第513話 数量不足!

 神経衰弱で一番になったルリとサジは上機嫌だった。


「もう一度、最初からやりますか?」

「そうですな。この組で、もう一勝負どうですか?」


 ルリとサジは、嬉しそうに話す。

 俺より先に、シュカやクルーニーが再戦を断った。

 負けたシュカは、ルリの記憶力の良さを知っていたので、勝てない事は分かっていたようだった。


「ところで三人は何故、こんな事をしているの?」


 シュカが質問をするので、俺はシュカとルリに向かって、先程の説明を簡単にする。


「私達には出来ない事だわ」


 シュカは頷きながら答える。


「このトランプは確かに数を覚えたり、記憶力を鍛えるのには良いですね」


 ルリも感心していた。

 楽しく勉強が出来る事を伝える為に俺は七のカードと、八のカードを二枚並べて机の上に置いた。


「シュカ。この数字を足したら幾つだ?」

「十五よ」

「そうだな。じゃあ、足して十五になるカードを横に並べてくれるか?」

「良いわよ」


 シュカはカードの山から、六と九のカードを出した。


「正解だ」

「まぁ、商売していたから、これ位は簡単よ」

「じゃあ、三枚のカードで十五を作ってくれ」

「分かったわ」


 シュカは先程の同じようにカードの山から三枚のカードを出す。

 当然、正解だった。


「数を数える事を出来ない子供達には、難しいわね……」

「そうね、数字については少し教えている子も居るけど、買い物を任せる事が出来るのは随分と先になるだろうしね」

「でも、こんな感じで子供達にも教えてやれば楽しくないか?」

「確かにね。でも、このトランプは沢山あるの?」

「今の所、この一組しかない。出来る限り早く作って貰うように頼んでおく」

「そうね。これが原因で喧嘩にでもなったら、大変だしね」


 シュカの言う通りだ。

 面白い物や興味を示した物が少ないと、争いは起こる。


「ちょっと、待っていてくれ」


 俺は、トランプの制作をしてくれた王都魔法研究所のローラに連絡をする。

 時間関係無しに研究に没頭する性格なので、この時間でも問題無いだろう。


「何か用か?」


 ローラは、挨拶も無しに話す。

 無駄な事を極力嫌うのは、相変わらずだ。


「用があるから連絡したんだよ」

「まぁ、そうだろうな。それで何の用だ?」


 世間話等をする気は、全く無いようだ。

 俺としても話が淡々と進むので有難い。


「実は、この間作って貰ったトランプ。と言うか、紙の遊び道具を又、作って欲しい」

「あぁ、それなら余分に作ってあるから、いつでも取りに来て良いぞ」

「余分て、何枚くらいだ?」

「そうだな、百枚有るか無いかくらいだなな」

「そうか。今から取りに行くが良いか?」

「あぁ、構わんぞ。あんな紙など、直ぐに作れるからな」

「それは助かるシーバにも伝えておいてくれ」

「あぁ、所長なら隣に居るから、今伝える。タクトが遊び道具をくれと言っているが良いですよね?」


 そのまま、聞こえるように所長のシーバと話をしたようで、ローラからの会話は聞こえる。

 しかも、ローラの話しからだと、俺が無料でくれと言っているように感じたので、後で訂正をする必要だ。

 前回製作して貰った時も気になっていたが、そんなに簡単に作れる物なのだろうか?

 たかが紙だが、されど紙でもある。魔法研究所の製造工程などが、とても気になっていた。


「良いそうだ」


 向こうでシーバと話をして


「じゃあ、今から行くから用意しておいてくれ」

「分かった。急がなくても良いからな」


 ローラも勝手に研究をしているので、特に報告等も無い。

 研究室で寝泊まりをしているのかも知れない

 組織としては駄目なのは分かっているが、出向という立場なので難しい所もある。


「ちょっと、ババ抜きでもしていてくれ」

「どちらに行かれるのですか?」

「すぐに戻って来る」


 一応、ババ抜きをシュカとルリに教える。

 すぐにルールを覚えてくれたので、俺は孤児院から飛び出して路地裏で【転移】を使い、ローラの居る王都魔法研究所に移動した。

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