第515話 夢中な大人達!
四葉孤児院の院長部屋に戻ると、異様な空気に包まれた大人達が、ババ抜きをしていた。
「どうしたんだ?」
既に一位抜けしていたルリが笑いながら話す。
皆がババ以外を引こうとすると、握力でカードを押さえて引かせないようにしたり、表情からババを持っている事が分かってしまうので、異様な表情をしていた。
「おいおい、そんな顔してたら子供達が怖がるぞ。子供達と遊ぶ時も、そんな顔をするのか?」
俺の言葉にサジは自分の行いに気が付いたのか、「これは私としたことが……」と反省していた。
その姿に、シュカ達も冷静さを取り戻す。
「負けず嫌いなのは結構だが、程々にな」
「はい」
恥ずかしそうにサジが返事をする。
机の上のトランプを片付けて、白紙のカードを机の上に並べる。
俺が【複製】のスキルを使い増やしているので、五組はトランプを作れる。
サジ達に今あるトランプを見ながら、自分達でトランプを作るように言うのと同時に、約束事を話す。
まず、遊び終わったら必ず五十三枚のカードがある事を確認して、まとめておく事。
これは他のカードを混ざる事を防ぐためだ。
そして、孤児院の外には持ち出さない事だ。
盗難防止もあるが、このトランプが原因で、子供達が事件にでも巻き込まれたりしない為だ。
サジ達は頷きながら、了承してくれた。
「あぁ、それと四つの模様は変えるなよ。必ず同じ模様にしてくれ」
今は『火』『水』『風』『土』の模様にしている。
これから製品化されるとしても、この四つの模様は変える事は無いので、今後の事も考えると変更しない方が無難だと思った。
「因みにババは、嫌いな者や怖い者を書いても良いから、好きに書いてくれ」
「分かりました。しかし、これは大変な作業ですな」
「子供達の笑顔の為だから、仕方が無いだろう。だけど、無理だけはするなよ」
「はい」
サジや他の者達も、嬉しそうな顔をしていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
家に戻ると、まだルーカス達が居た。
ルーカスだけでなく、ダンガロイとフリーゼも、ババ抜きに夢中のようだ。
「おかえりなさい」
俺に気が付いたユキノが駆け寄って来た。
「ただいま。それで、この状況はなんなんだ?」
少し異様な空気を感じ取った俺は、ユキノに質問をする。
「それは妾から説明しよう」
アルが意気揚々と話し掛けてきた。
勝負事が好きなアルとネロが、ババ抜きに参加していなかった事も、変だと感じた理由の一つだった。
アルの説明だと最初は皆でやっていたが大人数の為、面白くない事が分かった。
そこでリベラの提案で、四人一組として、一位になった者だけ代表者としてもう一度勝負という事になったらしい。
組み分けは、居た場所で適当に分けた。
第一組は、アルとネロに、ユイとヤヨイの四人。
第二組は、リベラとユキノに、アスランとトグルの四人。
第三組は、カルアとターセル、セドナとイースの四人
第四組は今、行われている三人だそうだ。
「師匠~。又、アルに負けたの~」
悔しそうにネロが俺に話してくるので、頭を撫でてやる。
「残念だったな」
「ユイや王女にも負けたの~」
「ドベって事か。まぁ、次頑張れよ」
「ん~!」
ネロは本気で悔しがっていた。
考えている事が顔に出やすいネロには、不利なのだろう。
「それで、誰が勝ち進んだんだ?」
第一組目からはアル。第二組目からはリベラ。第三組目からはターセルが勝ったそうだ。
アルの説明を聞いていると、ルーカスが大声を上げる。
どうやら、勝ったのはフリーゼみたいだ。
「国王も、まだまだだな」
勝ったフリーゼは上機嫌だった。
……という事は、決勝戦はアルとリベラにターセル、そしてフリーゼだ。
ひと波乱ありそうな組み合わせだ。
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