第676話 枯槁の大地再生計画-6
「とりあえずは終了って事だな」
背伸びをしながら、ノッチに話し掛ける。
最終的には大きい池が一つに、小さな池が二つ。
少し地面を弄って小山を作ったりして、川のようなものも作った。
森の大きさで言えば、リラが管理する『魅惑の森(旧迷いの森)』よりも大きい。
リラに会ったら、文句を言われる気がするのは気のせいだろうか……。
「まだ、終わっていないぞ」
「何かやり残した事があるのか?」
ノッチが残作業がある事を口にする。
残りの作業はイザベラ一人でも問題ないと、先程確認した筈だが……。
「この森の新しい名だ」
「それは、いずれ名称が勝手に付くだろう」
「確かに名前が浸透するまでには、時間が掛かる。名前を決めて広めた方が効率的ね」
ノッチが提案に、ミズチも納得していた。
「ネイラートに決めさせればいいのか?」
「いいや、リラの森を改名したタクトが名付ければ良い。それを国王に伝える」
「いやいや、俺のネーミングセンスは酷いと評判なんだ」
俺がどれだけ拒否をしても、ノッチは「大丈夫だ!」の一点張りで話が進まない。
「イザベラも、親しみやすい名前の方が良いよな」
「私は、再生して頂いたタクト様に付けて頂けるのであれば、どのような名前でも構いません」
唯一の救いだと思っていたイザベラにまで、そんな事を言われたら名付けるしかなくなる。
「分かった。考える……」
戦争の跡地。
草木が生えない絶望の土地。
そこから再生した森……。
「希望の森林は、どうだ?」
全く自信の無い俺は、恐る恐る思いついた名前を言って、皆の反応を見る。
「良いんじゃないか! なぁ、イザベラ」
「はい。素晴らしいです」
思っていた以上に好評だった。
俺は新しい名を手紙に書いて、ネイラートに渡すようにクロに頼む。
俺達はイザベラに別れを告げて、フォーレスの居る世界中の庭園へ戻る。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「大変、感謝する」
フォーリスからイザベラを救った事で、礼を言われる。
その後、報酬である精霊印『大地の祝福』を受取る。
フォーリスのユニークスキル【
言葉から推測出来ないユニークスキルだ。
「葉を落としたり、向き等で未来が少し分かるスキルだ」
占いのようなスキルなのか?
「このスキルには回数制限がある。十日一回のみだ」
「当たる確立は?」
「良くて半分だな。タクトが来る事は出ていたが、半信半疑だった」
「成程ね」
当たる確立が五十パーセントの占いと言うことか……。
たまにはこういうスキルも良いだろうと思っていたが、思いのほかスキル値を消費する。
こんなスキルであれば、習得しなくても良かったと少し後悔をする。
その後、ドライアドの実を貰う。
イザベラが再生した事は、ノッチから
この世界樹の庭園に来る事は、もう無いだろう。
そう思うと少し散歩がしたくなる。
フォーレスに許しを得て、少しだけ庭園内を歩く事にした。
美しい庭園だった。
まさしく森という表現で無く、庭園という名が相応しい。
見ていて心が落ち着く。
植物が育つには、水と光が必要になるはずだが……。
疑問を感じながらも、庭園はゆっくりと一周した。
フォーレス達の所に戻ろうとした時に、クロから連絡が入る。
ネイラートが俺の手紙を呼んで、了承した事。
そして、明日にでも立派に再生した希望の森林を、信用出来る部下達が訪れる事を教えてくれた。
随分と前に、
忙しく、なかなか取り掛かる事が出来なかったので、肩の荷が下りた感じだった。
昔、呼んだ漫画で違和感を覚えた事があった。
都合の良い漫画だった為、一つずつ問題を解決して物語が進んでいった。
決して、複数の問題が発生する事が無かった。
子供心に「漫画だから」と思っていたと記憶してた。
しかし、実際の社会では幾つもの問題等が同時に起きる。
それを決めるのは自分であり、上司等だ。
優先順位が高いか低いかの判断だけだ。
そういう意味では、今回のイザベラの件は優先順位は低かった。
俺が行った所で、どうにかなるものでも無いと思っていたからだ。
今日見たイザベラの嬉しそうな表情。
俺がもう少し早くに再生する動きをしていれば、ずっと種子の中で孤独な時間を過ごす事も無かったのではないかと感じていた。
所詮は結果論だが、人命確認と救助を後回しにした事は事実だ。
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