第721話 事件の全貌と調整!

 オーフェン帝国には無事、到着した。

 飛行艇の事は記憶に残っているようで、オーフェン帝国側も、それほど驚いてはいなかった。


 武闘会の開催は、明後日になる。

 明日の夜は、前夜祭のような催しが行われるらしい。 


 ルーカス達王族に対する態度は勿論だが、第一王女ユキノの護衛である俺に対してまで、丁寧な言葉で話すフェンに周囲は驚いていた。

 それはルーカス達も同様だった。


 ルーカス達は宿泊する部屋に案内される。

 護衛衆が部屋に入り、ルーカス達を近辺から警護する。

 俺とシロにクロは部屋の外から警護する事にした。


 部屋の外には、オーフェン帝国の兵士達も警護に当たっている。

 先程の、フェンの対応が気になっているのか、チラチラと俺の方を見ているのが分かる。

 厳重警備の中、襲って来る者等居ないだろうと思いながら、周りを警戒する。



 ルーカス達が部屋から出て来た。

 オーフェン帝国側と会談するようだ。

 内容は、黒狐人族の事だろうと想像はついていた。

 詳しい話はステラが出来ると思い、俺はユキノの警護を続ける。


「ロキサーニとセルテートにターセル。タクトと代わってユキノの護衛を頼む」

「承知致しました」


 ルーカスの言葉に、ロキサーニ達は言葉を返した。


「俺も行くのか?」

「当たり前です。貴方は私以上に詳しいでしょう」


 小声でステラに話し掛けると、小さな溜息をつきながら言われた。


「俺一人で十分だから、シロとクロは引き続き王女の警護を頼む」

「はい、御主人様」

「承知致しました」


 シロとクロが居れば、ある程度の事も対応してくれるだろう。


 ステラと共にルーカスを警護しながら、オーフェン帝国との会談場所まで移動する。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 今回の騒動で、各国が得た情報を交換する。

 オーフェン帝国からは、暴れていたのは狐人族という事と、件数のみだった。

 エルドラード王国からは、狐人族が黒狐人族といわれる者達で、黒狐という組織に所属していた事を話す。

 暗殺から誘拐等の犯罪を請け負う組織として、エルドラード王国としても犯罪組織として、組織実態の調査をしていた事を、ステラが話す。

 そして先日、自分と俺とで組織を壊滅させた事。

 頭目であるブラクリより、力を分けて貰っていた黒狐人族達の暴走により、エルドラード王国でも各地に被害が出た事を、全て話した。


「その黒狐と言う組織が、我が国でも活動をしていたという事か……」

「はい。彼等は何処にでも潜伏したようです。諜報活動でしょう」

「成程。これで合点がいった」


 オーフェン帝国の皇帝トレディアは、大きな溜息をついた。


「しかし、この内容を国民に話したとしても、狐人族への差別は収まらないだろう」


 トレディアの横で話を聞いていたフェンが、口を開く。

 この会談の前に、シロから情報は聞いていた筈だが、フェンからトレディアには報告していなかったようだ


「タクト様。何か良い案は御座いませんか?」


 フェンが俺に意見を求めた。


「そうだな……」


 俺の勝手な考えだと前置きをして、話を始めた。

 まず、狐人族を加害者から被害者だと思わせる事が大事だ。

 今の状況は、狐人族が暴れたという事実だけが、広がっている。

 勿論、暴れた狐人族は少数で、殆どの狐人族は被害者だ。

 狐人族は、この国でも弱い獣人族に分類される。

 魔法を使っての戦い方を好まない風潮のせいだろう。


 魔族が狐人族に化けていたとしても、国民は疑心暗鬼になり狐人族への差別は減らない。

 だからと言って、他の種族にも化けていると言えば、混乱が起きるだろう。


 幸いにもエルドラード王国では、黒狐人族が魔人化した事は広く知られていない。

 この事を利用するしか無い。


 そこで、ある者が狐人族の魔法に特化した能力に目を付ける。

 その者はユニークスキルを使い、何人かの狐人族に気付かれないよう【呪詛】に似たようなものを掛けた。

 そして、同時期に【呪詛】を発動させた。

 これはエルドラード王国でも起きた事件という事を、国民に伝える。

 同時に、【呪詛】を施した首謀者は、獣人族が居ないシャレーゼ国に逃亡していたのを先日、エルドラード王国とシャレーゼ国の極秘任務で討伐が完了したと、国民を安心させる。

 当然、シャレーゼ国への協力も必要になる。


 俺が話し終えると、ルーカスとトレディアは考えていた。


「それが一番だな……【呪詛】であれば、国民も納得するだろう」

「私も、そう思う。シャレーゼ国からの来賓者も先程、到着したようなので参加して頂こう」

「それと、オーフェン帝国で起きた未解決事件の無差別殺人も黒狐人族の仕業だ」


 トレディアは驚く。

 トレディアの護衛をしていた四獣曹達も同様だった。


「その事件も、今回の首謀者だとすれば国民も一層、安心をするだろう」


 トレディアは安堵の表情を浮かべながら話した。


 その後、シャレーゼ国から訪れていたイエスタとファビアンが、ネイラートと連絡を取り、概ね俺の案で進める事が決定した。

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