第579話 報告と、今後!
タルイでの調査や後始末に関しては、ソディックや王国騎士団と、商人ギルドから派遣された者達に任せた。
俺以外の者も、ソディックから頼まれてタルイに残って手伝っている。
ルーカスから呼び出しを受けた俺のみ、王都へ戻って来ている。
そして目の前にはルーカスに大臣のメントラと、冒険者ギルトと商人ギルドのグランドマスターが座っている。
「今回は、御苦労だったな」
ルーカスが労いの言葉を口にする。
そして、尋問の途中経過を報告してくれる。
俺の【真偽制裁】で誰も嘘の発言が出来ないので、順調に進んでいるそうだ。
関与した貴族は爵位剥奪及び、死刑で決定した。
財産も全て没収されて、国の管理下に置かれる。
又、貴族本人だけで無く、今回の件を知っていた一族も同様に死刑らしい。
当然、子供も含まれている。
俺はその事に反論するが、一族を残せば災いの種になり、国を混乱させる原因になるとされる。
そして、奴隷制度撤廃に賛成してくれている貴族達の意向もあると、大臣のメントラから言われる。
エランノットの父親であるレッティは被害者だと思うので、ルーカスに確認する。
ルーカスの代わりに、大臣のメントラが答えてくれた。
「他の領地もそうですが、これだけ領主交代となりますと色々と問題が御座います。レッティ殿に関しましては、無罪な事も承知しております。しかし、レッティ殿よりエランノットの父として、罪を受け入れると御連絡がありました」
我が子が大罪を犯し、被害者も多数居る事を知って自分だけ生き長らえるという選択肢は、レッティには無かったのだろう。
どこまでも誇り高い本当の貴族だと思った。
捕獲された者以外の一族が、今回の件を知っていたかを確認する為、「俺に協力して欲しい」と頼まれたので了承する。
聖誕祭で挨拶に来るので、その時に確認するらしい。
これで、俺の聖誕祭の仕事が決定した。
のんびり過ごすつもりだったのだが……。
「それと奴隷制度撤廃に関しては、反対する貴族は殆ど居なくなった」
ルーカスは俺が喜ぶだろうと話をしていた。
しかし、本当に奴隷制度を撤廃しようとする貴族達が、どれだけ居るだろうと考える。
ルーカスに続くように大臣のメントラが補足事項を話し始めた。
奴隷制度の撤廃に関しては、聖誕祭で発表すると言う事。
現奴隷に関しては、使用人として労働分の対価を必ず支払う事。
そして、奴隷制度に違反した者は死刑の上、財産没収となる。
これは今回の貴族達と同様と言う事らしい。
結局は、奴隷制度撤廃を言われた時に、政権争いも発生していた。
自分にどれだけ利益があるかと、まず考える貴族が多かった筈だ。
当然、それ以前からノゲイラより奴隷を仕入れていた貴族は別だが、それ以外は現状で反対するメリットが無い。
しかも、最初からルーカスの意見に同調していた貴族にとっては、自分達の立場を明確に示した事で、より大きな力を手にした事になる。
今回の事で領主不在の土地が多く発生する。
長い間、領主不在には出来ないので、自分の子供達や血族を領主に据えたいと思う者達は多くいる筈だ。
ルーカスやメントラの話を聞いていると、良い領地が開いているだの、あそこは何々が特産物だのと話している。
俺に領主をさせたいと思い、条件の良い領地を提示しているだけだろう。
「俺は冒険者だから、あまり興味が無いな」
この一言で、俺が何を言いたいかがルーカスとメントラには通じた。
三文芝居をいつまでも見せられては、こちらも苦痛でしかない。
話が一段落したようなので、話をタルイの事に戻す。
「気分が悪くなるかも知れないが、これが今回の写真だ」
俺はクロが撮影した写真を机の上に置く。
各々が写真を手に取ると、表情を一変させた。
無言で次々と写真を見ていた。
「これがこの国で行われていたとは……」
ルーカスが嘆く。
「これは貴族だけの問題で無い。奴隷を人として扱っていない者達全ての問題だろう」
俺が思っていた事をルーカスは話す。
「国民の多くは、今回の事を知らぬ。それでは、同じ事が起きるだろう」
ルーカスは少し考えると、重い口調で提案をする。
「この写真と、今回の事を記事にして国民に知らせようと思う」
「国王様。それは、国民の反感を買う恐れがあります。危険過ぎます」
メントラは大臣として、ルーカスの意見に反対をする。
確かに、貴族が奴隷の殺戮を楽しんでいるとなれば、貴族全体が同じだと言う印象を受ける。
領主に不満のある者達が一斉に立ち上がり、反乱を起こす可能性だってある。
「信用されている領主であれば、今回の件に関しても問題無い。問題が出るとすれば、むしろそっちでは無いか?」
ルーカスの言うとおりだ。
慕われている領主であれば、この記事を見たところで、自分の領主は関係ないと思う。
逆に、常日頃から領主に不満を持っている者達は、領主も同類だと思う筈だ。
心当たりのある領主は、すぐに何かしらの行動を起こすだろう。
国王相手に物凄く失礼だが、俺が思っていたよりルーカスはしっかりした考えを持っていた事に驚いた。
「関係者を呼んで、すぐに対応致します」
そう言うと大臣は立ち上がり、部屋から出て行った。
「タクトよ。今回の件、本当に感謝する」
ルーカスが改めて、俺に礼を言う。
「色々な事が重なって、結果がこうなっただけだ。俺としては、不幸な奴が一人でも減ればそれでいい」
気楽な冒険者である俺と、国の頂点に君臨するルーカスとでは全てにおいて異なる。
行動の制限についても、ルーカスの生活は俺にしてみれば窮屈でしかない。
窮屈と分かっていても、それが自分の使命だと受け入れているルーカスやアスラン達は尊敬に値する。
「私からも良いでしょうか?」
商人ギルドのグランドマスターであるオイラルが、タルイのサブマスであるホドリゴが捕獲されていないと言う。
「いや、そんなことは無いと思うが……」
俺が【結界】を解かない限り、闇闘技場から出る事は不可能な筈だ。
万が一、隠れていたとしても、クロが取り逃がすわけが無い。
「そのホドリゴは、どんな奴なんだ?」
「商人ギルドとして、お恥ずかしい話ですが、経歴等が全く分かっておりません」
「そんな奴が、サブマスになれるのか?」
「本来であれば、そのような事は無いはずなのですが……」
「タルイ領主のエランノットや、ノゲイラに協力していた関係者の仕業って事か?」
「はい。その通りです」
「元冒険者でもないのか?」
俺は冒険者ギルドのギルドマスターであるジラールに尋ねる。
「ノゲイラの経歴同様に調べてみたが、ホドリゴという名の冒険者は確認出来なかった」
ノゲイラとは、昔からの付き合いだった筈だが妙だな?
「一応、指名手配者として、冒険者ギルドには通達はしている」
「国としても各領主には連絡済みです」
俺の【結界】やクロの捕獲から逃げ延びたホドリゴの足取りを追うのは難しいだろう。
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