第691話 黒狐との戦闘-4!
「まぁ、俺達相手に一人でこれだけ暴れてくれたんだ。当然、覚悟は出来ているよな!」
「……」
「そこで提案だ、ステラ! お前、俺達の仲間になる気は無いか?」
「……何を言っているのですか」
「お前程優秀な人材は、そうは居ないからな。殺すには惜しい」
「村の人達を裏切った貴方の仲間になる位なら、死んだほうがましです。もっとも、私を殺せる程の力があるとも思えませんが。そうですよね、泣き虫ジャン!」
「ふっ、成程ね。流石は賢者様だ、冗談も超一流だな」
「冗談ついでに、どうして村の人達を裏切ったのですか! あんなに仲が良かったではありませんか!」
「どうして? おかしな事を。そんなの決まっているだろう。俺が強くて、黒狐に選ばれたからだ! 無能なお前達に合わせて生活するのが嫌になっただけだ」
ブラクリの言葉に、幼い頃のジャンの面影は無かったのか、ステラは呆然としていた。
「まぁ、交渉決裂と言う事だな。勿体無いが、仕方が無い」
ブラクリは言い終わると同時に、仲間に合図を送る。
ロブソンが一気にステラとの距離を縮めて、殴りかかった。
「……誰だ、お前」
俺はステラを庇い、ロブソンの拳を止める。
「ステラ。少し休め」
「嫌です。もう少しなんです」
「まぁ、あの頭目は残しておいてやるから、体力を回復させておけ」
「しかし!」
「今、無理をして死んだら、お前に希望を託して死んでいった村の仲間は、どう思う?」
ステラは黙り込む。
「おい! 俺を無視するな」
ロブソンが止めた拳を押し込んでくる。
「邪魔だ!」
俺は、そのまま拳を押し返してロブソンをブラクリ達の居る方に飛ばす。
体勢を崩しながらも、ロブソンは着地する。
「クロ、ステラの護衛を頼む。シロはステラを回復させたら、クロとステラの護衛をしてくれ」
「承知致しました」
「分かりました、御主人様」
これで、ステラの事は安心だ。
俺が回復をさせてやってもいいのだが、ステラが俺に触れられる事を嫌っているので、シロに任せる事にした。
「さてと、ブラクリ以外の雑魚は俺が相手をしてやる」
挑発的な言葉に加えて、おちょくった態度をする。
「くそっ、舐めやがって!」
力勝負で負けたロブソンが俺に襲いかかろうとする。
「待てっ!」
ブラクリがロブソンを止める。
「お前、何者だ?」
「さぁな、通りすがりの正義の味方とでも、言ったところだな」
「……この村に張られた結界も、お前の仕業か?」
「さぁな?」
俺のふざけた態度に動じる事も無く、冷静に俺を見ている。
「おい、お前等! 三人全力でアイツを倒せ!」
「頭目! 俺一人でアイツを倒せるぜ」
「これは命令だ!」
ブラクリが叫ぶと、三人は目線を合わせる。
口に何かを含み、飲み込んだ。
叫び声と同時に、風貌が変わる。
これがララァとタラッシュの言っていた『強化薬』だと分かった。
「誰かは分からないが、頭目からの命令だ。苦しまないように殺してやる」
「そうね。不細工すぎて興味も無いから、すぐに殺してあげるわ」
「頭目の命令は絶対ですからね」
目が血走り、体格が一回り大きくなったロブソン。
爪が先程よりも伸びて、目つきが鋭くなり妖艶な仕草で俺を見るアレクシア。
八本の尾が太くなったコネリウスが俺を睨む。
「分かったから、来いよ」
俺は三人を手招きする。
馬鹿にされたと思った三人は同時に俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。
ロブソンが拳で俺を攻撃するので避けると、そのまま地面を叩き砂埃が舞う。
俺の背後から、アレクシアが爪で切り裂こうと攻撃をするが爪を避けて腕を弾いて背中に蹴りを入れて飛ばす。
アレクシアを蹴り終えた瞬間に突然、縄のような物が俺の両手両足を縛った。
「呆気ないですね。これで終わりです」
コネリウスが縄から電流を流すが、俺には【全属性耐性】があるので、全く効果が無い。
縄を強引に引き寄せると全て切れる。
「確かに呆気なく終わったな」
完全に仕留めたと思っていたコネリウスは、信じられない表情だった。
「お前等、全力だと言っただろう!」
不甲斐無い三人に対して、ブラクリが喝を入れる。
これ以上、ブラクリにみっともない姿を見せられないと思ったのか、更に強化薬を口にした。
ロブソンは切れるんじゃないかと思うほど、血管が浮き出ている。
高揚した表情のアレクシアに対して、コネリウスは血の気が引いたのか、青白い表情だった。
どちらにしろ先程までよりも、強くなっている事には違いない。
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