第517話 連敗!
「な、何故なのだ……」
不名誉な称号を懸けて最後まで残ったのは、ルーカスとネロだった。
そして今、不名誉な『最弱』の称号はルーカスのものとなった。
「最弱国王か……」
俺は以前にネロが言った「最弱国王」の言葉が浮かんだので独り言のように呟くと、周りの者達が笑い始める。
笑ってはいけないと必死で笑いをこらえているが、笑っているのは一目瞭然だった。
特にイースは大笑いしている。
「さ、最弱国王ですって」
面と向かってそのような失礼な事が言えるのは、王妃であるイースくらいだろう。
「タクトよ。この屈辱絶対に忘れんぞ!」
ルーカスの怒りの矛先が何故か、俺に向いていた。
「いや、俺のせいじゃないだろう。最下位になった国王が弱いから悪いんだろう」
「弱いと言うな!」
余程、『最弱国王』と言うのが嫌なようだ。
「日を改めて、もう一回やれば最弱では無くなるだろう」
「そうじゃな。もう一度、ババ抜き大会を開催するぞ」
一筋の光でも見えたかのように、ルーカスは高らかにババ抜き大会の開催を宣言する。
アルとネロも、ルーカスに同調している。
「どうでもよいが、うちの従業員を巻き込むなよ」
「安心しろ! 余は逃げも隠れもせん」
ルーカスと話が噛み合わない。
「国王よ。約束じゃぞ、絶対にババ抜き大会を開催するのじゃぞ」
「アルシオーネ殿、勿論ですぞ。余に二言はありません」
「やった~なの~」
盛り上がっているのは、この三人だけだった。
「ターセルは優勝しているから、強制参加だろうな」
優勝したターセルに話し掛けると、苦笑いしていた。
「しかし、能力を使わなくても常に人の行動を見ているのか?」
「はい。護衛と言う立場ですので、人の動きには敏感ですね。不自然な動きを感じれば、怪しむのは当然です」
「成程ね。ターセルに勝つのは難しいという事だな」
「御謙遜を。タクト殿であれば、私を欺く事位は造作も無い事でしょう」
「どうだろうな」
正直、ターセルとの勝負になれば運任せになるだろう。
微妙な目線の動きや、駆引き等は遊びの俺よりも格段に上な事は間違いない。
人間族でこれほどの洞察力と、【鑑定眼】のスキルを持っているターセルは凄いと、改めて感じた。
「勝負も着いたし、本当に戻るぞ」
ネロには夜遊び中のセフィーロが戻って来る事も考えて、ここに残って貰う事にした。
当然、セフィーロが何かしたら俺に知らせてくれるようにと頼んである。
本当であれば、監視を頼みたいがセフィーロに気付かれてしまうので断念した。
イースはユイとリベラとの別れが名残惜しいのか、「いつでも王都に遊びに来てね」と言っていた。
俺が思っている以上に窮屈な生活なのだろうか?
ダンガロイとフリーゼも、イースと話し終わった二人に礼を言っていた。
ルーカスのみ、若干不機嫌な様子だったが、気にせずにアルと二人でネイトスまで【転移】する。
ネイトスに着くと、アルはジークに戻ると言うので、俺はスーノパパに写真を渡す為、寄り道をする事をアルに伝えた。
アルは興味が無いのか、一人でジークへと戻って行った。
ユキノも一緒に行きたそうだったが、危険が伴う事と初対面の雪人族には出来るだけ一人で会いたいと思っているので、その事を告げてヤヨイ達と待っていて貰う事にする。
「タクト!」
戻ろうとする俺をアスランが呼び止める。
「どうした?」
「実は王都に戻ったら、二人っきりで話をしたいのです」
「別に良いぞ」
俺とアスランとの会話が気になるのか、ルーカスとイースにユキノやヤヨイもこちらを見ていた。
王族が絡んでいる話と言う事なのか?
しかし、友人の頼みなので考えても答えは一緒なので、変な詮索はしない。
とりあえず、明日はシキブ達の移住の件があるのでもう一度、ゴンド村に行かなければならないので、戻ってすぐは難しいと伝える。
アスランも俺の用事が終わってからで良いと言うので、グランド通信社の仕事で王都に居るマリーとフランを迎えに行く際に寄る事にした。
しかし、マリー達から連絡が無いのは忙しいからなのだろうか?
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