を、自動的に認識していましたがね」
二人とも、プルガリスの仲間だという認識が無かったようだ。
「まぁ、色々な情報が手に入って、面白かったですがね」
どうやって、鑑定能力を上げていたかや、一方的に情報を得ていた事などは気になったが、今はそれどころではない。
「おっと、お客様のようですね」
プルガリスが俺の横に目線を移す。
「どういうことじゃ……」
「アルか。プルガリスがエビルドラゴンを解放して、影の中に閉じ込めていたようだ」
「そういうことか……どれだけ探しても、見つからんわけじゃ」
アルは俺との会話中もエビルドラゴンから目線を外さなかった。
冷静を取り繕ってはいるが、言葉から怒りが滲み出ていた。
「それと、お主に伝言がある」
「なんだ?」
「ネロは、こちらには来れん。母親と戦っておる」
「セフィーロとネロがか! なんでだ⁉」
「妾も詳しい事情は分からぬが、エビルドラゴンの気配を感じて、ネロから連絡を貰ったが、セフィーロがこちらに来るネロを妨害しているらしい」
「何故、セフィーロが……」
俺は考えようとすると、プルガリスの顔に目がいく。
「……お前の仕業か⁉」
「えぇ、そうですよ。今回の戦いには吸血鬼族には辞退して貰いましたからね」
「事前交渉したということか」
「その通りです。セフィーロ殿には、それなりの情報を提供しましたからね」
遠く離れた地で、親子喧嘩しているとは考えもしなかった。
死ぬことは無いが、ネロがセフィーロに対して、どこまで戦えるか……。
「さてと――」
プルガリスは一言喋ると、ターセルとコルサの首を刎ねた。
「彼らは用済みですからね」
嬉しそうに笑うと、二人の死体は地面に叩きつけられた。
助ける間もないくらいに、プルガリスの動きは早かった。
「うぉぉぉぉぉぉ――‼」
エビルドラゴンの咆哮が響く。
「さて、戦闘再開しましょうか」
「忘れるな、お前の相手は俺だ」
「勿論ですよ」
俺とプルガリスは、お互いに目線を合わせる。
「アル。エビルドラゴン……いや、先代グランニールとの約束は守ってやれよ」
「……分かっておる。手出し無用じゃ」
エビルドラゴンは再度、咆哮を上げて飛び立つと、上空から王都に向けて炎を吐く。
それに反応するかのように、アルがエビルドラゴンと王都の間に移動して、
炎の軌道を逸らして阻止した。
「こやつの相手は、任せておけ。お主は、あやつの相手に専念しろ」
「分かった」
俺はアルと、お互いの健闘をいの
「主。戻りました」
クロがシロの治療を終えて、戻って来た。
「大丈夫なのか?」
「はい。同族の不始末は、同族が取らねばなりません」
クロなりに決意があるようだ。
「死ぬことは俺が許さないからな」
「承知致しました」
クロが死ぬ覚悟を決めていたのであれば、それを許すつもりは無いので言葉に出す。
誰一人、これ以上死なせるわけにはいかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます