第784話 王都襲撃-6!
「……タクト殿、先程の声は一体――」
「全て本当のことだ。ゴブリンロードとオークロードを倒したことで、魔族から恐怖の対象となったことで、魔王になった」
「そんな……」
ソディックは、オークロード討伐には一緒だった。
当時の記憶を思い返しているのだろう。
当然、俺との記憶が欠落しているので、どのような記憶になっているか、俺には分からない。
暫く黙っていたが、諦めたのか新たな質問をしてきた。
「その、ユキノ様を生き返らしたというのは――」
「……」
俺は回答するか悩んだ末、正直に答えることにした。
「あぁ、その代償で俺との記憶が消えることになった。俺の記憶より、一国の王女の命の方が価値があるだろう」
「それは……」
例え、そうだと思っても声に出しては言えないのだと思った。
「騎士団団長であれば、即答すべきだろう」
「それは、それですが……」
ソディックは複雑な表情を浮かべていた。
「俺が勝手にしたことだ。誰も気にする必要はない」
ソディックは目を伏せて、何も言わなくなった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――俺は残った魔物を討伐していた。
討伐しながらも、クロや精霊たちがプルガリスを、早く発見してくれるように祈っていた。
「ぐわぁぁぁぁ‼」
ノッチが起こした地面の亀裂から、傷だらけのクロが姿を現す。
もう一人の異形な姿をした人型の者と戦っている。
ミズチやアリエルにノッチの姿もある。
「あれがプルガリスよ。あなたの従者が影から引っ張り出してくれたおかげで、随分と楽が出来たわ」
ミズチが簡潔に経緯を話してくれた。
「あとは、お前の仕事だぞ!」
「分かっている」
俺はクロの元へと向かう。
「久しぶりというべきか?」
傷付いているプルガリスに、怒りを込めて話す。
「はぁ、はぁ――そうですね」
かなり疲労している。
しかし、それ以上にクロも傷付いていた。
「クロ、ありがとうな。シロに治療して貰って、休んでいてくれ」
「しかし――」
「俺の期待以上の働きをしてくれたんだ……頼む」
「……分かりました。ピンクー、主のことを頼みましたよ」
「はい、クロ兄‼」
「では、主。御武運を」
クロが影の中に消える。
「さぁ、決着をつけようか⁉」
「はぁ、はぁ、余裕ですね。これで私を追い詰めた気ですか?」
「いいや、簡単には倒される気は無いんだろ?」
「勿論ですよ。まぁ、私は臆病ですから、すぐに逃げますがね」
「逃がすつもりはないがな」
「ふふふっ、ワン兄さんが私の領域に入り込むことが出来るのも、あなたの影響のようですね。それに――」
プルガリスの目線は、俺の後ろにいるミズチたち精霊に向けられていた。
精霊たちの力が、思ったよりも厄介なようだ。
アンデッドを倒した事も影響しているのだろう。
「アンデッドをあてにしているのであれば、無駄だぞ。それに、第三柱魔王のロッソが、それを許さないだろう」
「ロッソ? ……あぁ、そんな魔王もいましたね。彼のことですか?」
プルガリスが影に手を入れると、頭蓋骨が出て来た。
「何を言うかと思えば……ロッソがお前如きに倒される訳が無いだろう」
「……あぁ、なるほど。私が嘘を言っていると思っているのですね」
プルガリスは不敵な笑みを浮かべる。
「彼女に証言してもらいましょうか」
プルガリスは別の影から、首を一つ出す。
俺はその首を知っていた。ロッソの所に居たデュラハンのエテルナだ。
「エテルナ‼」
俺の声に反応するように、エテルナが目を覚ます。
「すまない。私のせいで、ロッソ様が……」
「何を言っている。ロッソは不死身だろう!」
ロッソのステータスを覗いたことは無いが、アルやネロたちと同じ【不死(条件付)】を持っていると思っていた。
「そうですよ。以前までは確かに不死でしたよ」
「以前までだと!」
「……あなたが知らない? それは演技ですか?」
「何を言っている」
「成程、本当に知らないようですね。ガルプ様を追いやった神の使徒が知らないとは驚きですね」
プルガリスと会話が噛み合わない。
一体、なんのことを言っているのだ……。
「お前たちがガルプ様の存在を消した為、不死の条件が無くなったということだ。不死で無いロッソなど、私の敵ではない」
「何を言っている、この卑怯者‼ 私を人質にしてロッソ様に手を出させなかったくせに!」
「それは戦略というものです。戦いは戦う前から始まっているのですよ」
エテルナは自責の念からか、涙を流して叫ぶ。
少ししか交流が無かったが、ロッソは優しい人物だった。
エテルナが人質になれば、プルガリスの指示に従ったことも想像出来た。
「そろそろ、お喋りはこれくらいにして、戦いを再開しましょうか。と、言っても数で言えば、私の方が不利ですね……仕方ありません。切り札を出しましょうかね」
プルガリスがは影から幾つかの魔物を再度、出現させた。
……これが切り札? と思った俺は、最後に出現した魔物を見て驚く。
以前に見たドラゴン……エビルドラゴンが姿を現した。
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