第648話 謎の解明!
死体から這い出て来た蟲は、俺に向かって攻撃をしてくる。
ウォンナイムの支配下の魔物のようだ。
俺は鬱陶しいと思いながら、蟲達に反撃する。
ウォンナイムはこの蟲の事を『シデムシ』と呼んでいた。
俺の知っているシデムシと似ているのは、死肉を食料にしていることくらいだ。
シデムシの数は三十~四十匹くらいだ。
しかも、俺が倒したシデムシを食べるシデムシも居た。
死肉なら何でも良いのだろうか?
しかも、食べている途中でも体が大きくなっている。
成長が早いようだ。
一匹のシデムシがウォンナイムに向かい攻撃をした。
ウォンナイムは片手でシデムシを捕まえると、そのまま口に持っていく。
「やはり、美味しくは無いですね」
一口食べると、吐き出してシデムシを床に叩き付ける。
「まさか、私を攻撃するとは……改良が必要ですね」
「……改良?」
「えぇ、このシデムシは私が作り上げた魔物です。何度も失敗を繰り返しましたがね」
シデムシは死肉を好む。
つまり、それだけの死肉が必要になるという事だ。
それだけの死肉を、この国で調達したことにある。
「気づきましたか。この国は研究するには、とても適した場所でしたよ」
「それも、もう終わりだ」
「どうですかね。いかに強い魔王と言っても所詮は人族。その中でも最弱は人間族ですからね」
ウォンナイムは、俺の事を完全に見下していた。
「プルガリス様が倒されたのも、なにかの間違いか、別の要因があったからでしょうね」
「お前が俺に倒されれば、分かるだろう」
「面白い冗談ですね」
攻撃してきた最後のシデムシを床に叩き落として倒す。
当たったと思った攻撃が当たらなかったりと、先程のウォンナイムとの戦いに似た現象はあった。
「では、私の番ですかね」
言い終わらないうちに、横から攻撃される。
「……避けましたか」
ウォンナイムは攻撃が避けられるとは思っていなかったようだ。
なにかしらの攻撃を受けている為、俺の感覚が狂っているのだろう。
考えられるのは、催眠のようなものだが……。
ウォンナイムから目を離さないように凝視する。
微妙に羽を動かしている。
飛ぶ訳ではないのに不自然な動きだ。
次の攻撃では確実に捉えるつもりで構える。
「無駄ですよ!」
ウォンナイムは言葉を残し消える。
背後に殺気を感じたので、こぶしを出すとウォンナイムの胸に当たる。
「くっ!」
ウォンナイムは距離を取る。
「油断しすぎましたね。まぐれに二度目は無いですよ」
「どうかな」
ウォンナイムは消えると、俺の横か背後からしか攻撃をしてこない。
攻撃を食らう覚悟であれば、ウォンナイムに攻撃を入れる事は可能だ。
やはり、姿を消したウォンナイムは俺の左から攻撃を仕掛けて来た。
俺は攻撃が届く前に蹴りで反撃する。
「おかしいですね。私が人間族に二度も攻撃を受けるとは……」
へらず口を叩きながら、立ち上がるウォンナイム。
致命傷は与えられていない。
ウォンナイムの攻撃の謎を解かなければ、いずれネイラート達に攻撃の矛先が変わる事も考えられる。
(ん?)
俺はウォンナイムの違和感に気付く。
(もしかして……)
俺はウォンナイムの攻撃に備えて構える。
ウォンナイムも、俺に二度も攻撃を受けた事で腸が煮えくり返っているようだ。
「まぐれは何度も続きませんよ」
「どうかな」
「劣る人族の分際で!」
ウォンナイムは消えると同時に攻撃を仕掛けて来た。
しかも左からの攻撃が来たと思った直後に、右側からも攻撃があった。
同時攻撃でなく、時間差攻撃だ。
俺は簡単に避ける。
「ぐあっ!」
俺が避けた後には、二人のウォンナイムがお互いを攻撃した姿があった。
「やはり二人だったか」
「くそっ!」
二人のウォンナイムは並んで俺を睨む。
ウォンナイムの複眼に俺の姿が幾つも映っていた。
「……何故、避ける事が出来た」
俺は敵にする質問じゃないだろうと思いながらも、素直に答える。
「攻撃した跡が異なっていた。つまり、二人以上いると考えただけだ」
「人間族は人族の中でも頭が回る種族だと知っていたが、思っていた以上のようだな。しかし、残念だが私達は二人ではない、これで一人だ」
ウォンナイムは、もう一人のウォンナイムの首元に噛り付く。
噛り付かれたウォンナイムは逆らうことなかった。
時間にして数秒だったが、噛られた方のウォンナイムは内臓を全て吸われたのか干乾びた状態になる。
「これで本来の力に戻った」
ウォンナイムは、口から垂れる液を拭う。
俺の【分身】とは異なり、自分の力を与える存在を作り出せるようだ。
卵か何かで自分を作り出す事が出来るのだろう。
俺達が侵入した事を知って事前に、もう一人の自分を作っていたのだと推測する。
意思の疎通が出来ていたのかは分からない。
しかし、羽を小刻みに動かしていたのを見る限り、なにかしらの合図を送っていたのだと考える。
先程の言動からして、同時に動く事が出来ないようだが、思考は別々のようだ。
それに俺の【隠密】と同じような自分の姿を隠すスキルも持っている。
少し面倒な相手だ。
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