第780話 王都襲撃-2!

 ――数分後。

 竜巻が消えると同時に魔物の姿も消えていた。

 粉々に砕けた骨のようなものが地面に転がっているだけだった。

 コアを破壊された魔物は、二度と起き上がることは無い。


「まっ、私たちにかかれば、こんなものよ」


 俺の方を見ながら、アリエルが自慢気に話す。

 神に次ぐ存在で、この世界では最高位になる精霊だ。

 魔物など、下等生物くらいにしか認識していないのだろう。


「さすがだな。助かった」

「……今日は、素直ね」


 アリエルは、俺の態度に戸惑っていた。


「まぁ、私たちも随分と力を使ったから、同じような事は何回も出来ないから、それだけは覚えておきなさい」

「その通りですよ」


 アリエルの忠告に、ミズチが念を押す。


「俺は地面を割るくらいだから、まだ使えるぞ」

「わ、私だって使えるわよ。謙遜して言っただけよ」


 ノッチの言葉に、アリエルは慌てるように言い直す。

 どちらにしろ、多くは使えないということだけは確かだ。


「タクト殿‼」


 ソディックが数名の騎士を連れて、俺の所まで駆け寄る。


「一体、何が起こったのですか⁉ これも、タクト殿の力なのですか?」

「少し、違うな。こっちの精霊たちに力を貸してもらった」

「精霊に力?」


 ソディックは、先程の挨拶した時に居なかったミズチたち精霊を見ながら、疑問を持ったように話をする。


「彼女たちが精霊なのですか?」

「あぁ、そうだ」


 俺は言葉を返すと、精霊たちに目線を向ける。


「悪いが、自己紹介してくれるか?」


 俺は精霊たちに頼む。


「私は水精霊ウンディーネのミズチです」

風精霊シルフのアリエルよ」

「俺は地精霊ノームのノッチだ。よろしくな!」


 決して高圧的な態度では無いが、人族よりも立場が上だと分かるような振る舞いでソディックに自己紹介をする。

 

「まさか、四大精霊様ですか……」


 精霊たちの自己紹介で、ミズチたちがただの精霊で無いことを悟ったのか、確認するような口調だ。


「そのまさかだ」


 俺の言葉にソディックは勿論だが、後ろにいた騎士たちも驚きの表情を浮かべる。


「タクト殿は私たちと契約しております。いつでも、私たちを呼び出す事が可能です」


 ミズチが優しく補足説明をする。


「因みに、私たちは誰とでも契約を結ぶわけではありません。タクト殿には、それだけの価値があるということです」

「その通りだ。人族いや、この世界で私たちと契約をしているのはタクトだけだ」

「タクトは特別な人族だからな。樹精霊ドライアドも色々と世話になっているからな」


 精霊たちは各々に、俺の価値を話し始めた。

 呆気にとられるソディックと騎士たち。


「無礼を承知で、お聞きしても宜しいでしょうか?」


 ソディックの言葉に、精霊たち三人は顔を見合わせた。


「なんでしょうか?」


 代表してミズチが答える。


「……その、精霊様たちは私たちに加勢して頂けると思って、宜しいのでしょうか?」

「それはタクト殿次第です」


 ソディックと騎士たちからの視線を感じた。

 俺が敵に回ることは無いだろうと思っているが、敵に回ったときのことが頭に過ぎったのだろう。


「他にありますか?」

「いえ、ありがとうございます」


 ソディックは礼儀正しく頭を下げて、ミズチたち三人に礼を述べた。

 俺はソディックの話が終わったのだと思い、ノッチに話し掛けた。


「ノッチ、地面の亀裂は元に戻せるのか?」 

「勿論だ。戻すか?」

「いや、まだ戻さなくていい」


 地面の亀裂が大きい為、亀裂を避けるように残った魔物たちは、迂回をしながらこちらに向かって来ている。

 亀裂は王都の周囲全体に出来ている為、少しは時間を稼げる。

 しかし、永遠にこのままだったら、流石に申し訳ない気がするので、戻せることが分かったので安心した。


「他の場所の状況は分かるか?」

「今、確認します」


 ソディックの部下の騎士に指示を出す。

 俺もシロとクロに連絡をして、状況を確認する。

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