第720話 再び!

 オーフェン帝国では、武闘会の準備。

 ゴンド村では、ババ抜き大会の準備が進められていた。

 ババ抜き大会は、武闘会の後に開催になるので、ゴンド村では優勝を目指して、アルとネロは村の子供達相手に、連日ババ抜きをしているそうだ。


 俺はトブレにトロフィーのような物を作るようにと、【交信】を使い説明する。

 優勝カップのような豪華な物でなく、台座に長方形のような物がついている簡素な物なので、説明し易かった。


 アルとネロとは、何度もババ抜き大会の運営について話し合いを持った。

 参加人数が多いので、四~五人一組として予選リーグを行い、最終リーグへの出場者を決定する事等をアルとネロに説明した。

 参加者が多ければ、予選リーグを二回行う必要もある。


「分かったのじゃ!」

「分かったの~」


 本当に分かっているのか不安だったが、アルもネロも自分達で企画して開催する大会なのか、本当に楽しそうにしながら準備を進めている。

 こういった娯楽の大会が増えれば、喜んで参加する国民も居るだろう。


 四葉商会の代表であれば、グランド通信社等と連携して開催する事が出来たのにと、少し悔しい思いをする。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 オーフェン帝国へと向かう日が来た。

 飛行艇に乗り込み、オーフェン帝国まで移動する。

 操縦するのは、ロキサーニだった。

 護衛兼、操縦者のようだ。


 俺とシロにクロは、ユキノの護衛という事なので周囲に気を使う。

 空で襲われる事は、そうそう無いが俺達以外で、対応出来る者が居ないのも事実だ。

 ステラの魔法も、空を自由に飛び回れたら狙いを定めるのも難しいだろう。

 前回も襲われなかったので、大丈夫だと思っていた。



 俺の嫌な予感は的中する。

 飛んでいる航路が悪いのか、ワイバーンの群れと遭遇する。


「なんとか、ならぬのか」


 ルーカスが、飛行艇を操縦するロキサーニに叫ぶ。

 ロキサーニがワイバーンの群れを回避しようと旋回するが、既に発見されている為、襲い掛かろうと向かって来ている。

 ルーカスやイースは青ざめていた。


「ちょっと、行ってくるわ」

「はい、御主人様」

「お気を付けて」


 冷静に返事をするシロとクロ。

 ステラは俺が飛べる事を知っているので、驚く様子は無かった。

 反対にセルテートは「死ぬ気か!」と、俺を心配してくれていた。


「まぁ、大丈夫だろう」


 俺は飛行艇の扉を開けて、飛び降りる。

 ワイバーンの数は、十数匹。

 【飛行】と【転移】を使いながら、確実にワイバーンを仕留めていく。

 下は海なので、死体を落下させても問題無いと思っていたが、血に他の魔物が集まって来ても面倒なので、ワイバーンの死体は全て【アイテムボックス】に仕舞い込んだ。

 時間にして、数分の出来事だ。

 俺は何食わぬ顔で、飛行艇に戻る。


「お帰りなさいませ」

「ただいま」


 シロに挨拶を返す。

 ルーカス達は驚いていた。


「今、飛んだのか?」

「あぁ、そうだ」


 ルーカスの問いに答える。

 以前も同じような事があったと思い出す。


「飛びたいなら、俺が抱えてやるぞ」


 俺の提案に最初に飛びついたのは、やはりイースだった。


「ただし、髪型が酷い状態になるから帰りでもいいか?」


 俺の言葉にイースは酷く落ち込んだ。

 しかし、王妃の髪が乱れていては、オーフェン帝国対して失礼に当たるかも知れない。

 イースも、その辺の事情が分かっているので、無理を言わないのだろう。

 しかし、このような経験さえも忘れてしまったのかと、少し悲しい気持ちになる。


「相変わらず無茶苦茶ですね」


 ステラが話し掛けてきた。


「そうか? この中で対処出来るのは俺だけだと判断しただけだ」

「悔しいですが、その通りですが……」


 黒狐との戦いを終えたステラは、どことなく丸くなった気がした。

 自分なりに、気持ちの整理をして、少しずつ変わって行っているのだろう。


 俺は【魔力探知地図】を発動する。

 そして、ロキサーニに指示を出して、魔物の居ない場所へと飛行艇を誘導した。


「何故、魔物の居場所が分かるのだ?」

「それは、俺の勘だ!」


 ルーカスの問いに即答で答えた。


「勘か……一流の冒険者ともなれば、その勘も鋭くなるのだな」


 第六感とでもいうのだろう。勘が鋭い事で、命を救った冒険者は多数居る。

 その一方で、選択を間違えた冒険者には、悲惨な現状が待っている。

 実力以外にも、勘が大事だ。

 そう考える冒険者が多いのも事実だ。


「ステラやセルテートだって、勘が鋭いだろう」

「……全く分かりません」

「俺は鼻が利く。しかし、風下に居る敵は分からない」


 俺の意見に、ステラとセルテートは否定もしくは、否定的な意見を述べる。

 確かに、俺の【魔力探知地図】なので、通常の第六感とは違うが、もう少し肯定的な意見を言ってくれても良いだろうと思った。


「とりあえず、帰りに期待するとしよう」


 鳥になる計画を楽しみにしているルーカス。

 そして、同じように期待に胸を膨らませるイースが居た。

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