第672話 枯槁の大地再生計画-2
「アリエルも契約したら?」
「なんで、私が!」
ミズチがアリエルに、俺と契約をするように勧めていた。
「仕方ないわね」
ミズチはアリエルの耳元で何かを囁いていた。
一瞬、アリエルの表情が緩む。
内緒話を終えると、俺の所まで歩いて来ると左手を掴み、勝手に契約する。
俺の意思に関係なく契約が完了したのか、左手に『風精霊の証』が浮かぶ。
「今度、詳しく聞くから」
そう言うと、振り返ってフォーレスの所へと戻って行った。
俺はミズチを呼び、事情を聞くことにした。
「アリエルは、人族の恋愛話が大好きなのよ」
「……それが、どうした?」
「タクトとユキノの事を少しだけ話したら、興味を持ったみたいよ」
「おい。ユキノはその事を忘れているんだぞ」
「だからこそ、タクトに話を聞きたいんじゃない。障害の多い恋ほど燃え上がるって、アリエルは言っていたしね」
……なにかのドラマにでも影響されたのかと思ってしまう。
「それにタクトの周りには、面白い恋をしている人族が多そうだしね」
「面白そうな恋ね……」
正直、誰も思い浮かばなかった。
「アリエルも悪い子じゃないから、タクトを助けてくれると思うから安心していいわよ」
悪い精霊であれば、悪霊だろうと思いながらミズチの話を聞いていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ミズチに案内をされて、
精霊イコール女性のイメージがある俺だったが、ノッチと会うまでは男性だと思っていた。
精霊に性別が無いのは分かっているが、姿の話だ。
「紹介する必要も無いわよね」
「勿論だ! 色々と
口調が完全に男言葉だ。
見た目は美人なのに、口調は男性っぽい。
「俺は
「あぁ、こちらこそ」
戸惑いながらも返事をする。
「ガルプワンも百年いや、何百年ぶりか?」
「御無沙汰しております、ノッチ様」
「元気そうだな」
「はい。それと今は、主であるタクト様よりクロと言う名を頂戴しております。出来ましたら、そちらの名で呼んで頂きますよう御願致します」
「分かった」
クロとノッチは顔見知りのようだった。
「用件は分かっている。イザベラの事だな」
「えぇ、そうよ」
「早く元気に育ってくれないと、俺も寂しいからな」
「そういえば、ドワーフ達とも仲良くやっているみたいだな」
「あぁ、どちらかといえば俺が助けて貰っている方が多いがな」
「そうか、そうか。お前はそう考えているんだな」
ノッチは嬉しそうに笑う。
この世界の全てを把握しているわけではないと思うが、会話に細かい情報を挟んでくる。
「そうだ。お前は面白いな、これまでで一番と言っても、いいくらいだぞ」
やはり、地面を伝い思考を読まれているようだ。
そう考えると、ノッチの能力は
流石は、上位精霊だけある。
四大精霊の三人と出合った。
残りは
「ホオリンに会いたいのか?」
「ホオリン?」
「
勝手に思考を読むのを止めて欲しい。
「ホオリンは今回の件に関係ないでしょ!」
ミズチが不機嫌そうに話す。
火と水なので、相性は最悪と言うことなのだろうか?
「ミズチとアリエルは、ホウリンと仲が悪いからな」
ノッチが苦笑いをする。
「まぁ、ノッチはホオリンと気が合うでしょうがね」
「俺は誰とでも、気さくには話す事が出来るからな」
「……そうね」
俺は【飛行】で少しだけ体を浮かす。
ノッチに思考を読まれない為だ。
今迄の会話から、ノッチは脳筋よりの考えだと結論付けした。
実体も定かでない精霊族。
その強さは人族以上なのか気になった。
こういう時に比較対象として出す人物はアルになる。
長年生きている事と、俺が考えつかないような問題事を多数起こしている。
本人には自覚はないだろうが……。
今聞く話でも無いので、この件は後回しにする。
「イザベルを復活させるに辺り、シャレーゼ国の国王に報告だけしたい」
「必要なのか?」
ノッチは不思議そうな表情だ。
「あぁ、イザベラが復活すれば新しく森を造る。緑が生い茂る森を人族がむやみに荒らさない様に忠告も含めての報告だ」
「成程! タクトは頭がいいな。それより、タクトの考えが急に読めなくなったが、何かしたのか?」
「あぁ、体を少しだけ浮かした」
俺は正直に話す。
「そうか。体を浮かす事も出来るのか!」
ノッチは、それ以上何も言ってこなかった。
「機嫌が悪くならないのか?」
「何故だ? 隠しておきたい事や、聞かれたく無い事があったから体を浮かしたんだろう?」
俺が驚くほど、ノッチは簡単に回答をする。
「俺だって、むやみやたらに誰でも彼でもって感じで、思考を呼んでいるわけじゃない。そこは勘違いして欲しくない」
俺の思っていた事と異なる言葉だった。
ノッチが嘘を言っていない事は分かる。
俺の勝手な考えだったと悔い改めた。
「タクト。お前、面白いな」
ノッチが不敵な笑いをしながら、俺を見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます